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第21話 スピンオフ:ゼノ・ミアーナの運命③

ミアーナ視点。 仮面舞踏会の夜、ゼノからテラスへと誘いを受けるミアーナ。幼いころからの想いが揺れるなか、ゼノの口から語られた"宣言"に、ミアーナは身を引く覚悟を決める。胸に秘めた想いを、今夜だけは仮面に気持ちを隠して…

「叶わぬ想い、忘れない」



仮面舞踏会――


王宮の大広間には、幾重にも重なる音楽と人々の笑顔が溢れていた。


深い蒼のドレスをまとった少女が、噂と共に照明に照らされた円舞の中央にゼノ殿下に連れられて歩いている。


……その少女とは―


ドレスを着ているのは、王妃候補として選ばれた“セイラ”である。


胸元には星のように輝く青い宝石があしらわれ、まるで空の深淵をそのまま纏ったかのような姿だった。


それはわたしが好きだった色…


その姿に、ほんの一瞬だけ、胸が痛んだ。


けれど……


それはもう、とっくに答えの出た感情だった。


(あのドレスは……)


ゼノ様がわたしに作ってくれたドレスだ。


セイラ様がこの国に来る少し前…


ゼノ様の気持ちがわからなかった私は…


あのドレスを一度断った…。だから、いいの。


私は、ただ――この夜の終わりに…

殿下の想いを忘れないために”来た”だけだから。


「……ミアーナ」


その名を呼ぶ声に、振り返った。


そこに立っていたのは、仮面の奥からでも分かる、あの金の髪。


「ゼノ……殿…下?」


「少しだけ……時間をくれますか」


私の手を取って、優しく微笑むゼノ。 音楽の始まりとともに、私たちは目立たないテラスへと進んでいった。


舞踏が始まる。

音楽が奏でる音色を聞きながら…


彼の腕に私はただ静かにその時を刻む。


「ミアーナ…。仮面舞踏会に来てくれてありがとう。」


「……仮面がなければ、私はここに立てませんから」


少しだけ、冗談めかして答えた。


ゼノの手は、いつもより少しだけ、強く私を抱いていた。


「ミアーナ。君に伝えておきたいことがあるんです」


ゼノの声が、音楽に紛れず、はっきりと私の耳に届く。


心臓の音が止まらない…。


「今夜……私は、セイラを妃に選ぶと宣言します。」


――音が、遠のいた。


予感はあった。


けれど。


実際に聞くと、思ったよりずっと、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。


「……そう…です…か…」


それ以外、私には言えなかった…。


「セイラは素敵な人なんです…。だから…。

きっと、国に光をもたらしてくれると思います」


何も聞こえなくなった。

ゼノ殿下の唇で読み取る事しかできなかった。


「……ミアーナ。僕は……」


何か言いかけたゼノの言葉を、

私はそっと手で制した。


「言わないで。……ゼノ殿下…。 このダンスが終わったら、私は帰るので。 今夜は、殿下と踊れて…それだけで十分です…。だから…」


ゼノの瞳が揺れた。 その瞳を、私はまっすぐに見つめる。


「だから殿下…。今日だけご無礼をお許しください。私は、あなたを……好きでした」


それは、今この瞬間だけの告白。 過去でも未来でもなく、“今”だけの想い。


「ミアーナ…僕は…僕も、本当は…」


音楽が静かに終わり、次の曲までのざわめきに少しだけ、ホッとしていた。


ゼノは、私の手を取ったまま、深く礼をした。


「……僕は行きます…それでは。」


その声が震えていたことには、触れなかった。


彼は私の手をそっと離した。


“この想いは、叶わない。 けれど、忘れない。”


それが、私の精一杯の―― 彼への“さよなら”だった。


(さよならゼノ…。)


気持ちがまだ整理できず、モヤモヤしている最中に、バルコニーの隅からでてきたのはリオンだった。


「全部見ていたんですね…。」


「はい…殿下の護衛なので…」


リオンはミアーナに一礼し、話し始めた。


「ゼノ様は…国のためにと強がりを言ってるだけです。決して、ミアーナ様を嫌いになったわけでは…」


ミアーナが笑った。

正確には、泣きながら笑っている

リオンは心配の眼差しで少し戸惑っている。


「リオン…知っています。殿下は私を好いてること。そして、国の為にと強がっている事、本当はしたくもない事をやろうとしている事くらい。わかっています」


涙を見せまいとテラスに身を乗り出し、自分に言い聞かせているようにも聞こえた。


「私はゼノ殿下が…ゼノ様が大好きです。だから、私はあきらめます。それが一番この国にとっての選択なのでしょう。」


続けて話した。


「けれど、私は運命を信じています。大丈夫。殿下は必ず幸せになります。だって、あんなにキラキラしていて、優しい王子様なんですもの。たとえ、私とじゃなくても…きっと…きっと…」


声は少しずつ枯れていき、泣き腫らしためは腫れていた。


リオンは痛々しいミアーナを無言で一礼し、その場急いで去っていった。


たぶん今聞こえた、ゼノの宣言を聞いたからだろう…。

私は、周りのざわめきとゼノの声を小さくして行った…。


誰もいなくなったテラスには涙の後がポツンと何個も落ちていた…。


ゼノ様…どうか


「君(殿下)にまた会えたら…」



ミアーナの視点で描かれた、 届かぬ想いに終止符を打つための、美しくも切ない時間でした。 次回、ゼノ視点で描かれる“最後の決意”へ。 運命の舞踏は、静かに終幕へと向かいます。


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