第九十二話
「ま、まあ、バレてるのは置いといて! まず、おたけさんの好きなものとか、知ってるんですか?」
「好きなもん……」 ラキさんは、顔を上げ、遠い目をする。 「……昔、どっかの盗賊に惚れてた、ってのは聞いたな」
「ふむふむ。ワイルドな感じが好みなんですかね?」(……盗賊?)
「なんか、すごく大事にしてる物とか、こだわりを持ってる物とかは?」
「ああ、それなら三振りの剣だな。アレは実に立派な物だった」 (剣……)
「じゃあ、好きな食べ物は?」
「え……なんだろう。あんま気にしたことなかったな」 (知らないのか……)
「趣味は?」
「ああ! オフロードバイクが好きだって言ってたな! カッコいいだろ!」
「(バイク……)ちなみにラキさんは?」
「俺? 酒だな」 (……共通点が……)
継人は、少し角度を変えて質問してみた。
「おたけさんって、店長との付き合い、長いんですか?」
「あぁ、そうだな。長いぞ」 ラキさんは、懐かしそうに目を細める。
「実はな、この店、本当はおたけさんも『店長』なんだぜ?」
「え!? そうなんですか!?」
「ああ。まあ、おたけさん、昔っから自由人で、ずっと遊び歩いてるから、お頭がずっと一人で店長してるけどな」 ラキさんは、照れたように頭をかいた。
「俺達がここに世話になり始めた頃に、たまたまおたけさんが店にいてさ。そん時の、あの豪快さに惚れたんだ」
(なるほど……) 継人は、一つの可能性に思い至った。 「じゃあ、店長にも、おたけさんのこと聞いてみます? なんか、詳しいこと分かるかも……」
「いや……」 ラキさんは、急に渋い顔になった。
「お頭は、どうだろうか。あの人、そういう色恋沙汰とか、全く無頓着だぜ?」
(想像:店長『……たけまる、の? ああ。……知らない。別に興味ないから』)
「まあまあ、聞いてみるだけ聞いてみましょうよ」 継人は、定位置で雑誌を読んでいる店長に声をかけた。 「あの、店長! たけまるさんの好きな食べ物とか、知ってます?」
店長は、雑誌から顔も上げずに答えた。
「……そこらへん、何も知らない。別に、知らなくても困らないから」
(想像通りでした……) 継人は、隣で「ほらな」と言わんばかりの顔をしているラキを見た。
「……だな」 ラキも、深く頷いた。




