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クールで一途な白雪さん  作者: 隆頭


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七十六話 見るに見兼ねて

 あれから、多数の男子たちが繭奈にアプローチをしているが、当然その全てが失敗しているらしい。それによって繭奈の苛立ちは増していくばかりなのだが、かといって学校内で俺にできることは少ない。

 できるだけ人目につかない場所で、こそこそとするくらいだが、それだけじゃ繭奈は満足できやしない。


 学校終わりには俺の家で会ってはいるが、如何せんそれまでの時間が長すぎるのだ。学校の中でも彼女と一緒の時間を過ごせるのならいいのだが……


 そんな中、冬夏は学校でもだんだん距離を詰めてきて、周囲からの誤解は完全に定着してしまった。

 そんな俺たちを見ているので、繭奈のフラストレーションはより早く溜まってしまうだろう。


 今日もそんな彼女と、学校の廊下で顔を合わせた。


「面倒くさいわね。なんであんな連中と遊ばなきゃいけないのよ」


 いつもより鋭さを失った繭奈が、ため息混じりにそう言った。先ほど教室で、男女のグループになにやら誘われていたな。

 当然断っていたが、それでも食い下がってくる男たちに辟易しているのだろう。だいぶ気の毒だ。


「やっぱり俺たちが付き合ってること、みんなに知ってもらった方がいいんじゃないかな」


「でも、それをすれば龍彦くんが変なことを言われてしまうわ」


「そんなこと知るか」


 自分の恋人にしんどい思いをさせているというのに、俺ばかりが楽をしてもいけないだろう。そりゃ最初はアレコレ言われるだろうが、時間が経てばそれだって落ち着くはず。

 繭奈が嫌な思いをしているこの状況を、ただただ甘んじて受け入れる方が嫌だ。


「そう言ってくれるのは嬉しいけれど、そんな気遣いは要らないわ」


「うるせぇ」


 強がりを見せる繭奈に、少し強引に抱き締めて口付けで応える。正論とか理屈とか、そんなのはどうでもいい。

 ただ繭奈を守りたい。


 唇を離すと、彼女は恥ずかしそうに俯いて目を逸らす。それがあまりにも可愛くて、思わず手付きがやらしくなってしまう。


「ダメっ……龍彦くんから誘われたら、我慢できないからっ」


「あっ、ごめん」


 気が付けば繭奈の尻に手を添えてしまっていた。すぐにその手を離すと、彼女は俺の胸に顔を(うず)めた。


「えっ、蔵真くん?」


 そんな俺たちに声をかけてきたのは、同じクラスの女子生徒たちだ。せっかくなら、彼女らに本当のことを伝えてもいいだろう。


「まさか浮気?冬夏と付き合ってるんじゃないの?」


「私 冬夏呼んでくる」


 彼女たちは怪訝そうにというか、信じられないといった表情をしている。そりゃあ彼女たちからすれば、俺は浮気をしている最低な野郎だろう。

 しかし、そのうちの一人が冬夏を連れてきてくれれば話は早い。事情を伝えれば彼女も納得してくれるハズだ。なんというファインプレー。


「浮気もなにも、俺は元々繭奈と付き合ってたからな。夏休みに入る前から」


「は?いやいや、じゃあなに?もしかして冬夏と浮気してたってこと?」


「サイッテー、冬夏 きっと悲しむよね。アンタみたいな男なんて死ねばいいのに。浮気とかありえない」


 残った二人がそれぞれ怒っているが、俺たちの関係は繭奈も冬夏も納得しているので、彼女らの言い分は的外れと言える。

 その言い分に、繭奈が口を開いた。


「全然違うわね。浮気とかそんな単純な話じゃないわよ。それに、冬夏は全部知ってるわ」


 繭奈の言葉に二人の女子生徒たちは顔を見合わせる。その後ろから、やっと冬夏がやってきた。

 おせーよ休み時間が終わっちまう。


「あー!二人ともこんなところでイチャついて!」


 俺たちを視認した冬夏が、そう言ってこちらに駆けてくる。その勢いのまま、俺に抱きついた。

 それを見ていた女子生徒たちは、目を見開いて驚きを(あらわ)にしていた。


「どーすんの、バレちゃったじゃん!口止めしとく?」


「いや、もう隠すのはやめにしよう。繭奈がだる絡みされてばっかだし」


「あー、そうだよね。さっきのアイツら、見てるだけで鬱陶しかったもん」


 俺の言葉に冬夏が理解を示す。全く怒る様子のない彼女を見た女子生徒たちは、恐る恐るといった様子で口を開いた。


「えっと、どういうこと?二股?」


「ちがうー、アタシは愛人枠なんであって、二股じやありませーん。あでも、龍彦以外は勘弁ね。龍彦だからいいの」


「えぇ……?」


 まるで理解できていない女子たちだ。むしろそれが当たり前の反応だが、わざわざ理解を求めるようなことでもない。

 俺たちがいいと思えば、それでいいのだ。

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