表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/114

第百話

(継人視点)


「……っ」 頭が、ガンガンする。体が鉛のように重い。 店長からの電話――『音を止める方法が見つかった』『協力してほしい』という言葉に、俺は二つ返事で頷いた。 今日はバイトとしてではなく、初めてこの店を訪れた時と同じ、『客』として来るように、とも。


(店長に見せよう……)ポケットの中には、先ほどモエさんから返してもらった、あの奇妙な石が入っている。結局何も分からなかったらしいが、店長なら何か知っているかもしれない。


フラフラとした足取りを見かねてか、途中で会ったモエさんが「私も心配だから」と、バイト先まで一緒について来てくれることになった。

「すみません、モエさん」

「ううん、大丈夫だよ」 彼女の優しさが、少しだけ心に沁みた。


(モエ視点)


(……大丈夫、ちゃんと連絡はした) モエは、隣を歩く継人の顔色の悪さに胸を痛めながら、先ほどの店長とのやり取りを思い出していた。

『石、確かに廻くんに返したよ』

『……そうか。なら、すぐに連絡する』 店長が、すぐ継人に連絡を入れたことで、モエはひとまず安堵した。これから始まる「縁切り」のこと、そしてその先にある別れを思うと、胃が痛むが……。


見慣れた古びた店の前に着いた。

「じゃあ、廻くん、頑張ってね」

「はい。モエさんも、わざわざありがとうございます」 継人が、ふらつきながらも店の引き戸に手をかける。 その後ろ姿を見送りながら、モエは小さく呟いた。


「……ごめんね」


その言葉を呟いた瞬間。

モエは、懐に入れていた「御守り」――ぬらりひょんに渡した偽物の石と同調させていた、簡易的な監視用の札が、フッと力を失ったのを感じた。 (……バレた) 偽物の妖力が、ついに切れたのだ。ぬらりひょん様に、自分が欺いていたことが、今、確実に知られた。


(ぬらりひょん視点)


(……ふむ) 料亭の一室で茶をすすっていたぬらりひょんは、懐の「石」(偽物)から、微かに感じていた気配が完全に消え去ったことに気づいた。

数日前、モエからこれを預かった時から、内心では疑っていたのだ。あの狸娘が、そう簡単に従順に従うはずがない、と。


同時に、別のルートからも情報が入っていた。

『酒呑童子の店にて、何やら大掛かりな儀式の気配』

『例の人間と芝右衛門が店に向かっています』


(……物々交換か) ぬらりひょんは、舌打ちした。 石は手元にあると思っていたから、どうせ縁切りなど失敗すると高を括っていたが……。


「……あの狸、やりおったわ!」 ぬらりひょんは、湯呑を置き、ゆらり、と立ち上がった。 面白い。実に、面白い。 酒呑童子がそこまでして切りたい縁なら、この目で見て、そして―――。 ぬらりひょんは、ニヤリと笑い、店へと向かった。


(店長視点)


店内には、いつもとは違う、厳かな空気が漂っていた。 床や壁には、トラとホシが描いた術式が、淡い光を放っている。 モエからの報告を受け、縁切りの準備は整った。


(……来るか) 店長は、カウンターに肘をつき、タバコを深く吸い込んだ。 今回の石との縁切り。物々交換という形を取るが、これはただの交換ではない。高位存在の欠片とも言える石を手放させる儀式。 玉藻前や晴明からの情報でも、高位存在が何らかのアクションを起こしてくる可能性は高い、と出ていた。


ガラガラ、と引き戸が開く。継人が入ってきた。顔色が悪い。

「……いらっしゃい、バイト君」

「店長……」


(ぬらの婆さんも、来だろうな) 店長は、暖簾の奥に控えさせているラキたち四天王に、目で合図を送った。

(……婆さんの妨害は、お前たちに任せた)


いよいよ、始まる。


(???視点)


(……あらあら)

(私のかわいい『石』が、無理やり引き剥がされようとしているわ)

(あの子とは、あんなに気が合ったのに)

(……仕方ない)

(『舞台』に、少し早めに登場するとしましょうか)


???は、自身と継人を繋ぐ「縁」が強制的に断ち切られようとしていることを感知し、その源である店へと、その意識を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ