第15話 スピンオフ:ルシア~運命の選択~①
これは、『君にまた会えたら~』本編のその後を描くスピンオフです。
本編13話、そして設定資料編(14話)まで読了された方向けとなっております。
本編で闇に堕ち、償いと向き合ったルシア――
これは、彼の“新たな物語”です。
「扉を越えて、僕は」
――光でも闇でもない空間に、僕はひとり立っていた。
どこまでも白い世界。足音さえ吸い込まれるように響かない。
だけど、僕の中では、ずっと“あの声”が鳴り響いていた。
『……ルシア。償いにきたの??』
聞き覚えのある声を聞きながら感情が蘇る。
あの時、僕は兄上……に毒を飲ませるよう仕向けた…。
妬みや嫉妬であたってしまった、姉上…。セイラに、兄上、母上、をとられた気分だった。。
でも、真実を知ってしまった…
君が“僕の姉”だったこと。
僕は決して“1番”に、なんかなれないこと――
「僕は……何をしていたんだ…」
口に出すと、胸の奥がひりついた。
謝っても、戻れない。
でも、それでも――
「やり直したい。……僕は…母上や兄上。父上とそれから、姉上と…仲良く暮らしたかっただけなんだ…」
静寂が満ちた空間に、誰かの気配が現れた。
現れたのは、僕そっくりの少年だった。
鏡の中のような顔。けれど瞳は氷のように冷たい。
「お前が望むのは“懺悔”か。それとも、“赦し”か」
「……どちらでもない。……“機会”があるなら、もう一度、皆んなに会いたい。だけど今の僕は…今の僕が会っても意味が無い。変わらなくちゃ。生きる理由と…姉上のように誰かを心から愛せるようになるまでは…」
少年は目を伏せたまま、淡々と告げる。
「ならば選べ。
一つは、何もない闇の檻。すべての記憶も感情も封じて静かに終わる道。
もう一つは……“異なる時代”への転生。
ただし行き先は選べない。」
「……”異なる時代”…ハハ、やっぱり僕はもう皆んなに会うことは許されないんだな…
でもわかっている。僕は闇に心が蝕まれたんだ。…転生…自分じゃなくなるような気がするが…それで僕が変わるれるなら。…」
少年の瞳に、一瞬だけ揺れる光があった。
それは、僕自身の奥にあるわずかな勇気だったのかもしれない。
「選択を受け入れた。ならば、ルシアの魂にふさわしい時を授けよう。
“女神の血を引く者”と縁深き、その世界へ――」
強烈な光が視界を覆った。
(姉上…兄上…)
僕は君になりたかった…
君のように、みんなに守られる存在に……なりたかったんだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そして僕は、、神天 聖人として、新たな時を歩き始めた。
――まだ、また君に出会えるとも知らずに。
---光が満ちて、意識が引き裂かれるように遠ざかっていく中、僕はひとつだけ祈るように想った。
(もう一度、誰かに愛される人生を……)
それは、僕がずっと気づかずに拒んできた願いだった。
---
ふと、何かが頬に触れた。
あたたかく、やわらかい――手。
「……起きなさい、聖人。寝坊するわよ」
目を開けた瞬間、そこには見知らぬ天井と、
それよりも信じられないくらい優しい声があった。
「……母上?」
自然に口に出たその呼びかけに、女性は笑った。
「やだ聖人!母上だなんて…笑。また寝ぼけて、いつまで寝てるの?遅刻するわよ!」
僕は、ゆっくりと起き上がった。
自分の手を見る。細くて小さな指、でもそれは“少年”のものだった。
胸の奥にあるルシアの記憶は、今も確かにここにある。
でも、それと同時に…
まるで何年もここで暮らしてきたような
ここでの“生活の記憶”が自然と染み込んでいる。
(……そうか、これが転生)
目の前の女性は神天歩美
知らない記憶では僕の母親の名前と一致する。(母上と似てる雰囲気だ。)
学校と言う所に通っているが、朝寝坊をして起こされているらしい…
(記憶を探るととてもいい家族に転生したようだ…そして、この家には、もう一人……
姉がいる。それは…)
「聖人!!セイトー早く起きないと学校遅刻するよーママも聖人に構ってないで朝ごはん食べよーよ!」
リビングから聞こえてくる、明るくよく通る少女の声。
その声を聞いた瞬間、僕の心は震えた。
(……セイラ?姉上?!)
いや、今は違う。
この世界では、彼女は僕の“姉”として、姉弟としてずっと暮らしていた僕の大事な家族。
「おはよう、聖人!」
パタパタと髪をまとめながらリビングで、朝ごはんを用意してくれている少女…あれは、まぎれもなく……
“セイラ”姉上だ…じゃあここは――
姉上が前にいた世界??
姉上が僕に会う前の…僕の知らない姉上の世界……
こんな事があるのだろうか?
僕は皆んなに許しを乞うため、自分を変えるために選んだ道が…
まさかの、姉上…セイラの転移前の世界。
つまり、神天聖良の世界で僕は”弟”として転生してしまったのだ。
僕は思わず言葉を失い、そのまま見つめていた。
すると聖良は眉をひそめて、笑いながら僕の額に手を当ててきた。
「……大丈夫? 熱ある?」
「っ……ない。ちょっと、考え事だよ」
「変な夢でもみたんじゃない? まあいいや。朝ごはん冷めるよ、急いで!」
その何気ない言葉が、僕には、どんな赦しの言葉よりも尊く思えた。
(……僕はここで何を得られるんだろうか…)
でも一つだけ分かったことがある。
僕はここで生きるんだ。
この世界で。この名前で、生きていく。
姉上―セイラ―いや聖良。
君が生きたこの世界で、僕もまた、歩き出すよ。
たとえもう、君に“ルシア”と呼ばれることがなくても――
---
転生したその朝、僕は確かに、
“自分の人生”を受け入れる覚悟をした。
そして、この日から半年。
かけがえのない時間が始まるのだった。
---僕は 神天聖人として…
第16話「姉と過ごした半年」
穏やかに流れる日常。
でもその中に、小さな違和感と、温かな想いが芽生えていく。




