表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/114

第七十四話

週明け。そろそろ秋も終わり、吐く息が白くなり始める頃。 今日は大学で芝さんの姿を見かけることはなく、講義の合間に『今日寒いね』『風邪ひかないように』といった、簡単な友人としてのメッセージをやり取りしただけだった。


(週末が楽しかった分、なんか変な感じだ) 継人は、浮かれた気分と、どこか締まらない気持ちのまま、バイト先へと向かった。そういえば、商店街のあたりが、やけにカボチャやお化けの装飾で飾られていた気がする。


ガラガラガラ……。

「おはようございます!」 店に入った継人は、目を見開いた。 いつもの光景と、まったく違う。


(あれ……?) 棚を埋め尽くしていたはずの、あの禍々しいガラクタ類――骨とか、呪具っぽい瓶詰めとか――が、綺麗さっぱり片付けられている。 代わりに、そこには(人間の)子供が喜そうな、色とりどりの駄菓子の箱や、安っぽいオモチャが並んでいた。


「……?」 継人がカウンターを見ると、店長はいつもの定位置にいた。 だが、タバコを吸っていない。

「あの、店長……これ、どうしたんですか?」

「ん」 店長は、ジト目で継人を見た。

「今日は、特別なんだ」

「特別?」


継人が首を傾げた、その時だった。


ガラガラガラッ!

「「「トリックオアトリート!!」」」


勢いよく引き戸が開き、魔女やドラキュラに仮装した小学生くらいの子供たちが、ドヤドヤと店になだれ込んできた。


「あ!」 継人は、町の装飾と、この駄菓子と、子供たちの言葉で、ようやく全てに合点がいった。 (そうだ、今日、ハロウィンか! 町を挙げてのイベントだって、大学でポスター見たぞ!)


(でも、なんでこの店に……?) 継人が驚いていると、店長が、すっ、と椅子から立ち上がった。


「はいはい。お菓子ね」


その声は、いつもの気だるげなものではなかった。 表情も、いつもの無表情なジト目ではない。 穏やかで、優しい――「近所のお姉さん」のような顔と態度だった。 「わー! やったー!」 「ここのアメ、美味しいんだよ!」 店長は、手際よく駄菓子を小袋に詰め、子供たち一人一人に手渡していく。


「あ、俺も手伝います!」 継人も、慌ててカウンターに入り、お菓子を配るのを手伝った。 子供たちは、嵐のように礼を言うと、次の店へと走って行った。


「……」 静けさが戻った店で、継人は興奮気味に店長に尋ねた。 「すごいですね! いつもこの時期に、こうやってるんですか?」

「ん。まあな」 店長は、もういつもの気だるげな表情に戻っていた。

「人から見たら空っぽの店だけど、この日だけは、商店街に貸し出して、子供たちが来るんだ」


「にしても、あのガラクタ類、よくこんなに早く模様替えしましたね。俺、昨日まで普通だったの知ってますよ」 すると、店長は、何も言わず、静かに奥の暖簾を指差した。


(?) 継人が、おそるおそる暖簾の裏を覗き込むと。 そこには、ラキさん、くまさん、カネさん、トラさん、ホシさんの五人が、居間でぐったりと疲れ切った顔で突っ伏していた。 (……この人たちが、一晩で全部……) 継人は、静かに暖簾を戻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ