第18話スピンオフ:ルシア~運命の選択~④(完結)
僕はもう“あの世界”にはいない。
でも、過去の自分を受け入れ、この世界で愛されながら生きると決めた。
それは、償いではなく「再生」。
愛音とリオ、そしてあたたかな家族とともに、
“神天 聖人”として、新しい物語を始める。
「この世界で、生きていく」
翌朝、家の前で僕を待っていたのは、
いつものふたり――愛音とリオだった。
「おはよう、聖人!」
「おっはよー!聖人ー!」
僕が玄関を出ると、愛音がふわっと笑った。
「聖人!今日は3人で出かけよう!」
リオも続く。
「聖人。俺たちは今日も明日も…毎日一緒にいるから。だから元気出せって!な?」
「……ありがとう、ふたりとも」
胸がじんと温かくなる。
誰かがいてくれること。
それだけで、どれほど心が救われるのか――
3人で一日中、遊んでいた。
電車に乗ったり。
愛音の特製お弁当を食べたり。
木陰でお昼寝したり。
リオの下手くそな歌を聴いたり、歌ったり。
笑ったり、怒ったり、泣いたり、
色々大変な一日だったけど
とても充実している、幸せな日だった。
(僕だけこんな幸せになっていいんだろうか…。あぁ。そうか、そのうち、僕を見放すかな。僕はまた一人になるのかな…)
「…。聖人!聞いてる?」
帰り道、愛音が大きな声で僕を呼んだ声に、少しびっくりした。
「わっ!びっくりした。ど、どうした?」
「ねえ、聖人……ちょっと、寄り道しない?」
いつもの公園。夕焼けに染まるブランコ。
そこに3人でいると、リオが突然言った。
「俺、飲み物…買ってくる…聖人!愛音を頼んだからな。」
「あぁ。僕も買いに…行っちゃた……。」
リオは陸上部で身軽な身のこなしで、瞬く間に居なくなって、愛音と二人になった。
少し無言になったが、心地よい風が吹き、い心地は全く悪くない。
少し鼓動が速いことにも全く気づかなかった…。
少し経つと、愛音がゆっくり立ち上がり、後ろを向きながら、口を開いた。
「……聖人!あたしね、聖人にずっと、ずーと言いたいことがあったの。」
また、小言を言われるんだろう。
僕はすぐにそう思い、少しの溜め息と、小言にそなえていた…でも
振り返り、夕日の光でキラキラ輝く愛音を見た瞬間、僕は驚き、言葉を失いかけていた。
「聖人、わたしは…聖人が好き。」
一瞬、わからなかった。
たぶん僕には最高の言葉だったはず。
でも、わからなかった。
僕は、誰からも愛されていない。
僕は、罰を受ける身なのに…
なぜ、こんなにも涙が溢れて止まらないんだろう。
「えぇー!聖人?!どうしたの?そ、そんなにあたしの告白嫌だったのー?」
涙が止まらず、僕は、頭の中で”聖人”との記憶が再生されていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「歩美、よく頑張ったな!男の子だ!聖良の弟だよ!!うーん。そうだなぁ。名前は…。
聖人。神天聖人!!…“神”の加護を受け、“天”の意志に導かれて生まれた命。神天家の長男!“聖なる心”を持つ、“人”として、どんな試練があっても、自分を失わず、誰かを想える人にという気持ちを込めて。どうだい?」
「聖人!いい名前ね。せいとー!ママよー!
あなたはみんなに愛される子になってね。私の小さな王子様。」
「みせてー!わぁ。せいらのおとうと?せいと?せいらはおねえちゃんになるの?!やった!せいとーだいちゅきだよー」
「コラー!!せいとをいじめるやつはぜったい!ゆるさないから。あいねがせいとをまもるから!せいと!せかいいちだいすきだよ!」
「せいと!だいじょうぶか?ぐあいがわるいのか?よし、おんぶして、いえまではしるぞー!」
「ゼノ殿下…こちらが第二王子のルシア様でざいます。」
「ルシア…。僕の弟…。僕は兄上だから、ちゃんとルシアの事守るから。頑張ってこの国を二人でよくしていこう!」
「ゼノ、ルシア、私の大切な愛しい子…この国に闇が生まれても決して負けないように…」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
色んな感情と場面が繰り返され、
涙はもう止まらない。
「母上、兄上、父さん母さん…。
愛音、りお、聖良…。うぅ。みんな、みんな、僕の大切な人だった。僕はいつも色んな人に守られていた。どうして今まで気づけなかったんだ…」
涙がとまらず、ベンチに座って下を向く聖人。
それを見つめながら、涙を浮かべ聖人の言葉を待っている。
そして、吹っ切れたかのように、聖人はまっすぐ愛音を見て言った。
「僕も…僕は愛音が好きだよ。昔からずっと、離れずに一緒にいてほしいって思ってた。……僕がこの世界で、初めて“誰かを想いたい”って思えたのは、君のお陰だったから。もちろん、リオもだ。リオも僕の支えになってくれて、いつも気付かってくれて。」
そのまま続けた
「愛音…僕は今まで、自分は愛されちゃいけない人間なんだと思ってた…。いつか二人に愛想尽かされて一人になるのが怖かった。だから二人に何も伝えることもできずにいた……ごめん…」
愛音は小さくうなずいて、僕の手を握った。
「聖人!ありがとう。わたしとリオにとっても、聖人は生きていく中で一番大切な人間だよ!もちろん、私からしたら、もっと!大切な…」
照れながら赤く染まる愛音の顔を、僕は自分の口に寄せた。
!!!!!
「聖人!!い、い、今なにしたの?」
「……僕は愛音を愛してる。リオも好きだしこれからも3人で仲良く生きていきたい!」
そこへ、後ろから聞き慣れた声が飛んできた。
「俺には感動のキスしてくれないのか?笑」
振り向くと、リオが両手を広げて立っていた。
「俺はずっと愛音の気持ち知ってたけどな!良かった。二人がギスギス喧嘩したらどうしようかと、ヒヤヒヤしたぜ。はは。聖人、愛音、良かったな。さ!俺の胸に飛び込んでこい!笑」
「リオ……ありがとな」
「リオ〜もうそーゆーとこズルいよね」
三人の笑い声(叫び声も笑。)が、夕空に響いた。
砂まみれで笑う三人の声はずっとずっと遠い、世界にも響くといいなと。
どこまでも続くこの世界で、僕はようやく“自分の居場所”を見つけた。
“ルシア”ではなく、“聖人”として――
姉上が見た景色、歩いた日常。
僕はこの世界で、それを自分のものにしていく。
過去に縛られず、でも忘れずに。
“今を生きる”ことの意味を、知ったから。
(姉上――僕、幸せになります。君が残してくれたすべてに、ありがとう)
---ルシア、聖人、、いつまでも幸せに…[完]
これで、スピンオフ『ルシア~運命の選択~』は完結です。
“赦されたい”と願った少年が、
“愛されていい”と思えるようになるまでの物語。
彼はもう、後ろを振り返らない。
この世界で、誰かのために生きると決めたから。
そしてきっと、未来でまた――
君に、また会えるから。




