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クールで一途な白雪さん  作者: 隆頭


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七話 深い溝

 俺はもう、露骨に嫌悪した態度を見せてくる春波はるばらのことなどもうどうでもいいと思っている。

 既に彼女らはこっちのことを一切信じていないわけで、とはいえ説明しようにも俺のことは信じてくれないからどうしようもないわけで……もう嫌だ。

 白雪しらゆきは俺……ではなく春波に向けてどこか見下したように笑う。


「知りたかった……ね。嫌悪感を丸出しにしながら嘘つきとか最低とか言っておいて?ふふっ、物は言いようとはよく言ったものね。それはそうと、もちろん疑わしい人間もいるのよ?例えば…というか特に、あなた」


 彼女は春波の言葉を 物は言いようと一蹴し、例の男子を指さした。


「いっいや俺は……」


「あなた、蔵真くんの机に私のペンがあること……知ってたものね?」


 さらにざわつく連中、狼狽える男子生徒クソやろう

 春波はるば山襞やまひだも、絶句して顔を青くしている。どうしてだろうな?まぁどうでもいいけど。


「私のペンが無くなったタイミングとあなたの姿が見えなかったタイミングも一致しているし、あなたが最有力候補なのよ。どう?これでもまだ蔵真くんが私のペンを盗んだだなんて戯言を、言えるのかしら」


 そう言って目を細めた白雪の圧に耐えかねたのか、ソイツはそのまま荷物を持って逃げていった。その態度は認めたようなものだな。


「……どきなさい」


 呆れ顔だった彼女がキッと鋭い目つきでそう言うと、オーディエンスが道を開け彼女はそれをくぐり抜ける。

 俺もそれに追随し、さっさと家に向かう。

 春波たちは当然ついてこない、来て欲しくもない。今は一人でいたいんだ。


「待って、蔵真くん!」


 そう考えていたというのに、どうしてこうもタイミングが悪いんだ?

 二人してわざわざ追いかけてきて……二人で仲良く帰ればいいのに。俺なんか無視してさ。

 とはいえこっちが無視するのはいけないかと後ろを向く。


「ごっごめんなさい!蔵真くんのこと疑っちゃって……」


「おかしいとは思ったの。でも、なんていうかその……」


 春波と山襞がそう言って頭を下げるが、今更そんな態度をとられたって困るし、そのまま嫌悪感してくれた構わないんだがな。

 まぁ容疑者の " 俺はやってない。知らないうちに入ってた " だなんて信じたくないのか。


「別にどうでもいいよ。疑われたところで死ぬわけじゃないし、俺はやってないって言ったところでどうしても信じたくなかったんでしょ?それでいいじゃん、二人とも気にしなくていいよ」


「うぅ、その……」


「もういいから、気にしないで。せっかくだし皆で遊びに行ってくれば?嘘つきで最低な人と行くより楽しいと思うよ。それじゃ」


 犯人は俺ではないが、それでも知らない人からすれば俺が疑わしく感じることも事実。あそこでなにがなんでも俺を信じてくれるだなんてことは一切期待してないし、そもそもそこまで関係値も高くない。

 なまじ事実も混じっているせいで俺の言葉に信憑性も感じないだろうし、あんなもんだと思うよ。

 だから俺は一人で帰る、なので二人に手を振ってさっさと歩みを進めた。


 二人は呆然と立ち尽くしていたけど、俺はそれに一瞥もくれず気にもとめなかった。


 もうアイツらとは終わりさ、さようなら。

 そんなことを心の中で呟きながら、俺は帰路に着いた。




 翌日、俺はとても目覚めが良かった。なんでだろ?

 今日は塩と砂糖を間違えることも無く、無事に弁当が出来た。いやー調子がいいね!

 目もパッチリだし朝ごはんもおいしい!こういう平和な日々が続いて欲しいもんだよ。


 学校に着いて教室に向かう。俺の席の隣には相変わらず二人の女子生徒がいたが、まぁどうでもいいか。


「おっおはよう」


「ん?あぁおはよう」


 まさか話しかけられると思わず一瞬戸惑ってしまうが、きちんと挨拶を返す。コレ大事。

 おかしいな、俺の記憶が正しければ二人とも もっと明るかったハズだが……なんてな、どう考えても昨日の事だろう。

 正直声掛けてこないと思ってた。だって俺って嘘つき最低野郎だし?


 それなのでとっくに嫌われていると思っていた。だから関わろうとしなかったのに、どういう風の吹き回しだ?


 まぁ二人ともそれ以上話しかけてくることはなく、俺もいちいち喋りたくないのでどうでもよかった。

 そんな様子を見たしげる貝崎かいさきが心配そうにしていたが、特に説明もしなかった。

 茂には問いただされたものの、適当に価値観の違いとだけ言っといた。どうでもいいし。





「というわけで、俺らは先に教室に戻ってっから」


「は?」


 学校が終わりこれから下校だとウキウキだったのに、気付けば茂に呼び出されてこんな所に。

 ここはある廊下の一角で、あまり人の通らない場所で定評がある。いや知らんけど。

 相手は春波と山襞だ、彼女らは貝崎に呼び出されたらしい。


「えっえと……蔵真くん、昨日は本当にごめんなさい!」


 春波がそう言うと山襞も謝って二人で頭を下げる。いやだからさぁ……

 別に俺の言い分を問答無用で信じてくれだなんて言うほどワガママじゃないし、彼女らの昨日の反応はある意味当然なもの " かも " しれないし、なによりどうでもいいんだってば。だから俺の事なんてほっといて欲しい。


 二人にはそう言った、なのに聞き入れてくれない。

 周りの連中と一緒になって気持ち悪がられたことは割と不愉快だった。どいつもこいつも信じようとしないならそれでもいい。それなら距離を置いて欲しいし、あんな目を向けられて尚も関わりたいだなんて思えない。

 俺はハッキリとそう伝えた、それなのに……


「それでも……それでも私は、私たちは蔵真くんと仲良くなりたいの。次からはちゃんと信じるから、だからお願い……!」


「いや知らんし。俺の言葉に聞く耳を持たなかったわけだしさ、べつにそれでいいじゃん。ほじくり返すのもあれだけど、気持ち悪いんだろ?俺は」


「うぐっ……そっそれは……」


 どうしてそうも、関わろうとしてくるんだよ。

 もう放っといて欲しいのに、なんでいちいち距離を詰めてくる?


 独りよがりだよな、まったく。

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