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第百五話

「コレクション……?」 継人は、アメノウズメの言葉を繰り返す。意味が分からない。 アメノウズメは、そんな継人の困惑すら楽しむように、クスクスと笑いながら語り始めた。その姿は元カノなのに、声はまるで別人のようだ。


「そうだよ、コレクション。私ね、珍しいものとか、綺麗なものとか、集めるのが趣味なの」


彼女は、事の起こりを説明し始めた。


「最初にこのお店に来たのは、ほんの気まぐれ。バッカス君から聞いてたんだ。『人間にんげんじゃないものが集まって、物々交換する変な店がある』ってね」 アメノウズメは、カウンターで苦虫を噛み潰したような顔をしている店長をチラリと見た。


「そしたらさ、店番がいたんだけど、全然私のこと認識できてなくて」

「『芸能の神・アメノウズメ』だよ? ちょっと、カチンときちゃって。なんだ、こんなものかって思ったんだけど」

「でも、棚に並んでるガラクタは、まあまあ面白そうだったからさ」

「だから、ちょっとしたイタズラ。私の力の欠片を、可愛い飴玉に見せかけて、レジ横の瓶にポンって入れて」

「代わりに、埃を被ってた動かないカラクリ人形? を一つ、もらって帰ったの」


「……」 店長が、ギリ、と歯噛みする音が聞こえた。


「で、しばらくして。なんか私の欠片が動いた気がして、またこの店に様子を見に来てみたら……」 アメノウズメは、そこで言葉を切り、嬉しそうに継人を見つめた。

「あったんだよね。君の中に」


「え……」

「びっくりした! 普通の人間が、神の欠片を取り込んで、平気でいるなんて! しかも……君には、あの飴玉が見えてたんでしょ?」 アメノウズメは、まるで宝物を見つけた子供のように、キラキラと目を輝かせた。

「すっごく嬉しくなっちゃって! 君のこと、欲しくなっちゃった! 私のコレクションに加えたいなって!」


「だから、この前来た時にね」

「特別に、私のコレクションの中から、綺麗な石を一つ、君にあげたでしょ?」

「あ……!」 継人は、あの無口な子供の顔を思い出した。あれも、この女神だったのか。


「なのに……」 アメノウズメの表情が、一転して不機嫌になる。

「せっかくあげた石が、またこの店に戻ってるんだもん。しかも、無理やり縁を切ろうとしてるし」アメノウズメは、棚に置かれた石と、店長を交互に睨みつけた。


「もう、待ってられないなーって」 アメノウズメは、再び継人に向き直り、満面の笑顔で言った。

「だから、今日、迎えに来たの。ね?」


神としての無邪気で傲慢な目的。断られる事など一切考えていない、もはや命令に近い内容だった。

彼女の目的は、ただ単純に、珍しい人間である継人に興味を持ち、自分の手元に置きたい。ただ、それだけだった。

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