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十七話 返す好意

 合流した俺たちは、その公園から俺の家に向けて歩き出す。歩きながら先程考えていたことを繭奈に聞いてみた。

 なんでそこまで俺が好きになったのか、きっかけは知ってるけどそれにしたって好き過ぎるだろうと。


「そんなこと言われても……ふぅん、そうね。ぶっちゃけ言ってしまうと顔がタイプっていうのかしら」


「タイプ」


 要するに好みということだろうが……ふぅむ。

 本当に?と聞きたくなってしまうが、まだ彼女は話を続けるようだ。


「それになにより、誰かを気になり始めたらずっと、その人に心を持っていかれるのよね。初恋だから余計にそうなのかもしれないのだけれど、時間が経てば経つほどに段々と、そしてどうしようもなく好きになっていくの。最初は些細な妄想から、今ではガッツリエロい妄想をして捗っているわ♪」


「何が捗ってんだよ何が」


 せっかく前半はいい話っぽい感じだったのに最後ので台無しだよ。繭奈は意外とアグレッシブだな、今更か。


「あら、なにってオ……」


「言うなってーの!」


 ダメだこいつ何とかしたい。だけどこっちがやられちまうぞ、とんでもねーや。

 隙あらば下ネタで撃ち抜いてくる繭奈の口を塞ぐわけだが、コイツは恥じらいとかないのか?他の連中なら喜びそうなもんだけど。ちなみに俺は少しはしゃいでいる、だって楽しいもん。


「話を戻すけど、結局はそういうことよ。龍彦くんが気になって好きになって、好きで好きでそれでも隠して、その気持ちが段々と熟成されたことて今ではゾッコンよ。愛してるわ」


「おぅふ」


 下ネタになったと思ったらまた真面目にそんなことを言われてクラクラしてしまう。嬉しいなぁおい。

 どうやら繭奈は人を喜ばせることが上手いらしい。これで俺ももうゾッコンだ。


「ふふっ、もし龍彦くんが私に好かれてるか不安ならいくらでも言って?もう隠さないから、大好きなのはもう、これからちゃんと伝えるから」


 なんとも参ったことに彼女はもう止まらなさそうだ。もう、勘違いも疑いも出来ないな。

 すると彼女は、ペロリと舌なめずりをして潤んだ瞳で俺を見る。


「これから、龍彦くんのお家で証明してあげる。沢山気持ちよくなりましょう」


 あまりにも妖艶な雰囲気でそんなことを言われてしまいゴクリと喉を鳴らす。これは破壊力抜群だった。


「そういや、自分からアプローチしない優男が好きなのって誰のことなんだ?」


「誰かしらね?そもそも自分からアプローチしない男の子なんて知らないから関係ないわ」


「へぇ?女の子二人も侍らせて王様気取りとも言ったのに?」


 俺がそういうと彼女は うっと声を上げる。関係ないとは言わせねぇぞ。


「それはその、あれよ……龍彦くんは私にとって白馬の王子様だから」


「今どき言わねーよそんなん」


 そこはせめて白々しく返して欲しかったが、まさか嫉妬だけで何も考えずに言っただけともいわないだろう?……え、まさかほんとに?


「仕方ないじゃない、私だって我慢してるのに龍彦くんが春波はるばさんたちと仲良さげにしてるから……」


「え、マジの嫉妬だったの?」


「……そうよ、羨ましかったのよ。悪いかしら?」


 バツの悪そうに目を逸らした彼女があまりにもいじらしく、その手を掴んで家に急いだ。

 色々と感化されしまい、情緒が乱される。


「えっえっ、まさかそんなに?いいわよ行きましょう♪」


「ちょっと待て速い速いよ!」


 こっちが先に急いだというのに繭奈はすぐさまスピードを上げてこちらが引っ張られてしまった。

 後ろから見える彼女の耳はほんのり赤みがかっていた。なんだかんだしたたかだなおい。



 すぐに俺の家に到着し、素早く俺の部屋に向かっては気付けば二人して何も身に付けてはいなかった。


 繭奈は俺の身体にキスの雨を降らし、その度に好きと呟く。そんな姿を見せられれば俺だって我慢できるはずもない。


 思いのまま欲のままに身を任せ、ありったけのエネルギーを互いにぶつけ合った。

 気付けば俺も、心底 繭奈のことが好きになっていたんだと思い知らされた。


 外は日が落ちて暗くなり、電気もつけすに行為に及んだため部屋はだいぶ暗い。

 ずっと暗い中だったのである程度目が慣れて、可愛い繭奈の顔はちゃんと認識できている。


 とはいえ二人して疲れ果て、そろそろシャワーも浴びたいので電気を付けて近くに置いてあるペットボトルを手にとり、片方を彼女に渡す。

 グビグビとお茶を飲み、すぐに空っぽになってしまった。


「ふぅ……今日もたくさんしたわね♪」


「つっかれた……」


 繭奈はツヤツヤとしており、満足気にそう笑った。俺もヘットヘトだが満足だ。

 飲み終えた後は二人で風呂場に向かい、そこでも一戦して身体を清めた。今日は母さんも遅いので、まだ帰ってきていない。


 そのため繭奈を家に送るため一緒に外に出る。

 夏前であるためか生ぬるい風が頬を撫でた。


 手を繋ぎながら、彼女の家に向けて歩きながら雑談をする。ただそれだけの時間が、妙に幸せに感じた。

 それはきっと、繭奈のことが好きだからなのだろう。


 好きな人と一緒にいるのはこんなにも幸せなのかと、とても嬉しい気持ちになった。


「はぁ……もう着いてしまったのね」


「だな」


 そう時間がかからないうちに繭奈の家に着いてしまい、彼女は残念そうな表情をした。俺も名残惜しい。

 彼女が抱きついてきたので、俺もその背中に手を回す。


「今日はありがとう。帰りは気を付けてね」


「うん、ありがと……あと、一つだけ言いたいことがあるんだけど」


「?……どうしたの、改まって?」


 抱き着いたままの繭奈が首を傾げる。きょとんとしたその表情はとても可愛い。

 緊張していた心が、ソレを見て弛緩してくる。


「繭奈……好きだよ」


「っ……ふふっ、嬉しい♪」


 胸に抱くその想いを伝えると繭奈ははにかんでキスをしてくる。抱き締める腕の力をギュッと強めて彼女を感じた。

 唇を離し、互いに見つめ合うと彼女は ふふっと笑う。


「でも、少し早かったわね。もっと手強いかと思ってたから肩透かしに感じてしまうわ」


「そう?じゃあ取り消すか」


「いやいや!ちょっとからかっただけなの、そんなこと言わないで!」


 澄ましたように言った彼女だが俺の返しに必死になった。いやいやと首を振る姿はとても可愛らしく、少しだけ意地悪したくなってしまうが、俺は繭奈ではないのでそんなことはしない。


「そっか、それならよかったよ」


「もう……でもこれで、晴れて龍彦くんの彼女になれたのね。改めてよろしくお願いします♪」


 そう微笑んだ繭奈に俺もよろしくと抱き締めて唇を重ねるのだった。

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