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店長は人を騙さない(と、言っていた)  作者: あかはる


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第四十七話

玉藻前――たまちゃんが、名刺と引き換えに指輪を持って嵐のように去っていった。 店には、またいつもの静けさが戻ってくる。


継人は、あのスーツ姿の男性が去っていった引き戸と、カウンターでさっそく新しいタバコに火をつけた店長を、混乱した頭で見比べた。


(たまちゃん……。昨日、店長があんなにソワソワして、おめかしまでしてた相手が、あの男……) 昨日の店長の様子と、今しがたの「クソ野郎」呼ばわりとのギャップに、継人はどうしても好奇心を抑えきれなかった。


「あの、店長」

「ん」

「昨日……その、たまちゃんと会ったの、どうでした?」 継人は、少しゴシップを探るような気分で尋ねてみた。


店長は、タバコの煙をふう、と吐き出すと、昨日の出来事(と、さっきまでのやり取り)を思い出したのか、ジト目をわずかに険しくさせた。

「ん?……ああ。アイツを、襲いそうになった」


「(お、襲う!?)」 継人は、思わず息を呑んだ。 (マジか! 意外に大胆なんだな、この人! やっぱりデートで、なんかいい雰囲気になったとか、そういう……!?) 「酒呑童子」という正体を知った後でも、その発言はあまりにギャップがありすぎた。


「あ、いや、でも! 昨日のおめかし、似合ってましたよ。ロングスカートとか」 継人は、慌ててフォローするように付け加えた。 店長は、継人の言葉に

「そうか」と短く返したが、すぐに昨日のレストランでの怒りと、立ち飲み屋でのやり取りを思い出したようだった。

「……(昨日のあの怒りを思い出すから)二度としない」


「(え!? 今、褒めたつもりなんだけど……)」 継人は、またしても店長の反応に戸惑う。 どうやら、昨日の「お出かけ」は、あまり楽しいものではなかったらしい。


「ていうか、思ったんですけど」 継人は、なんとか会話を繋げようと、別の疑問を口にした。

「たまちゃんにしろ、前に来た、たけまるさんにしろ、名前、ややこしくないですか?」 (女かと思ったら男だったり、男みたいな名前で女だったり……)


だが、店長は、継人の意図とはまったく違う受け取り方をした。

「あ?……ああ。(玉藻前たまものまえと、大嶽丸おおたけまるだからな)たしかに、読み方はややこしいかもな」 (読み方!?)継人は、心の中で盛大にツッコんだ。 (『たま』と『たけまる』だろ!? 読み方はひらがななんだから、単純でしょ!)


(……ダメだ) 継人は、会話を諦めた。 今日も、店長との会話は、絶妙にすれ違ったまま終わった。

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