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クールで一途な白雪さん  作者: 隆頭


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三十九話 再会の夏休み

 繭奈と笹山の二人と共に夏祭りを回っている最中、頬を赤くした繭奈が抜け出したいと言い出した。

 夏祭りということで恒例の花火もあるので、せっかくなら落ち着いたところで食事でもしながら、それが見える場所でゆっくりしようと考えて繭奈と話をしていたその時、誰かが俺の肩をポンと叩いた。


「あは♪やっぱり蔵真くんだぁ!」


「こんばんは蔵真くん」


 そこにいたのは浴衣姿の春波(はるば)山襞(やまひだ)だ。彼女らと出会ってしまったことに驚いたこと、そして俺と繭奈が付き合っていることを知らない二人を誤魔化さなければいけないと思ったことで、一瞬頭が真っ白になってしまう。

 しかしこのままではマズいと、二人に気付かれる前に繭奈と繋いでいた手を離した。


 静かにパニックになっている俺に対し、春波たちはとても楽しそう。祭りを楽しんでいるようで何よりだ。


「蔵真くんは今一人なの?今日一緒に回れないって言ってたから、もしかしたら誰かと一緒にいるのかなって思ったんだけど……」


「あぁそれは……」


 実は昨日、春波から今日の夏祭りを一緒に回りたいと連絡があったのだ。

 しかし当然だが、既に繭奈と一緒に回る約束をしていた以上断るほか無かった。


 そのことについては仕方ないことだし何を負い目に感じることなどありはしない。

 だが問題は、今の状況をどう説明するかなのだ。


 今も隣にいる繭奈に二人は気付いていないのか、どことなく熱を帯びたように感じる視線でこちらを見ながら無邪気に問いかけてくる。

 すぐ隣にいるはずの人物に気付かないくらい俺しか見ていないのはいったい何故なのか、甚だ疑問である。

 そんなに人を楽しませるような技術などないぞ。もしかして……と、思わないこともないが、そちら方面に思考を巡らせることもない。


「こんばんは春波さん、山襞さん」


「えっ白雪さん……?」


「どうしてあなたが蔵真くんと?」


 困っている俺を見かねたであろう繭奈が二人に向けて挨拶した。それを受けた二人は俺と彼女が一緒にいたことに困惑しつつ、少しだけ声のトーンが下がる。

 まるで不快感を表すような、そんな感じだ。


「どうしてって、そりゃあ蔵真くんとは今日私と一緒に祭りを回ろうって話をしてたもの。それも先週からね」


 先程の春波の質問に答えるように繭奈はそう言った。まるで自慢気に言ったソレに二人はぐぬぬと声を出す。


「あー……もしかして修羅場?」


「いや、分かんね……」


 バチバチと繭奈と春波の間に火花が舞っているが、それを見た笹山がそっと俺に耳打ちしてくる。

 これを見たままに受け取るというのなら、春波たちは俺と一緒に回りたくて繭奈と張り合っているという事になるが、果たしてそうなのだろうか?


 しかしそんなことより、気まずいのでなんとかならないだろうか?


「あなたたちには悪いけど、今は私と回っているの。また別の機会にしてくれないかしら?」


「それなら、私たちも混ぜてよ。少しだけで良いからさ」


「そうよ。白雪さんがどうしてそこまで蔵真くんに固執するのかは分からないけど、私と告美(つぐみ)だって蔵真くんの友達よ?少しくらい一緒にいても良いじゃない 」


 二人を突っぱねる繭奈に対し、それでもと食い下がる春波と山襞。ここまで言われてしまうと、それを無下にするのも憚られてしまう。

 ちょっとくらい回ってもバチはあたらないだろう。


「そんなこと言われても、蔵真くんがどう思うかしらね」


「あぁそれなら俺は大丈夫だよ。もちろん白雪さんが嫌なら無理にとは言わないけど……」


「「ほんと!?」」


 そりゃもちろん繭奈と二人きりでいた方が嬉しいというのが本音だが、ここで変に春波たちを突き放すのも少し可哀想だと思ったのだ。

 なんなら笹山もいるし今更でもあったからな。


 そう思っての言葉なのだが、繭奈は あらそう……とどこか不服にも思えるような返事をした。なにか間違えたかもしれねぇ。


「悪いけどアタシもいるからね」


「……え?笹山さん?なんであなたが蔵真くんと?」


 今まで気付いていなかったのか、笹山が横から声をかけたことで春波たちもその存在に気付く。

 確かに笹山は何も言わなかったが、かといって別に隠れていたわけでもないので気付かないのにも驚きだよ。


 山襞がどうしてと疑問を呈するが、春波があぁそっかと声を出す。


「偶然白雪さんと会ったから合流したとかでしょ?二人とも友達なんだもん」


「まぁ、そんなとこ」


 本当のところは偶然どころか予定していたのだが、これ以上は面倒になりそうだと思ったのか笹山はそう肯定した。

 実際、わざわざ細かく説明することもないだろう。


 かくして五人という祭りを回るには些か大所帯になったのだった。


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