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第百六話

「ね? 迎えに来たの」 アメノウズメは、元カノの顔で、無邪気にそう言った。まるで、当然のように俺が「はい」と答えると思っているかのように。


「……いやです」 俺は、震える声をなんとか絞り出した。

「え?」 アメノウズメは、心底(意外だというように目を丸くした。


「コレクションって……。連れて行かれるって……それ、死ぬって事でしょ? 嫌ですよ、そんなの」

「あー、そこ?」 アメノウズメは、あっけらかんと笑った。

「それは大丈夫。死んじゃったら意味ないもん。ちゃんと、生きたまま連れてってあげるから」

「……」

「死ぬことが嫌なら、問題ないでしょ?」 彼女は、優しく言い聞かせるように言う。


だが、俺は首を横に振った。

「連れて行かれること自体が、嫌なんです」


「え〜? なんで?」 アメノウズメは、本気で理解できないという顔をした。

「せっかく、私のコレクションになれるんだよ? 光栄なことじゃない」

「光栄とかじゃなくて……。俺は、ここにいたいんです。この店で……」 俺は、隣に立つ店長を無意識に見ていた。


「……」 意見は平行線のままだった。 アメノウズメは、少しだけ不機嫌そうに頬を膨らませる。

「ちぇー。本当は、無理矢理なんて嫌だから、ちゃんと『一緒に行こう』って誘ってるのに〜」


アメノウズメは、腕を組んで考え込んだ。

「じゃあ、どうしたら継人は来てくれるの? んー……」 その時、彼女は何かを思い出したように、ポン、と手を打った。


「あ、そっか」 アメノウズメは、ニヤリと笑い、店内を見回した。

「このお店って、『物々交換所』なんだったよね?」


彼女は、どこからか、何か小さな物を取り出した。 それは、長い時を経て風化したのか、元の形が全く分からなくなった、石とも木片ともつかない、ただの古びた小物だった。


「じゃあ、こうしよっか」 アメノウズメは、その小物を、ポン、と手近な棚の上に置いた。

「私は、これ(・・)を置いていくから」


そして、満面の笑顔で、宣言した。

「交換で、継人を持っていくね!」

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