聖夜☆大作戦 本番+おまけ 下
聖夜☆大作戦のパート3最終話です。
最後までどうぞよろしくお願いいたします!!
――――温室から外へ出た二人。
軽快な音楽は止まり、ゆったりとした空気が流れていた。
ダンスを楽しんでいた人たちはおしゃべりを楽しみ、演奏をしていた兵士たちも飲み物を手にして休憩をしている。
「ビアンカもホットワインを飲みますか?」
「はい、あ~、物欲しそうに見えました?」
「少し・・・」
ユリウスはワインを配っていた使用人から、マグカップを二つ貰う。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
(ほわ~、シナモンのいい香り~)
ビアンカは熱々のワインにそっと口を付ける。
(ん?オレンジ、胡椒、はちみつ、りんご???)
複雑な味の中身を探ろうとしているとユリウスが耳へ囁き掛けてきた。
「美味しいですね」
「はい、とても」
二人は温かいワインを少しずつ飲んではニッコリと見詰め合う。
ーーーーそして、その様子を周りは温かく見守る。
ひらひらと雪は舞い続けていた。飲み終わったマグカップを使用人に渡して、もみの木を何となく眺める。
「大斧の女戦士は見つかりませんね」
オーナメントを見つめながら、ビアンカがいう。
「ーーーーー」
「ユリウス、そろそろ何処にあるのか教えて下さいよ」
ユリウスは少し考えるような素振りをみせる。
(ここで勿体ぶるのは何故?)
「この国で大斧の女戦士と言ったら?」
「私でしょう」
「正解です」
「?」
キョトンとしているビアンカ。ユリウスは鈍感なビアンカが可愛くて、スッと彼女のくちびるを奪う。
「え?」
「大斧の女戦士にキスをしました」
ユリウスは人差し指でビアンカの頬をムニュッ、ムニュッと押す。
「――――私?」
「はい、大斧の女戦士ビアンカに」
「え~、オーナメントのことじゃなかったの!」
「オーナメントとは言っていません」
ビアンカは記憶を振り返る。
「――――確かに言ってませんね。くぅ~ぅ、ずっとオーナメントのことだと思って探していたんですよ!!悔しい!!」
「来年は作りましょうか、大斧の女戦士のオーナメント」
「そうですね、是非!」
(ユリウス、私を揶揄って楽しそうだな。よし、次回は真っ白な魔法使いをセザンヌに頼んで作ってもらおう。そして、嫌がらせのようにあちこちへ飾り倒してやる!)
ビアンカはギュッと拳を握り込む。
「ダイアに先を越されてしまいましたが・・・。そろそろ、私も贈り物を届けたいと思います」
(おおおおっ、ユリウスからの贈り物!!魔法を使うのか?一体、何が出てくるんだ。ワクワクするぞ~!!)
「えーっと、世界の人々に?」
「それはダイアがしたので、私はあなたに贈ります」
「わっ、私に!?」
「見ていて下さい」
ユリウスは懐から手のひらサイズの小さな杖を取り出した。ビアンカは魔法が大好きなので、これから何が起こるのだろうと期待を膨らませる。
周囲の者たちはユリウスが杖を掲げたことにまだ気付いていない。
――――パン!!!
大きな音と共に夜空に大輪の花が咲いた。
「「「「おおおお~!!」」」
皆は空に注目する。
――――ドォン!
更に大きな花が開く。
――――ポン、ポンポンポン。
続いて花束のように小ぶりな花が開いた。
「赤、青、オレンジ、黄色・・・、綺麗ですね」
――――ドォン。
「ビアンカは何色が好きですか?」
「私は青と白が好きです」
――――バン、ババン。
「分かりました」
花火を打ち上げながらユリウスはビアンカに好みの色を聞く。
――――ヒュ~、ドッカ―ン!!
空を覆うほど大きな花火だった。夜空に白と青の花が咲き乱れる。
「凄い!凄いですよ!!」
彼女は興奮して、ユリウスの顔を見た。
「ビアンカ、私ではなく空を見て下さい」
ビアンカは彼の指示通り、もう一度、空を見上げる。咲き乱れていた花は夜空の中心に吸い込まれていくように消えていき、最後にその中心から強い光が放たれた。
「え、何か出て来た!?」
光の中から天翔けるペガサスが飛び出して来た。それはあの絵本と同じストーリーで・・・。
「『聖夜の奇跡』と同じ・・・」
ビアンカの呟きを横で聞いて、ユリウスはニヤリと笑う。
「同じではないですよ」
彼はビアンカに聞こえないくらい小さな声で呟くと、杖先でくるりと小さな円を描く。
空を駆け回っていたペガサスは足を止め、そして・・・。
「こっちを見ている。んっ、気のせい?」
ぺガサスと目が合ったと思った次の瞬間、ペガサスは狙いを定めたと言わんばかりに地上へ向かって落ちてくる。まるで流星のように。
「わわわわ~、やっぱりこっちに来てる!?ユリウス!!コレどうしたら」
「大丈夫です。堂々としていて下さい」
「いや、あの大きさで突っ込んで来られたらって、あああっ、これ、あなたの魔法でしょう!!止めて~」
「ペガサスは魔法ではありません」
「へ?」
(ユリウスが何かおかしなことを言ったような気がしたのだが・・・。というか、ぶつかるぅ~~~~!!大斧の女戦士ビアンカもあんなものに体当たりされたら流石に死ぬぞ!)
一応、戦士らしく直立不動で空を見上げている。だが、ビアンカの心は大きく乱れていた。
「可愛いので心配は要りません」
「可愛いって・・・。知り合いなのですか!」
「はい」
「はぁ?」
(ペガサスって伝説の生き物じゃないのか!?ユリウス~)
そうしているうちにペガサスがビアンカに突っ込んでくる。
「うわ~~~~!!」
――――ポスッ。
「?」
ビアンカは微動だにしない。大きな衝撃を覚悟して、足を踏ん張っていたからではなく、別の原因で・・・。
「小さっ!!!」
胸に張り付いていたのは手のひらサイズのペガサスだった。
「仔馬です。大切に育てて下さい。大きくなったら、この子に乗って空を飛べますよ」
(仔馬?育てる?えっ?)
ビアンカはペガサスを手のひらに乗せて首を傾げる。ペガサスは愛らしい瞳で彼女を見上げていた。
(いや、可愛いけど、可愛いけれども、育てるって・・・)
「心配しなくても私が一緒に育てます。必要なものも揃えていますから、ご安心を・・・」
(珍しくユリウスがやる気を見せているのが気になる。だけど、この可愛い姿をみたら、嫌だとは言えない・・・か)
ペガサスの背をビアンカは人差し指でそっと摩ってみる。嬉しそうなそぶりをするペガサスに胸がキュンとした。
「分かりました。大切に育てます。ありがとうございます」
ユリウスはビアンカを抱き寄せる。
「来年はもっと驚いてもらえるように頑張りますね」
「えっ!?」
――――今年の聖夜は巨大なオーロラと花火、そして天翔けるペガサスが夜空に現れ、翌日、大陸中で大きな話題となった。奇跡を見た人々は歓喜の声を上げ、神の存在を身近に感じた。
すっかり途絶えていた祈りの声、それが主神ダイアの元へ届き、彼の胸を温める日も遠くは無いはず。
そして『聖夜の奇跡』著者のモルトの懐が温まったという話は、また別の機会に・・・。
♢♢♢おまけ♢♢♢
後日、ビアンカはXにボヤいた。
「ユリウスの贈り物のチョイスがおかしいと思うのは私だけか?」
彼女の肩には小さなペガサスが乗っている。
「いや、ビアンカさんの感覚は正しいっす。自分もペガサス飼育キットを運ばされてるなんて思わなかったんで~」
「来年は阻止して欲しいんだけど」
「あ~、それは無理っす。すみません!」
(来年、また伝説の生き物が増えたりしないよな?というか、ユリウスはどうやってペガサスを手に入れたんだ?――――あ~、夫に謎が多過ぎるっ!知りたいけど、知りたくない~~)
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