表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/114

第八十七話

静寂に包まれた神域で、祭神として祀られる安倍晴明は、久しく聞くことのなかった相手からの電話に、静かに耳を傾けていた。 酒呑童子。 あの鬼が、自分に助けを求めてくるとは。


受話器の向こうで、彼女は淡々と事のあらましを語った。店に迷い込んだ人間の青年、継人。彼が食べてしまった正体不明の『飴玉』。それによって『見える』ようになったこと。そして、今日現れたという『サル』の警告――『次は耳』。 自分の責任範疇で起こったことだから、何としても解決したい、と。


『……それで、晴明。あんたなら、そんな高位存在について、何か心当たりがないか?』


晴明は、扇子で口元を隠し、ふむ、と息をついた。

「……わざわざお前の『店』なんぞに干渉してくるような物好きな『方』がいるとは思えんがな」

『……』

「まあ、良い。お前の『人間を助けたい』などと殊勝な心意気に免じて、協力してやらんでもない」


晴明は、酒呑童子の話からいくつかの可能性を頭に浮かべていた。

「……話からヒントは貰った。いくつか、当たってはみよう」

『! 頼む』

「結果が出たら連絡する。……では」 晴明は、一方的に通話を切った。


***


大学が終わり、継人はいつものように店でのバイトに入っていた。 店長と二人きりの、いつも通りの静かな店番。 ……のはずだった。


(……なんか、今日、うるさくないか?)


継人は、カウンターの隅で感じている違和感に首を傾げた。 店長は相変わらず静かにタバコをふかしている。外の音でもない。 音は、店内から……いや、棚に並んだガラクタ達から、聞こえてくる気がするのだ。


ザワ……ザワ……。 ヒソ……ヒソ……。


絶えず、何かしらの音? 声? が、微かに聞こえる。 風の音とは違う。まるで、たくさんの人が小声で囁き合っているような……。


「あの、店長」

「ん」

「棚の商品、昨日までとラインナップ、変わってないですよね?」

「ああ」

「なんか……音、しません? ボソボソと、喋ってるような……。隙間風とかですかね?」


店長は、タバコの煙をゆっくりと吐き出した。 そして、相変わらず気だるげに、しかし、あっさりと告げた。


「……ああ。『見える』だけじゃなくて、『聞こえる』様にもなったんだ、バイト君」

「え?」

「飴玉のせいだな」


「……!」 継人は、息を呑んだ。 背筋に、冷たいものがはしる。


「て、店長……! 俺、このままだと……どうなります?」 継人は、震える声で尋ねた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ