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第百八話

「う……うわあああああああああああん!!」


前回のように、誰かが止めに入ることはなかった。 ラキの「派手にやっちまってください!」という号令は、文字通り解き放たれた鬼の首領の本気の癇癪の引き金となった。


店長は、その場に座り込み、手足をバタつかせ、文字通り泣き暴れた。 ビリビリと空気が震え、店そのものが悲鳴を上げる。棚が薙ぎ倒され、ガラクタ(商品?)が宙を舞い、壁に叩きつけられて砕け散る。それはもはや、癇癪というより、小規模な天変地異だった。


「うおっ! 危ねえ!」

「こっちだ、バイト君!」 ラキたちが、唖然とする継人、モエ、そしてぬらりひょんの三人を引っ掴み、暖簾の裏へと強引に引きずり込んだ。


「な、なんだいありゃ!?」 暖簾の隙間から、荒れ狂う店の惨状を覗き見て、ぬらりひょんが素っ頓狂な声を上げる。

「酒呑ちゃん、怖……」 モエは顔面蒼白で引いている。


「あーあ……こりゃ、店、暫く無理だな」 ラキが頭を抱えた。 その横では、トラが冷静に、暴れる店長の破壊行動を目で追いながら、手元の帳面に(恐らく)損壊していく商品のリストを作成している。 暖簾の方に飛んでくるガラクタの破片を、カネとくまが屈強な腕で叩き落とし、防いでいる。 ホシは、店の壁や地面に以前刻んだ術式が壊れないように、薄い光の膜(結界)を張って補強していた。


店の中には、破壊の限りを尽くして泣き叫ぶ店長と、その理不尽極まりないエネルギーの奔流に、ただただ驚いて固まっているアメノウズメだけが残されていた。


どれくらいの時間が経っただろうか。 やがて、店長の暴れっぷりは徐々に勢いを失い、最後には、暴れ疲れてその場にへたり込み、

「うぅ……ひっく……」と、ただ泣きじゃくるだけになった。


静寂が戻った店内で、アメノウズメは、しばし呆気に取られていた。 彼女は、足元に転がるガラクタの山と、半壊した店内、そして床で子供のように泣きじゃくる鬼の首領を見回し……。


「……ぷっ」 小さな笑い声が漏れた。

「……くくっ……あはははは!」 やがて、それは抑えきれない大爆笑へと変わった。

「あはははは! 何これ! 最高! あははははは!」


腹を抱え、涙を流して笑い転げる女神。 その傍らで、ただただしゃくり上げて泣き続ける鬼。 奇妙で、歪で、しかし、ある意味では滑稽な光景だけが、そこにあった。

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