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このお通夜のような空気の中、相も変わらず空気が読めないのか私のことを睨み続けている元男爵令嬢の彼女。当然その姿に気が付いている皇帝陛下の笑顔がどんどん怖くなっていることには気付いていないでしょうね。さすがに二ヶ国の王族が集まるこの場で不用意に口を開くような真似はしないみたいですが、大人しくしていられるのはいつまででしょうか。
「最後にルー男爵家の皆様ですね。たしかアリア嬢、だったかしら? あなたはすでに牢に入れられていたと思いますが、今日まで反省の様子が少しも見られなかったということで無期懲役が確定しました。男爵家は一年以内に爵位を返上すること、そして慰謝料を請求致します。詳細は追って説明されると思いますのでそのおつもりで。男爵、よろしいですか?」
「承知致しました。皆様の温情に心より感謝申し上げます」
あら……あのような後先考えずに行動する娘がいるのでもっと抵抗するかと思いましたけれど、意外にもあっさり受け入れてくださいましたね。甘やかされて育ったようですし、娘の教育を間違えただけで彼らはまともな性格だったのでしょうか? 男爵夫人も頭を下げているだけですし。ただ問題は───
「む、無期懲役って……! それって、一生牢獄で過ごさないといけないってことじゃないですか!」
「そうですね」
「なんで私がこんな目に合わないといけないんですか!? あなたが、カティア様がレイモンド様を放置するから代わりに私が親しくしていただけじゃないですか! レイモンド様に愛されているわけでもないのに、いつまでも婚約を解消しないあなたが悪いと思います!」
「…………」
「ほら、図星だから何も言えないんでしょ!」
彼女……私は先日の卒業パーティーで初めてお話ししましたが、ここまで色々と自由な方だったのですね? 王族の前では声を荒げて止めることもできないからか、ご両親は真っ青になっていますよ。
この件は被害者が多いですね……関係者全員、もっと早くから対処していなかったのも悪かったと思いますが。
「ここまで残念な方とは……いえ、呆れて言葉が出なかっただけです」
「なんですって!?」
そろそろ皆様限界を迎えそうですね。お父様方は言うまでもなく、あのレモーネ家の皆様ですら絶句しています。
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