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「レオン様、この話はもう終わりにしましょう」
「そうですね。では俺が留学中の話でも聞いていただけますか?」
「もちろんです。私はアルバート様と婚約するまでメイスフィールド帝国を訪れたことがなかったのですが、すごく素敵な国ですよね」
まず、この国や周辺諸国と比べてとても治安が良かったです。街も整備されていて綺麗でしたし、国民も笑顔で溢れていましたね。お母様の出身である大帝国は大帝国と呼ばれるだけあって、当然あらゆる分野で他国より優れた国ですけど、他国を訪れると改善点や取り入れたいことなどが見えてきます。
「ええ。個人的には皇室直属の騎士団が印象的でした。少し見学をさせていただいたのですが、訓練の風景を見るだけで皇室直属の騎士団がいかにすごい存在なのか分かりました」
「私はあまり剣術に詳しくないのですが、剣術を嗜む方ほどレベルの違いが分かるものなのでしょうか?」
何をするにも知識や実力がある人ほど、さらに上を行く人のすごさが理解できるものだと私は思っているのですが……それは恐らく剣術でも同じですよね。
「俺はそうだと思いますよ。訓練にも参加させていただきたいと思ってしまいました。皆さん、寸分の無駄もないほど極め抜かれていましたから」
「……だそうですけど、お願いして一緒に訓練させていただいてはどう?」
「検討しておきます」
私はまだ訓練風景を見たことがありませんが、レオン様の楽しそうな表情から本当に素晴らしかったことが窺える。良い勉強になるのではないかと思い、傍に立っていた護衛騎士の彼に言うと、こちらに話を振るなとばかりに渋面で素っ気なく返されました。
まあ良いでしょう。私もいずれ様子を見に行きたいとは思っています。それでも剣術に関してはほとんど知識がない私より、その道のプロである彼に混ざってもらった方が実力が分かりやすいのではないかと考えたのですが、今は気が進まないようなので仕方ありませんね。良い訓練方法は大帝国にも取り入れたいのですけど。
ちなみに私の護衛騎士は大帝国皇室直属の騎士団でもトップレベルに強いのですよ。本来ならば常に皇帝陛下のお傍にいられるはずなんですけど、何やら私のお父様に恩があるらしく……それでなぜか皇帝陛下でもお父様でもなく、私の護衛をしてくれているのです。せめてお兄様方にすればよろしいのに。……私の護衛にしたのは私が戦えないからだとは思いますが。
「他にも留学中のお話、聞かせていただけますか?」
「よろこんで」
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