八十八話 重なる絆
放課後を迎え、繭奈と冬夏の三人で下校する。繭奈はもちろん、冬夏とも手を繋いで。両手塞がってるから危ないね。
いつものように俺の家に三人で上がり、行為を始めようと服を脱ぐ。
「なぁ冬夏」
「ん、どしたの?アタシから先にシたい?」
下着姿となって脱衣に励む中、俺のかかかか呼び掛けに応えた冬夏が、可愛らしく小首を傾げた。先にヤるのは繭奈なので、その質問への答えはノーだ。
「いやさ、今朝の話で言いたいことがあって」
「今朝?なになにー?」
するするとショーツを下ろしながら返す冬夏。心当たりはなさそうだ。
「ほら、冬夏にきっと良い相手ができるとかって話」
「あーあれ?アタシには、龍彦しかいない!って思ってるけど、アンタはそうじゃないの?」
なにを思ったのか、冬夏は少しだけ不安を滲ませるように、脱ぎ終わってベッドに腰を下ろして上目遣いでこちらを見る。俺もそれに合わせて、彼女の隣に腰を下ろした。
「そうじゃなくて、嬉しかったって話さ」
「嬉しい?」
目をぱちくりとさせ、冬夏がオウム返しをした。こちらを見ながら少しばかりの逡巡の後、ゆっくりと頬を朱くしていく。
言葉の意図を理解したのか彼女は、ニシシと照れくさそうに笑った。かわいい。
「やめろやい♪恥ずいじゃんそんなこと言われたらぁ♪」
「でも、本当のことだから。繭奈も冬夏も、俺を選んでくれてすごく嬉しいよ」
ニコニコとしている冬夏に手をそっと重ねて言うと、生まれたままの姿になった彼女に勢いよく抱きつかれ、そのまま布団に押し倒された。最高か。
「あーもーダメだって!そんなこと言われたらどーしよーもなくなるから!」
「龍彦くんってば、とんでもない口説き方をするわね。他の子にそれやっちゃダメよ?」
「他に相手がいねぇよ」
冬夏は足をバタバタとさせて、悶えるように可愛く抗議をしてくる。といっても照れ隠しだろうが。
照れくさそうにした繭奈がなにやら杞憂をして、倒されたままの俺に目線を合わせる。
「ふふ、龍彦くんがそう言うならしないのでしょうね。それと、私もあなたに選んでもらえて嬉しい♪」
繭奈はそう微笑んで、押し倒されたままの俺に唇を重ねた。
そんなことのあった翌日、学校が休みの日である今日は繭奈と冬夏とデートである。駅前にて待ち合わせなのだ!
その場所に向けて足を進めていると、街に入ったからか人が段々と増えて特有の喧騒に身を包む。
信号待ちの間にポケットからスマホを取り出して時間を見てみると、時間には二十分ほど早く着きそうだった。
信号が青に変わり、一斉に歩き出す人々と共に俺も前に足を進める。ふと気になって横を見ると、そこにいたのは冬夏であった。
せっかくなので、彼女の肩をとんとんと叩いてみる。
「おはよう」
「あぁ……?あっ、龍彦!」
いきなり肩を叩かれたからか、冬夏は敵意さえ滲むような表情でこちらを睨む。しかし、相手が俺だと分かった途端、パァッと笑顔を咲かせた。
「驚かせたかな、ごめん」
「いいよいいよ!それにしても、待ち合わせにゃ少し早い合流だねぇ」
手を繋ぎ、冬夏と二人で待ち合わせ場所に向かう。繭奈はまだ来ていないだろうか?
数分と経たないうちに、目的地の駅に到着。近くにあるコンビニの近くには、周辺の地図の描かれた看板がある。繭奈を待つために、冬夏と二人でそちらへ向かう。
「あ、繭奈いるじゃん」
「だな……?」
早くも到着していた繭奈だが、彼女はなにやら男と話をしていた。ナンパだろうかと思ったが、それにしては楽しそうな雰囲気をしている。
彼女が男と笑顔で話すなんて、とても珍しい光景だ。茂相手にだってやらないぞ。
「龍彦、アレ誰か知ってる?」
「冬夏が知らないなら、俺も知らないな」
「だよね」
どうやら、繭奈の話し相手は冬夏にも分からないようだ。彼は随分とイケメンで、俺と違い身長も高い。
爽やかな雰囲気と人受けの良さそうな笑顔で、繭奈と楽しそうに話をしている。
俺の胸中に渦巻くのは、醜く激しい強烈な嫉妬。昨日の今日で何があるというわけじゃないだろうが、やはり穏やかではいられない。
足早に繭奈の元に向かい、相手が誰なのか聞いてみることにする。もしかしたら、ただ単に旧友というだけかも知れない。というか、そうであって欲しい。
しかし彼のその馴れ馴れしさが、見ていてとても気分が悪かった。




