二十四話 彼女の回想(4/5)
愛しの龍彦くんに初めてのハグをした翌日、もっと激しいアピールをこれからしようと考えていたところで、彼が友人と貝崎さんに呼び出されているところを発見した。
またもや盗み聞きをするように、物陰に隠れてソレを見守る。ちょっとドキドキ。
どうやらあの二人とよりを戻して欲しいとのことで、まだ難しいと言った彼に貝崎さんが食い下がった。
その時私は閃いた。ここで私が彼を庇えばきっと仲が進展するに違いないと。
" やめなさい!私の龍彦くんに手を出さないで!"
" まっ繭奈さん……こんな素敵な人だったなんて……付き合ってくれ!"
彼の前に颯爽と現れた私に龍彦くんが手を握ってお付き合いを願ってくる、そんなイメージが私の頭に過ぎった。
よっしゃ勝った!今すぐ行くわよ龍彦くん!
胸中でガッツポーズをした私は助太刀をしようと歩き出した。
貝崎さんたちと話が終わった私はニヤニヤとする口角を抑えられなかった。
別れ際はちょっと強がって 嘘をついてしまったけれど、それでもきっと龍彦くんは私に意識が向いたはず……くふふ♪
そして下校の 時間となり、彼と一緒に帰る誘いをしようと彼の後ろをゆっくりとついていく。
声をかけるならできるだけ人のいない場所の方がいいわね。
『あっあの白雪さ……』
『ごめんなさい』
上機嫌な私に声をかけてくる男の子たちもいたけれど、今はそれどころではないのでとりあえず断っておく。はぁぁドキドキする……
もしバレて蔑まれたりしたらおかしくなってしまうわね、ゴミを見る目で見られたりして……
" うわ……コソコソとつけまわしてストーカーかよ、キモ…… "
うおああぁぁぁっがぁ!龍彦くんの目がァ、目がァァ!そんな目で見ないでぇぇ!
軽蔑するような目で彼に睨まれ、そう吐き捨てられる想像をした私の情緒は静かにとち狂っていた。
しかも先ほど私は彼に冷たくしたばかり、きっと凄いことになるかも……♪
でも妄想はあくまで妄想、イメージの域を出ない以上彼の性格ならそんな事は起きないでしょうね。
脳内龍彦くんを堪能した私は、校門をくぐったあとに龍彦くん本人に声をかけた。一緒に帰るお誘い。そんな唐突な誘いを彼は受け入れてくれた。
ふっ……先ほどまで変態的妄想を続けていた私にとって、そんな穏やかな龍彦くんにやられたりしないわ。ただ浄化されて欲望が剥き出しになるだけ。
そうして二人で帰っていると、彼が私にとある質問をしてきた。私が彼を好きなった理由について。
ちょっとたどたどしかったけれど、きっと私が彼を好きな気持ちを知りたいのね。可愛い♪
ん……?これは良い口実になるんじゃないかしら?デリケートな内容だから、二人きりになれればそのままアレコレに持ち込めるわよね……♪
心の中でいきり立った欲望を振り回し、私はとある提案をした。ついでに彼の手を取りながら。
あぁ……龍彦くんの手、幸せ……でも物足りないわねこれだけじゃ。最低でもハグは欲しい。
だから、二人きりになれる場所……取り敢えず彼の家はどうかと提案してみた。今日ママいるもん。
もしダメならホテルに直行よ。そのお金なんていくらでも出せるわよ。好きな人とどこかに行くなら望んだほうが出すものよね♪
彼の家で楽しむのも良し、ホテルでガッツリ楽しむのも良し!我が作戦に死角……あるわね、もし断られたらアウトだわ。
質問を質問で返してくる彼の肩を掴み、またはぐらかそうとしたり断ろうとする彼にキスをしようと言ってみると承諾してくれた。とても複雑な気持ちだけれど、計画通り……っ!
あまりの喜びにテンションが爆上がりして、ついでに名前で呼んでみた。驚いてはいるけど嫌がらないあたり不快ではないのね。最&高!
そして、今日彼が貝崎さんたちと話していた時に私が言った、あなたの為じゃないという言葉が嘘であると言うこともちゃんと言っておいた。
龍彦くんが助けたかったから、私が間に立ってすこしでも彼の負担を無くしてあげたかったから。
すると彼が急に口元を手で隠したので、何かと聞いてみると、どうやら変な顔をしているとのことで、龍彦くん大好き人間である私としては死ぬほど見たかったので無理やり手をどかそうと彼の手首をガッチリ掴んだ。
ふつうなら力勝負なんて自信はないけれど、欲にまみれた人間の真価が発揮され、その手をなんとかどかすことに成功した。
その時の龍彦くんの表情は成人指定しなければならないほどにセクシーで、一瞬にして私の底知れない欲を満たしてくれた。あ"ぁ"ー幸せぇ!
さすがに恥ずかしかったようですぐにそっぽを向いてしまったけれど、その頬は赤く恥ずかしがっていることが見て取れた。
ごちそうさまでした♪




