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「ちょっと、聞いてるの!? どう責任を取ってくれるのよ……!」
「───カティア、ごめんね。ちょっとだけ耳を塞いでいてくれる?」
「俺が塞いでおきますよ」
「ありがとう」
「え、あ、あの……伯父様? リカルドお兄様?」
元男爵令嬢の彼女に言葉を返そうと口を開きかけたところで皇帝陛下が呟きました。理由を聞く前にリカルドお兄様によって耳を塞がれてしまいましたが……私は読唇術が使えるんですよね。『私は』というか、他国の王族は知りませんけれど、少なくともアーリスティンの皇族は全員読唇術が使えます。そのこと忘れておられるのでしょうか……?
『ねぇ、そこの君。少しでも反省の意が見られるようなら私はこんなことを言うつもりはなかったんだけど……君はどの立場でそんなことを言っているのかな? 忘れているのかもしれないけれど、君は罪人だからね。本来ならカティアに意見することすら許されない立場だよ』
あら……ついに怒りが爆発してしまった感じですね。それで私に耳を塞げとおっしゃったのですか。皇后陛下も止めないあたり、同じく我慢の限界のようです。逆にあれだけ怒っていて良くここまで我慢してくださいましたよね。私の話が終わるのを待っていてくださったのかもしれません。
私にはいくらでも意見を言えるのに皇帝陛下には何も言えないらしい彼女は、突然話しかけられて驚いたのかかなり動揺していますね。私の他にも集まっている人がいること、絶対に忘れていましたね、彼女。
『カティアに感謝するべきなんじゃないのかな? これだけ好き勝手言われて冷静に受け答えしてくれるのはカティアくらいだと思うよ? カティアにとって興味のない話でも、私からすると怒りしか湧いてこない。君が罰せられた主な理由である不敬に、今では名誉棄損なども加えられる。分かってる? カティアは直系ではないけれど皇族。そして近い未来、帝国の皇后になる人物。なんで私にこんなことを言わせるのかな? 君のやっていることは死刑にされても不思議ではないことなんだよ。少しはご両親を見習えば?』
『旦那様、いっそのこと死刑判決にしてしまいます? 今ならアニエス様達も賛成してくださると思いますよ』
『っ!』
あの……皆様、皇后陛下の言葉に頷かないでくださいませ。血生臭い方向に罪を変えてしまうと後味が悪いじゃないですか。今日まで期間が空いた分、怒りが募っているのしょうが、少し落ち着きませんか……?
背後から耳を塞いでいるリカルドお兄様は見えないので、代わりにリオンお兄様に目配せしますが美しく微笑まれるだけ。
元々悪いのは彼らの方ですが、国王王妃両陛下やレモーネ家の皆様、男爵達が少し気の毒な状況です。口を挟むことも許されず、かと言って黙っていたらどんどん悪い方向に話が進んでいってしまうのですから。
『それも良いけど……カティアが嫌がりそうだからやめておこうか。面倒なことが大嫌いだからね、あの子は。……君はもう何も言わなくて良いから、さっさと牢獄でその人生を終えて? そしてその頃には後悔できていると良いね。今この瞬間からカティアにその腹立たしい声を聞かせたら死刑にするから、それが嫌なら喋らないようにね。リカルド、もう良いよ』
「伯父様、思っていたよりも穏便で安心致しました」
「あ……そういえば、読唇術が使えるのを忘れていたよ。私も感情にコントロールされるのではなく、コントロールできるようにしなければならないね」
私が声をかけると先程までの殺気が嘘のように穏やかな笑顔を向けてくださいました。たしかに感情にコントロールされるのは良くないですが、本音が見えないとそれはそれで怖いと思いますよ。
それにしてもさすがは皇帝陛下。どんなに穏やかな口調でも放つ言葉一つひとつに重みを感じます。歳を重ねられた……ようには全く見えませんが、久しぶりにお会いしたからか余計にそう感じました。
今日分かったことは二つ。一つは、どんなに事実を並べても絶対にそれを認めない人もこの世にはいること。そして、権力のある普段穏やかな方を怒らせてはいけないこと。この短時間ですごく疲れましたが、私が今日得られたものはそれだけでしたね。
◇
「では皆様、今日はお集まりいただきありがとうございました。今日お話ししたことの詳細については、また後日お聞きくださいませ」
「レオン殿、これから長い付き合いになると思いますが、末永くよろしくお願いしますね。良い関係を築くことができるよう祈っております」
「こちらこそよろしくお願い致します」
最後の言葉で締めくくり、各々軽く挨拶をして退出していく姿を見守ります。そして最後、先代公爵夫人には一言だけ声をかけておきました。『後でお話ししましょう』と言っていましたからね。固まる彼女に一礼し、待ってくださっていたお父様達に追い付くと少し引き攣ったお顔を向けられました。
「カティア、何を話していたんだ?」
「大した話はしていませんよ。少しだけアドバイスをしただけです。とはいえ、もう手遅れでしょうけど」
大切なものは手の届くうちに大事にしなければなりませんよ。いつまでも自分の好きなように扱えると思っていると、気が付けば手中から離れてしまっていますからね。
『レイモンド様やレオン様のこと、愛しておられるのでしょう? 自分の価値観を押し付けるだけではそのうち見放されてしまいますからご注意を』
手遅れなことを分かっていてアドバイスしました。その方が自分でも手遅れなことに気が付いた時、ショックが大きいでしょう? ほんの少しの復讐です。
思い通りにできていた子供もいつかは大人になりますからね。きっとレイモンド様にはもう見向きもされないことでしょう。レオン様も同じく。
あんなことをしていても先代公爵夫人がレイモンド様達を愛しているのは知っていました。せいぜい切り捨てられて絶望してくださいな。そして一生後悔してくださいね。全てはあなたが仕出かしたことから始まった騒動なのですから、ぜひとも悲しみのどん底に落ちてください!
───代わりに巻き込まれた側の私達が幸せを見せつけて差し上げますわ。
ーーー
これにて完結となります!最後までご覧いただきありがとうございました!
この作品はいろんなサイトで公開しているのですが、感想欄で疑問点やご指摘などもたくさんいただきまして、設定として決めていても作品の中にその情報を出していないな、と思ったことを含めて後日談を書きました!
最初は数話で終わる予定だったのですが、書き進める内にどんどん書きたいことが溢れてきて、気が付いたらこのように長くなりました……
少しだけ反省しています。少しだけ。もはや後日談というより続編のような感じになりましたが、最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
追記:リクエストと、部分的に細く書きたいところは番外編を上げるかもしれません。その時はぜひ読んでいただけると嬉しいです。リクエストもお待ちしております。
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