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第七十六話

幸い、翌日の大学の授業は昼からだった。 継人は、先日泊めてもらった礼も兼ねて、店のレイアウトを「あやかし」仕様に戻す作業を、そのまま手伝うことにした。


「そっちの棚じゃねえ、カネ!」

「こっちに『呪詛セット』置いとけ!」

「あーし、手が届かねーんすけど!」


ラキさんたちが、駄菓子の空き箱を片付けながら、ガラクタ(?)をあっちでもない、こっちでもないと動かしていく。 この時ばかりは、いつも気だるげな店長も、文句も言わずに(ただしタバコは吸いながら)一緒に手を動かしていた。


作業の途中、床に転がった骨(何の骨だ?)を拾い上げていたくまさんが、ふと継人に話しかけてきた。

「そういえば廻くん、週末のデート、どうだったの?」


「あ!」


その一言に、一番ビビッドに反応したのはラキだった。 (やべっ! くま、おま、それお頭の前で! バイト君が『友達』って誤魔化してたの、俺のせいでバレたのに!) ラキは顔面蒼白になった。


しかし、くまさんはじめ、他の面々(カネ、ホシ、トラ)は、そんな店長とラキの間の機微など知る由もない。 (皆の動きが一瞬止まり、再び手を動かすが、耳はこちらを向けている)

「お、いいねえデート!」

「どうだったんすか、バイト君!」 彼らにとっては、先のファッション談義の続きであり、隠す必要のない話題だった。


「あ……」 継人は、「デート」とハッキリ言われてしまい、黙々と棚を拭く作業を続ける店長をチラリと見た。 (うわ、くまさん、ストレートに言っちゃったよ……) 継人は、照れくさそうに頭をかきながら、素直に答えた。


「あ、はい。すごく楽しかったです。なんか、すごく気も合って……また遊びに行こうってなりました」


「「ヒューヒュー!」」

「やるじゃん、バイト君!」

「春だねえ!」 くま、カネ、ホシが、事情も知らずに一斉に囃し立てる。

「それは良かったじゃないですか」 と、トラさんも静かに頷いている。


ただ一人、店長だけは黙々と手を動かしている。 ラキだけが、無邪気に囃し立てる仲間たちと、黙り込む店長を交互に見て、バツが悪そうに汗を拭っていた。


(店長には『友達』と伝えた手前、気まずいな……) 継人は、そう後悔しつつも、(いや、でも、デートはデートだし、そこまで詳しく話さなくてもいいか)と、軽く自己弁護をした。

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