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第19話 スピンオフ︰ゼノ・ミアーナの運命①

これは、まだ“愛”という言葉すら知らなかった、

小さな私が、王子に出会った恋物語――。

彼は孤独だった。

いつも凛としていて、誰にも甘えず、遠くを見ていた。

それでも私は、あの日から、

あの瞳に映る誰かになりたくて――


スピンオフ作品ですので、

是非「君にまた会えたら〜」を、読み終わった後に

お読みください。


「殿下に恋をした日」




私が王宮に初めて足を踏み入れたのは、宮廷外の薬草の調合で有名だった祖母に連れられて、小さな包みを届けに行った日だった。


「ミアーナ、この方がこの国の第一王子様のゼノ殿下だよ。ご挨拶をしなさい。」


祖母に言われて顔を上げた先にいたのが、 ――ゼノ殿下だった。


まだ幼かったけれど、その存在感は忘れられない。 綺麗な金の髪に、まっすぐな瞳。 整った顔立ちなのに、どこか寂しそうな顔をしていた。


「いつもありがとう。リュミエール様。叔父上の薬草を届けてくれて。おや?後ろに隠れているのは?」


その声が、とても静かで優しくて―― 私は、思わず祖母の後ろに隠れた。


「やぁ。はじめまして。僕はこの国の第一王子ゼノ・グランリュードです。お名前を教えてくれるかな?小さなお姫様。」


「ゼノ殿下。この子は私の孫 、ミアーナ・リュミエール。殿下の一つ上の歳ででございます。」


ゼノは思わず、びっくりして後ずさり、すぐにまた興味があるように覗き込んだ。


「ミアーナ!可愛い名前だね。隠れていないで顔を見せてくれないかな。」


それが、私の“初恋”の始まりだった。



リオンとは、昔からよく遊んでいた。 森の中で薬草を採ったり、川辺で虫を追いかけたり。 あの頃のリオンは少し怖がりで、でもとてもまじめで、私にとっては兄のような存在だった。


彼のお父様は国の聖騎士団長であり、彼もまた、幼きにして、騎士になった。エリート家族だ。


そしてよく、私に、王宮の話をしてくれた。


「昔、王宮には“お姫様”がいたんだよ。とっても優しくて、可愛いくて、みんなの希望だった。でも…ある日、いなくなった」


「いなくなった…? ?」


「“扉”の向こうに…行っちゃったんだ…。僕は何もできなかったと…思う…。王国を守るために、たったひとりで。でも、何故だか、あまり思い出せない…。セリーナ…すまない…」


“セリーナ”。 その名を、私はリオンの口から何度も聞いていた。


―― “花の毒”がばらまかれ、大災が起きた日


街が揺れ、空が曇り、 あの穏やかなリオンが剣を持って走っていった。


ゼノ殿下も、重い表情だった。


私には、何が起きているのか分からなかったけれど。


ただ、怖かった。


そして、二人の背中が、すごく遠くに感じるようになった。


「……私には何もできないのかな。」


あのときの無力さが、私の心に残り続けた。


記憶も操作するセリーナ様は、皆の記憶からあの大災の記憶をすべて持って行ってしまった。 だから。みんなボンヤリとしか覚えていなかった…。ただ、セリーナ様の事は幻の英雄として噂になったくらいだけだった。



その後も、また、普通の生活が戻り、いつも通り祖母と王宮に、時々薬草を届けに行った。


それを機に、ゼノ殿下とは話せなくなった。


それでも、ゼノ殿下を見かける度に、 私は少しずつ――


“憧れ”から“恋”へと、心が動いていった。


でも、私は知らなかった。


彼は、ずっと孤独だった事を。 決して、自分の気持ちを簡単には口にしない人。


それでも。


あの金の髪が風に揺れるたび、 ふとした瞬間の笑顔を見る度に想う。


私は確信していた。


――好きだ、と。


王子様だけど。身分は違うけど。


“ゼノ”あなたを、私は好きになった。


それが、私の―― 「殿下に恋をした日」だった。



彼は、私にとって“光”のような存在だった。


その光は遠くて、決して手が届かなくて、

でも――目を逸らせば、きっと私はもう歩けなくなるから。


だから私は、彼を見ていた。

ずっと、見つめていた。


たとえ、彼の心に誰か別の人がいたとしても――

それでも私は、あの日の気持ちを忘れない。


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