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大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)  作者: 風野うた
番外編

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聖夜☆大作戦 本番 上

聖夜☆大作戦のパート2です!


少々長いので上下に分けました。

最後までどうぞお付き合いくださいませ!!

 二日間の里帰りを終え、王都から転移魔法陣で領都バリードに戻ったのは日が暮れた後のこと。


「おおおおっ!?凄い!!」


 ビアンカは驚愕した。その理由は街が光で溢れていたから。至る所にキラキラと点滅するランプが吊り下げられ、可愛い飾りつけをしたもみの木もあちらこちらに置かれている。その上、小雪も舞っていて幻想的。


「これ、あの絵本の世界みたいだ・・・」


 本を愛するビアンカが幼い頃に何度も読んだ『聖夜の奇跡』という絵本と同じ情景が今、目の前に広がっている。


「ビアンカ、お帰り」


「ユリウス・・・、迎えに来てくれたのですね」


 彼は小さく頷く。


「どうですか?バリードの聖夜は美しいでしょう」


「ええ、とても美しくて驚きました」


 ユリウスはビアンカ肩から大斧を軽々と取り上げて、持参した純白のショールを彼女の肩へ掛けた。


「あなたが居なくて寂しかった」


「えっ?」


「ただ、そう思っているのは・・・、残念ながら、私だけではなかったようです」


 ユリウスは視線を辺境伯城の方へ向ける。


「さあ、私達の家へ帰りましょう」


 ビアンカを優しく抱き寄せて、ユリウスは転移魔法を展開した。


♢♢♢♢♢♢♢


――――二人は中庭へ降り立つ。


「ふえええええっ!!」


 ビアンカは声を上げた。中庭のど真ん中に建物(四階建て)を超える高さのもみの木が立てられ、途轍もない数のオーナメントが飾られていたからだ。


 また、城の壁面にはガラスの星が無数に吊り下げられており、一つ一つの小さな光が大きな輝きを創造していた。


「凄い・・。ユリウス、お城が夢の世界みたいです!!」


 ビアンカは声を弾ませる。


「あ~、天使もいますよ!!ほら、あそこに・・・、見て、見て!!」


「かなり離れているのによく見つけましたね。――――そういえば、大斧の女戦士もいるらしいですよ」


「えっ!何処に!?」


「私の近くに」


 ユリウスから揶揄われていると気付いていないビアンカは、十歩先にあるもみの木へ吊るされたオーナメントを一つ一つ、目を凝らして確認し始めた。


(大斧を持った戦士のオーナメントは何処だ~???)


――――ここで、ユリウスは少し離れたところに待機していたルイーズへ指示を出す。数秒後、軽快な音楽が流れ始めるとそれに合わせて、妖精の衣装を身に纏った侍女たちのダンスが始まる。


「うそっ、何処から出て来た!?アリエル、セシル、レイナと・・・、はぁ!?重鎮のアンナまでいるぞ!」


 オーナメントに気を取られ、気配を感じられなかったことを悔やむビアンカ。ユリウスはこっそりと下を向いて、笑いをかみ殺す。


「ビアンカ、聖夜は私を称える祭りらしいな。先日知った」


「主神!!」


 ヌルッと現れる主神ダイア。またしても、気配を感じ取ることが出来ず、ビアンカは地団太を踏む。


(くぅ~!!里帰りで勘が鈍ったのか!?やはり、実家は鬼門なのかもしれない。余程のことがない限り、帰るのは止めよう・・・)


「私のことを祝ってくれる人々に少し贈り物をしよう」


 彼は両腕を前に出して、指をパチンと鳴らした。


――――夜空に虹色のカーテンがフワッと現れて、ユラユラとはためき始める。


「「「うお~~~っ」」」


 何処からともなく歓声が上がった。ビアンカもユリウスもその神秘的な風景に目を奪われる。


(あ~、これ、『聖夜の奇跡』に出てきたやつだ。偶然にしては出来すぎているような・・・)


「主神、この虹のカーテンは街の人々にも見えているのですか?」


「街の人々だと?私のことをバカにしておるのか!これは今夜、空を眺めた者全員が見られる。私の作った世界、すべての人々への贈り物だからな」


「すべての人々へですか。主神って、神様みたいですね」


「ビアンカ・・・、みたいですねではなく、私は神だ」


「いつもこの辺を散歩しているから、つい忘れてしまうんですよ」


「うっ・・・」


 主神ダイアは胸を押さえた。図星だったからである。


「いや~、まさか留守をしている間にこんなことになっているなんて思いませんでした。ユリウス、準備が大変だったでしょう?」


 ユリウスは返事の代わりにニッコリと微笑む。


 彼の後方では妖精のダンスは終わり、使用人たちが輪になって踊り始めていた。


「私達も踊りましょう」


 ユリウスはビアンカの手を引いて、輪の中へ。


――――ビアンカは帽子を目深に被っている女性と手を繋いでいるXを見つけた。


(X~、お前また・・・。諜報員がここで踊っていたらダメだろ~!!)


「ユリウス、あれは・・・」


 彼女は視線でXのことを彼に伝える。ユリウスは笑みを浮かべて、こう言った。


「問題ないです。相手もアンですから。使用人に手を出したら注意します」


(アン?)


 直ぐにピンと来なくて、小首を傾げるビアンカ。


「魔塔のアンです」


「あ~!ツィアベール公国の時の!!」


「そうです。この城は魔塔の本拠地ですから、アンは定期的に来ています」


「はっ!?今さらっと余計なことを言いましたよね?」


 ユリウスは返事をせず、クスッと笑う。


「あー、もう!機密をあまり私に漏らさないで下さいよ。重い、重すぎる!!聞かなかったことにしますからね」


「どうぞ、お好きなようにして下さい」


 彼はビアンカの手を取り、軽やかなステップで踊り始める。


 幻想的な雰囲気に包まれ、ビアンカはまた昔読んだ絵本の風景を思い返してしまう。


(やっぱり、偶然? いや、ここまで来たら偶然とは言い難い。この後、あの絵本では空で・・・)


 絵本『聖夜の奇跡』は年に一度の聖夜に神様がみんなを楽しませようとして色々な奇跡を披露してくれるという内容だった。


 王都でも聖夜はちょっとした祭りではあるが、大聖堂の前で子供たちが聖劇を披露するのが目玉なくらいで、キラキラとした装飾を施している領都バリードのような豪華さはない。


 何より、この中庭に設置された大きなもみの木はビアンカの度肝を抜いた。


(この大木をどうやって運んで来たんだろう。――――もしや、ユリウスの魔法で!?それなら、納得出来る)


「ビアンカ、気もそぞろですね。実家は楽しめましたか?」


 ユリウスはビアンカの腰を抱いて、ターンをしながら彼女に問う。


「いえ、あっ、そうですね、実家は・・・」


「実家は?」


「あ~、今、分かりました」


「?」


 ユリウスはパチパチパチと綿毛のような睫毛を揺らす。


「え~っと、手厚いもてなしを受けまして・・・、本当に気持ち悪いなと感じたのですが・・・」


「ブッ」


 気持ち悪いというワードを聞いて、ユリウスが噴く。彼は咄嗟に顔を背けたがビアンカは間近でバッチリ見ていた。


「ユリウス、私の実家に手を回していましたね?ここへ帰らせないように」


「ーーーーー」


「いや、おかしいと思ったんですよ。やたらと父上が褒めて来るし、兄上はお菓子を分けてくれたし、母上は物静かで~~~」


 ユリウスは察する。きっと今まで、宰相は口うるさく、ディヴィスはお菓子を分けてくれないケチで、夫人は度を越えたおしゃべりだったのだろうと。


ーーーーダメだ。腹筋が死ぬ。


「もう無理です・・・」


 降参宣言をしたユリウスはビアンカの手を引いて、ダンスの輪から離れた。


♢♢♢♢♢♢♢


ーーーー温室の中に逃げ込んだ二人。


「大丈夫ですか」


 しゃがみ込んで声を殺して笑っているユリウスをビアンカは心配する。


「大声で笑っていいのに・・・」


(別にユリウスが大声で笑っても誰も馬鹿にしないと思うのだが)


 彼は返事の代わりに首を左右に振った。どうしても人前で笑うのは嫌らしい。


「リシュナ領軍の兵士たちが演奏していて驚きました。それに侍女たちも警備の者もみんな楽しそうに踊っているし・・・。聖夜って、こんなに楽しい日だったのですね」


「ーーーーもともと、バリードの祭りだったので・・・」


 ボソボソとユリウスが答える。


「あっ、そうなのですね」


「ダイアに対する感謝から始まった祭りですから」


「あ~、先ほど本人もそんなことを言ってましたね」


 ビアンカは丸まっているユリウスの背を撫でた。


「笑いはおさまりました?」


 彼女の問い掛けに大きく頷いてから、ユリウスは身を起こす。


「格好悪くてすみません」


 ユリウスは立ち上がって、ビアンカにお詫びの言葉を口にする。


「心配しなくても、ユリウスがカッコ悪い時なんてないですよ」


「!」


 ビアンカの無自覚な誉め言葉を受け、ユリウスははにかむ。


(うわ~、可愛い。くぅ~、私の夫は最強だな!!!)


「毎日、この顔を間近で見られるなんて幸せ・・・」


「えっ?」


(マズい!本音が口に出てしまった!!)


「あ~、独り言なのでお気になさらず!え~っと、笑いが収まったのなら、外に出ますか~?」


 ビアンカは誤魔化すようにユリウスの袖を引いて外へ誘う。


「そうですね」


 ユリウスはニッコリと微笑んで、ビアンカと手を繋いだ。



最後まで読んで下さりありがとうございます。

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