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第11話「砕けた絆、交差する運命」

晩餐会――それは、栄誉と絢爛に包まれた表舞台。

だが、光の強さは影の濃さを際立たせる。

ゼノの“婚約発表”は延期されたまま、不穏な空気を孕んだまま夜が訪れる。


緊張と不安のなか、セイラの胸に芽生える異変。

そして、忍び寄る毒と陰謀。


誰かの命が消えかけるその瞬間、

目覚めかけた“力”が揺れ、止めたのは、あの人の叫びだった――


真実と秘密が交差し、舞台は決定的な転機を迎える。


晩餐会の夜。王宮の大広間は、煌めく灯火と音楽に包まれていた。


セイラは、落ち着かない胸の鼓動を抑えながら、着飾った貴族たちのあいだを静かに歩く。ゼノとともに披露されるはずだった“婚約発表”は、延期されたまま。この場に彼と並び立つ理由も意味も、今のセイラには分からなかった。


そんな中、グラスを手にしたゼノが現れる。少しだけ顔色が悪いように見えた。


「セイラ……すこしだけ……話せる……か……」


「はい……でも、ゼノ様……お顔が……?」


ゼノは笑ってみせたが、その指先は微かに震えていた。


──その直後。


ゼノの手からグラスが落ち、鈍い音とともに砕けた。次の瞬間、彼の身体が崩れ落ちる。


「ゼノ様!?ゼノ殿下!!」

「誰かぁぁぁ!」「誰か!水を……!」


会場が一気に騒然とする中、セイラは真っ青な顔で彼に駆け寄る。


「ゼノ様……っ、しっかりして……!」


唇は紫に染まり、呼吸は浅い。目を閉じた彼の顔は、ひどく静かだった。


セイラの中で何かが音を立てて壊れた。


心の奥底で、何かが揺らぎ、満ちていく……。


──癒しの力? それは女神の“祝福”。


「熱く光ってる……できる……わたしならできる……!」


手のひらが淡く光り出す。けれどそのとき、リオンが叫ぶ。


「ダメだ!!セイラ!!やめてくれ……!」


セイラは振り向くことなく、ゼノの頬に手を伸ばそうとした。けれど、その腕を後ろから強く抱きとめられる。


「リオン……離して!早くしないとゼノ様が……」


「……この場で、その力を使ってはだめだ。……あなたの中の……“何か”が……目覚めてしまう……!」


「でも……でも……ゼノが……っ!」


「私が……あなたを守ります……。だから……あなたは身を壊すような真似はしないでくれ……っお願いだ……」


セイラは、リオンの腕の中で、必死に涙を堪えていた。


そのとき。


「もう……十分です……」


静かな声が、大広間の騒ぎを切り裂いた。


人々が振り向くと、そこに立っていたのは


──王妃セリーヌ。


月光のような冷たい気配を纏い、彼女はゆっくりとゼノに歩み寄る。


「ゼノ……待っていて……レオファルド!これは、あなたの仕業でしょう。……そしてあなたも、ルシア」


誰にともなく呟いた言葉に、リオンとセイラの目が大きく見開かれ振り返る。


セリーヌはそっとゼノの胸元に手を置くと、静かに目を閉じた。


セリーヌの手から、柔らかな光が溢れ出す。それはまるで、遠い昔に祈りを捧げた女神の記憶──

白い風がゼノを包み込み……


──時の流れが一瞬止まったようだった。



わずかな時を経て、ゼノが咳き込み、意識を取り戻した。


「…んっ…セイラ……?」


「ゼノ!!!」


セイラは彼の名前を呼び、涙をこぼす。


リオンはセリーヌを見つめ、言葉を失っていた。


彼女は微笑むことなく、冷たく言った。


「“ルアリス”──静寂の花による毒。前王を葬ったのと同じ……そう、レオファルドの得意技ですわ。」


その場にいた貴族たちは、息を呑む。


王妃のその言葉が、どれほどの意味を持つのか……誰もが理解していた。


そして。


セイラは、胸の奥にある“何か”がまだざわめいていることに気づく。


癒す力。心を蝕む痛み。そして、今目の前にある陰謀。


(わたし……何者なの……)


ゼノの命を奪おうとした者。


そして、助けようとした自分。


舞台は整えられた。


次の一手を握るのは、“女神の記憶”を持つ少女か、“王の血”を目覚めさせた者か──


アルセイラ王国の運命は、いま大きく交差し始めていた。



---

ご覧いただきありがとうございました。


晩餐会の一夜で、大きく揺れた運命。

セイラが“癒しの力”を使おうとした場面は、彼女自身の“覚醒”に繋がると同時に、リオンやセリーヌとの絆がより深まるきっかけになりました。


セリーヌの登場と、毒の真実。

そしてゼノの命を狙った者の正体――

物語の根底にある「王宮の闇」が、ついに輪郭をあらわにし始めます。


次回、最終話「君にまた会えたら~」。

交差した運命の先に、セイラたちが選ぶ“未来”とは?


どうぞ最後まで、お付き合いください

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