二十話 止まらぬ二人
二人で家に入ったあと、飲み物を用意してリビングのテーブルに座りながら、好きな人とゆっくりお喋りしたいと、そんな素朴な願いを繭奈に言った。
嬉しそうに微笑んだ彼女は、そっと俺の手を取った
「好きよ、龍彦くん」
「俺も、愛してる」
「っ……!」
心の底から繭奈が好きである気持ちは変わらない。敢えて言ったとはいえ愛してるというのは的外れでも無いだろう。
どんな言葉でも言い表せないほどに好きなら、もう愛を告げるしかない。でもそれは、とても幸せな事なんじゃないかな?
「もう、本当にお喋りするつもりある?そんなこと言われたら押し倒すわよ?」
「えっ、言っちゃ悪いけどチョロすぎない?」
確かに素直な好意だけど、とはいえそれは俺の本心と言うだけだ。繭奈にそれを知る術などないはずなのにどうして釣られちゃうのかな?
そんな彼女はお菓子を一つつまみ、それを口に放りこむ。
「仕方ないじゃない、龍彦くんと付き合い始めてからタガが外れまくってるもの。今やちょっと甘い言葉を囁かれただけで骨抜きのびしょ濡れよ」
「最後で台無しだよ」
どうして事ある毎に下に走るの?
別に言わなくてもいいような気がするのだが、どうにも言ってしまうらしい。本心だからかな?
「どうせエッチするんだから今さらじゃない?それとも、そんなことする私は嫌いかしら?」
「その質問は意地悪でしょ」
分かりきった質問をしてくる繭奈に笑いながら返す。そもそもヤることヤっているわけで、もし嫌いならヤってなどいない。
それを分かってて言ってるんだもんなぁ……
「そうかしら?でも嫌いってわけじゃないんでしょ?」
「……いや」
このままイジられるのもちょっと癪なのでわざと濁してみる。まぁさすがにこんなのは効かないか……ってあれ、なんか狼狽しているような……
「えっ、嫌?実は嫌だったの?嘘よね?ねぇもし嫌なら謝るから……」
「ちょっと待てい」
今更になって嫌だと言う方がおかしいだろう事をハッキリと伝えると、彼女は胸を撫で下ろした。
いじってる時に、ちょっとしたカウンターを食らうだけで、オロオロとしてしまう彼女はとても可愛い。
そんなこんなでちょいちょい変な話をしていたが、そういえば と二人でどこか遊びに行きたいと言うと彼女も賛成した。
「もう少ししたら夏休みよね、つまり海にプールがあるわよね……くふふ♪」
一体何を想像したというのか、彼女は鼻の下を伸ばしてくつくつと笑っている。かくいう俺も楽しみなイベントではあるから同じようなものか。
「さすがに人の多いところではアレだけれど、際どい水着とかも見せてみたいわね。マイクロビキニみたいな」
「なんて素晴らしい」
繭奈のスタイルで際どい水着を着てしまえばそれはもう立派な兵器である。対男性専用理性破壊兵器といったところか。うん、ダメだな!
絶対に俺か彼女の家で二人きりでしか着ちゃいけないし、当然見るのも俺だけだ!
「龍彦くんからリクエストがあれば当然応えるわ、なんでも言ってね♪」
「ありがと、とりあえず布面積少ないのがいいね」
「まかせて♪」
あれおかしいな?ゆっくりゆったり喋りたいだけだったのだが、気付けばこんなことに……
喋り始めては十分と経っていないのにコレとは……これあれだ、付き合い始めは熱量が凄いってヤツ。
その内丁度いい距離感になったりゆったりした時間も増えるはずだ。普通に趣味を共有してもいいね。
結局あれからそう時間も経たない内にベッドの上でお互い素肌に……やっぱり繭奈は大きいなぁと、彼女のソレを見てふよふよと遊んでしまった。
そんな俺を微笑ましく見つめた彼女はやっぱり押し倒してきた、いずれは俺が押し倒してやる。
そんなしょーもないことを決意しながら、彼女を無事家に送り届けて今は家に帰っている途中だ。
すっかり繭奈に骨抜きにされてしまった訳だが、思えば不思議なもので好意をハッキリ向けられると嬉しくなってしまう。
今ではもう、彼女に興味が無いとは言えないな。
そんな考えが頭に過ぎり、おもわず ふふっと笑ってしまった。
これからも楽しくなりそうだ。




