二話 隣の席の女の子
明るい声で俺の弁当をおいしそうと言ってくれたのは隣の席にいる女の子……春波 告美さんだ。
快活で運動神経が抜群ながら、勉強はちょっぴり苦手な彼女には割と隠れファンが多い。
茶髪のボブカットが相変わらず良く似合っている。
「いや、自分で作ったよ」
「えぇすごい!いつもそうなの?」
彼女はもとより、周りにいるその友人二人も ほぇーと反応している。
褒めてくれるのは嬉しいのだが、どうもリアクションが大きく少しわざとらしく感じてしまう。
しかしソレが彼女の魅力でもある。
「そうだよ」
「えぇーそうだったんだ!料理の出来る男の子っていいよねぇ♪」
春波がそう言うと周りの女子たちも そうだよね!と言って楽しそうにしている。
そう褒められてしまうと嬉しくなって口角が上がってしまう。
「あっ、蔵真くんってばニヤニヤしてるぅ♪」
「そりゃそうだろ、そんな褒められたら誰だってそうなる」
「あははっ、かわいー♪」
からかってくる春波だが彼女の友達らも好意的な反応をしてくれる。だから嬉しくなっちゃうからもうちょっと抑えて……
「……羨ましいヤツ」
「えっ」
そんな俺をジト目で見ていた茂がそう呟いた。まぁそりゃそうだろうな。
そんなヤツの肩にポンと手を置いて一言……
「……いつかお前にもそういう日がくるさ」
それを聞いた春波たちが吹き出すように笑っていた。ちなみに茂は うっせ!と言って俺を睨んでいる。
そんな事のあった放課後、茂がこっちの席に来て一緒に帰ろうとしていた時のこと。
昼に少しだけ喋った春波たちが話しかけてきた。
「ねぇねぇ、私ら今からカラオケ行こうかと思ってるんだけどさ、蔵真くんたちもどうかな?」
「そうそう!せっかくなら来てよ!」
なんと嬉しいことに遊びのお誘いだ。それは本当にすごく嬉しいのだが、今日はスーパーの特売日なのでそちらに行きたいのだ。申し訳ないが断らせてもらおう。
「誘ってくれてありがとう、じゃあ今日はよろしく」
「来てくれるんだ!やった!」
当然のごとく俺はそう言った、断る理由などない。スーパーの特売日など知らん、きっと明日なんだろう。
そもそもこんな楽しい人たちと遊べるんなら行くに決まってんじゃん。なので快諾させてもらった、もちろん茂も大喜びである。
そして彼女らも喜んでくれ、楽しい気分のまま五人で教室を後にするのだった。
そしてカラオケ店に到着し、受付で指定された部屋に入る。
異性から遊びに誘われることなんて初めてのことで緊張してしまうよ。それはどうやら茂も一緒であったようだ。
ちなみに椅子には春波と俺、彼女の友人、黒縁メガネで黒髪ポニーテールの山襞と その向かいに茂とまた女の子が座っている。三つ編みにして少し垂れ目の彼女は貝崎と言うらしい。
向かい側二人はさきほど、趣味が合うことが分かったそうで大層 話が盛り上がっていた。茂はデレデレとしているが時々ソレを貝崎にからかわれている。
仲がいいのは良い事だ。
「さぁてじゃあせっかくだし、蔵真くんから歌ってよ」
「おっ、いいじゃん龍彦、トップバッター頼んだぜ!」
春波と茂がそう言ったせいで周りの二人もうんうんと同乗している。なんてこった。
ちなみに茂は歌わないわけじゃないのだが、どちらかというと聴いてたい方らしく先はいつも譲っているのでいつもの事だけど、まさかこの子らもそんなノリだなんて……
という訳で最初は俺が歌わせていただいた、やっぱりこういうのもいいね。
「いやぁ蔵真くん上手いね!声もすごく良いし最高!」
「めちゃかっこよかったよね!」
「ありがと」
もう褒め上手さん!とても嬉しいのだが照れてしまって顔が熱い。
そんな俺の様子に気付いた両サイドの二人がいたずらっぽく笑っている。
「あは♪もしかして照れてる?」
「いやまぁ……」
春波が俺の顔を覗き込んでからかうように言った。山襞もソレに乗じてからかってくる。
「ふふっ、嬉しいんだ?蔵真くんって可愛いとこあるね♪」
「あぁいや、そのぉ……」
そんなこんなで俺がからかわれている間に茂が入れた歌のイントロが終わって彼が歌い始めた。
どうやら彼が二番手らしい、いつの間にかそういうことになった。
俺と貝崎は知っている作品の曲なのだが、もう二人は知らないようでポカンとしていた。
しかし相変わらず茂も特徴的な声だが上手いな、これはこれでアリだと思う。
それから春波と山襞は流行りの曲を、そして貝崎がアニソンを歌った。それからはまた俺から先程の順番に歌い続け五人で楽しいカラオケの時間を過ごした。
「いやー今日は楽しかったね!」
「うんうん!また一緒に行こうよ」
カラオケが終わりそう言ったのは春波と山襞だ、ちなみに貝崎は茂といい感じの雰囲気である。いつの間に……
「そうだね、また良ければ誘ってくれると嬉しいな」
「うん!」
「また誘うね!」
二人ともがそう言ってくれたので、いい楽しみができた。嬉しいですよはい、当然でしょう?
ちなみに女性陣はとても可愛らしい声で普通に歌上手かったです。貝崎は個性的だったけど、ちゃんと上手で すごいと思ったよ。
春波も山襞も上手だったので素直にソレを伝えると普通に顔を赤くして照れていた。
なんやねん可愛ええやないか。
茂は貝崎と、俺は春波と山襞と一緒に帰路に着いた。彼女らをそれぞれ家まで送り、俺も家に帰って夜を明かした。
次の日、学校に着くとすでに彼女ら席におり、俺は三人におはようと挨拶をした。
「昨日はありがとね、また遊びに行こ♪」
「うんうん、良かったらそっちからも誘ってよ!」
三人とも仲良くしてくれるいい子たちだ、楽しく喋っていると茂もやってきた。
「あっ!シゲくんおはよ!」
「おはようタカネ」
茂は昨日貝崎と二人で帰ったと思ったら、下の名前で呼びあっていて俺と春波と山襞の三人でポカンとしてしまった。マジ?
いつの間にかガッツリ進展している二人が微笑ましく、俺たちは三人で目を合わせて笑ってしまうのだった。