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第七十三話

プツリ、と芝との通話が切れる。 ぬらりひょんは、夜の雑踏の中でスマホを懐に戻し、薄く笑った。 (……危なかった、か) さっき、あの小僧――継人が乗った電車に、気配を殺して同じ車両に乗った時のことだ。 あの小僧、最後に車内を見回していた。……本気で隠れていた私に、気づいたね。


(酒呑が、『特別』だと言っていたが、あながち間違いでもないか) 匂いか? 気配か? どちらにせよ、あのかくれんぼに気づくとは、ただの人間にしては少し異常だ。


(やはり、あの小僧には何かある) あの、警戒心の強い酒呑童子が、あれほど執着するくらいだ。 あの店で、何かがあったんだろう。


「……」 ぬらりひょんは、夜空を見上げる。 (それにしても、あの酒呑童子の……)


『人間に寄り添いたい』と言いながら、人間を寄りつかないようにする、あの天邪鬼な態度は、そろそろ改めた方が良いんだけどね。 努力は認めるから、そろそろ落ち着いても良いと思うんだよ。


(前も、『人間と関わりすぎた』とか何とか言って、律儀に店を変えたからねえ) ぬらりひょんは、くつくつと喉を鳴らす。


(『人間を騙さない』と息巻いてはいるが、あいつは逆に、人間に騙されてばかりきてるから仕方ないがね)

(……あいつは馬鹿で素直だから、すぐ利用されそうになる。まったく、手がかかる)


だから、こうして私が見てやらないと。 ぬらりひょんは、先ほどの芝の最後の言葉を思い出し、面白そうに口角を上げた。

「……さて。どうなるかねえ」

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