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人の噂も七十五日と言いますが、王立学園卒業パーティーという大事な場で起こった公爵家同士の婚約破棄騒動。あのような事件でもそれは同じようで、お父様が言うにはあれから二週間もすれば日常に戻ったそうです。ですがそれは『噂』の方であって、当事者である私達はまだ後処理で追われていました。
私は皇太子殿下……アルバート様と共に隣国であるメイスフィールド帝国に向かい、驚くほど歓迎していただけましたが、私の伯父にあたる大帝国皇帝陛下やお父様方、国王陛下とはまだ話し合い中です。
「ティア、なにか悩みごとでもあるの?」
「アルバート様……例の件で、関係者への処罰はどうするべきかと思いまして」
「ああ……たしかに難航しそうだね。結局あの男との婚約は最初から無かったものにされたから」
「ええ」
アルバート様のおっしゃる通り、私達の婚約は最初から無かったものとされました。理由は完全に王国側とレモーネ家に非があるにも関わらず、このままだと私の名に傷を付けることになってしまうから、だそうです。最初から婚約自体が無かったことにされるなんて、こんな話は滅多にありません。
それでも大帝国側としてはなんの処罰もなし……とはいかないようで。これは大帝国の体裁を保つためでもありますから仕方ないですけどね。例の件の関係者については全権を大帝国側が得まして、さらに皇帝陛下はできる限り私の意見を採用してくださるそうです。私としてはもう興味がないのでお好きにどうぞと言いたいところですが、こればかりはどうにもなりません。
「処罰の対象は?」
「レモーネ家、身分剥奪された元男爵令嬢と男爵家、国王、それからレモーネ家の使用人だったはずです。罪の重さはそれぞれですが」
「使用人……?」
「私が花嫁教育で通っていた際、夫人の命で私に嫌がらせしていたことを伯父様が知ってしまったようでして。なにやら長兄のリカルドお兄様が告げ口したらしく……なので現在リカルドお兄様からのお手紙には返事をしていません」
私は気にしていませんのに、お兄様が余計なことをされたせいで私の仕事が増えてしまいました。ですがお兄様に悪意があるわけではないと分かっているので文句も言えませんし、その代わりに楽しみにしてくださっているであろうお手紙の返事は先延ばしです。
「そういうことなら、私としてはリカルド殿下に感謝だけどね」
「あら……」
とりあえず、あまり長引かせたい話ではないので早々に決めてしまわないといけませんね。元男爵令嬢についてはすでに投獄されていますけど、追加で処罰を考えるそうです。
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