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クールで一途な白雪さん  作者: 隆頭


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四十話 たこ焼きうめぇ

 繭奈と笹山と一緒に加えて春波(はるば)と山襞の五人で祭りを回ることになった今、人混みによってはぐれたりしないかを気にしつつ、屋台で何を食べようかと物色していた。

 今はたこ焼きをはふはふと食べているところだ。

 そんな俺を春波がじっと見つめていた。


「どうしたの春波さん?」


「えっ?あっなんでもないよ、ごめんねジロジロ見ちゃって」


「いや別にいいけど……」


 見つめられていたことが気になって声をかけてみたのだが、彼女は顔を赤くして手をブンブンと振った。あんまり見つめられると恥ずかしいぞ。


「もしかして春波さんもたこ焼き欲しい?」


「えっ……」


 もしかしたら一つだけ食べてみたいと思ったのかもしれないとそう思って聞いてみた。

 そう何個も食べたいわけじゃないけど、ちょっと気になるみたいな。そういうことならシェアしても良いかなと思ったのだ。

 しかし彼女はきょとんとしてしまったので、別にそういう訳でもなかったのかもしれない。


「……あっいやその……うん」


 三秒ほど逡巡をした春波が、赤くなっていた顔をさらに()くして頷く。

 まぁ確かにいきなり分けてくれだなんて、そんなことを言うなんて恥ずかしいよな。

 流石に二つ三つとはあげれないが、一つくらいならいいだろうと思い、串にたこ焼きを刺して彼女に差し出した。


「そっか、はい」


「えっえっ、いいの?ほんとに?」


「いいってば、けど熱いから気をつけてね」


 春波はおそるおそるといった様子でゆっくりとたこ焼きを ぁんっ!頬張る。だが熱かったようで、彼女は はふはふと口に手を添えていた。

 それを見ながら俺もまた一つたこ焼きを食べると、隣から来る視線に気が付いた。


「えっと、どうしたの?白雪さん?」


「なんでも……あるわね、見せつけられて困るってるのよ」


「あー、そりゃごめん」


 だってすごい食べたそうにしてたんだもん、気になっちゃうよ……とは思ったが、恋人(まゆな)の目の前でやることではなかったな。

 また後でフォローしよう、かわいいやつめ。


「んふふぅ、おいしっ♪」


 ちなみに春波は俺たちのやり取りを知らないままに、美味しそうにたこ焼きをモグモグしていた。っぱ可愛いな。


「むぅ、告美(つぐみ)ばっかり羨ましい……」


「まー蔵真の隣にいるのは春波ちゃんだし、しゃーないっしょ」


「……あとで私も告美に替わってもらおうかな」


 後ろで何やら笹山と山襞が話をしている。別に俺の隣なんて……と思ってしまうが、敢えて言うまい。山襞の言葉を聞いた笹山が ふぅん…と、何かを察していた。



 ─────────────────────



 まさかまさかの展開!嬉しいな嬉しいな♪


 蔵真くんの隣にいるだけでも嬉しいのに、たこ焼きをあーんまでしてもらえるなんて、願ってもないことだった。

 もうこれ付き合ってるってことだよね?串っていう細い物ではあるけど、間接キスまでしてしまった。



 夏休みに入ってからというもの、中々彼と遊ぶことも出来なかった。そもそも私も山襞(レナ)も勇気を持ってないせいで彼と連絡をとれず、やっとの思いで夏祭りという口実を得たものの、その誘いも先約があるとの事で断られてしまった。


 もしかして、蔵真の友達の(はす)くんが、その先約の相手かな?とも思ったのだけれど、その恋人である貝崎(タカネ)が蓮くんと祭りを楽しむと聞いていたので、じゃあ誰が相手なんだろうと悩んでいた。


 もしかして彼女ができたのかなとか、嫌われてしまったのかなとか色々とネガティブな考えが過ぎってしまっていた。

 そもそも急だったのだし、彼にも予定はあるはずなのだから仕方ないかと思い、気を取り直して私とレナの二人で祭りを楽しもうと考えやってきた。


 そうしてレナと二人で歩いていると、見覚えのある背中が見えるではないか!しかも、私の好きな人の背中が!

 それに気が付いたのはレナも同じで、私たちはすぐに彼を追いかけてその肩を叩いた。


 ここしばらく遊ぶことも喋ることもできなくて、ずっと会いたいと願っていた人と会えた喜びで私は今にも抱き着きたい気持ちでいっぱいになる。


 すでに私たちの眼中には彼しかおらず、先の断られたという出来事もすっかり頭から抜け落ちていた。

 だから、その隣に誰かがいるかもしれないという事さえ、考えてもいなかった。



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