表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)  作者: 風野うた
愛を育もう結婚6日目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/94

68 レッツ・デート 1

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 オークの街路樹、オレンジ色の屋根、はちみつ色の壁、ライトグレイの石畳。武骨な辺境伯城とは違い、バリードの街の景色は穏やかで優しい雰囲気を持つ。


(初日に辺境伯城へ馬車で向かう際、同じ風景を見ているはずなのだが・・・。こんなに可愛らしい街だったとは!!それにゴミも落ちていないし、道の脇にある花壇もよく手入れされていて、治安の良さを感じる)


 馬車の窓に張り付いて外を眺めているビアンカ。これから二人はバリードの商業地区で街歩きデートをする予定なのだ。


 ビアンカはユリウスのリクエストでドレスを着用。


 ハイネックで特に大きな装飾もないシンプルなデザインのドレスだが、ジャガード生地に繊細な模様のレースが重ねられているため、一目で上質なものだと分かる。色はブルーグレー色。ビアンカの黒髪との相性も良い。


 また今回もコルセットは無し、スカート部分は足を高く蹴り上げても下着を晒さない特殊構造になっているため、激しい動きをしても大丈夫。というわけで、ビアンカは太ももにナイフを二本、胸元にワイヤーフック、袖に毒針を数本仕込んだ。抜け目のない彼女を見て、ユリウスがクスクスと笑ったのは言うまでもない。

 

「ビアンカ、ここで馬車を下りましょう」


「ここですか・・・。まだ商業区に入っていないですよね?」


 ビアンカは窓の外を指差す。街路樹として植えられているオークの葉が風で揺れていた。

 

「あなたの好きそうなお店があるので・・・」


「?」


 良く分からないまま、ビアンカはユリウスのエスコートで木立の間にある芝生の上へ降りる。前を向くと少し先に白木のフェンスと金づちの形をした鉄看板が見えた。


(あれは・・・、金づち?もしかして・・・)


「鍛冶屋?」


「正解です。リシュナ領軍の武器を作っている工房です」


「今日はデートって・・・」


「何か問題でも?」


(いや、デートで鍛冶屋は無い!!それくらい私でも分かる・・・)


 ユリウスはドン引きしたビアンカにジト目で見られても怯むことなく、彼女を店まで引っ張って行った。


「いらっしゃいませ~!!」


「うおおおおっ、閣下がご来店!?本日はどうされたのですか!!」


 入り口付近に居た店員を押しのけて、奥から店主らしき大男が飛び出してくる。


(そうだよな~。辺境伯が突然、鍛冶屋に現れたら驚くよなぁ・・・)


「妻の武器を急ぎで頼みたい」


「は、はい、かしこまりました!!!」


 店主らしき人物はユリウスにペコリと頭を下げた。ビアンカはユリウスの袖をチョンチョンと引いてから、彼の耳元へ囁く。


「大斧は王都から持ってくるのでは?」


 この質問にユリウスは首を振って否定した。


「この店の武器の方が良いと思います」


「えーっと、それは・・・、ここの武器がユリウスのおススメということ?」


「そうです。ここには・・・」


 ユリウスは言葉を止めて、店主の顔を見る。続きは店主が答えた。


「ここでしか扱えない金属を使っています」


「――――えっ?」


 驚くビアンカへ、ユリウスが補足を入れる。


「軽くて丈夫な金属です。魔法付与も可能です」


「魔法付与!?」


「はい。魔法で効果を付けられます」


(武器に効果!?――――初めて聞いた!!!)


「あのう・・・、閣下。奥様へご挨拶をしても?」


 巨体でモジモジしながら聞いて来る店主にユリウスは軽く頷く。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。タタラ工房の店主ガストンです。奥様、本日はこんなむさ苦しい場所まで足を運んで下さり、ありがとうございます!!」


「初めまして、ガストン殿。ビアンカです。奥様と呼ばれるのは、むず痒いので・・・。出来れば名前で呼んで欲しい」


「承知いたしました。では、私のこともガストンと気軽にお呼び下さい。今後とも、どうぞよろしくお願いします」


「ああ、よろしく、ガストン」


 挨拶を終えるとガストンは武器の見本を数点、奥から持って来た。ユリウスに促されてビアンカは片手剣を手に取ってみる。


「これは・・・、凄い!!」


(重さが絶妙だな。重過ぎないし、軽過ぎない)


 シュッと横へ一振りしてみると、何かが手元から刃の先端へ移動していくような感じがした。


(んんん?これはどういう仕組みなのだろう。剣を振るスピードが上がったような気が・・・)


「ユリウス、これ・・・」


「振り易かったですか?」


「はい、動かしたい方向へ重心が移動しているような気がして・・・」


「流石ですね。あなたの言う通り、その剣には魔法で重心が最適な方向へ移動する効果が付いています」


「そ、そんなことが出来るのですか!?」


「はい、可能です。それよりも、この二日間、あなたはリシュナ領軍の兵士と対戦してどうでしたか。兵士たちのことを弱いと感じませんでしたか?」


「ええ、戦闘能力も防御能力も低いと感じました。ここは戦いの多い地域なのに何故なのだろうと疑問に思って・・・」


「その答えは魔法付与です。リシュナ領軍の武器や防具には必要な効果を付与し強化しています」


(武器と防具を強化しているだとー!?)


「それは初めて聞きました」


「ええ、国防の機密事項です」


「あ、わわわっ!!!ダメダメ!!ここで言ったらダメ!!」


 ビアンカは慌てて彼の口を押える。しかし、彼はビアンカの手を引き下げてこう言った。


「心配いりません。この工房で作成しているので彼らは知っています」


「あっ、なるほど・・・」


「それと魔法で効果を付与出来るのは今現在、私とモルテだけです」


「二人だけ!?」


「はい」


(モルテって、あの魔法使いだよな)


 ビアンカは白い御髭がトレードマークの魔法使い、モルテを思い浮かべる。同時に今朝、話す機会を逃してしまったということも思い出した。


「ユリウス、モルテは・・・」


「ビアンカ、彼のことは後にしましょう。先に大斧の注文を」


「はい」


 ビアンカは何となく話をはぐらかされたような気がしたが、大斧を早めに手に入れたいという気持ちの方が勝る。


「ガストン、柄の長さなのだが・・・」


――――ビアンカは新しい大斧を二本と、短剣を二本注文した。すべてが仕上がるのは二週間後とのこと。但し、大斧の一本だけは明後日までに必ず仕上げるとガストンが約束してくれた。


「では、完成したらお城へお届けします」


「ああ、よろしく頼む」


 注文を終え、二人は店を後にする。


――――――――


 タタラ工房で終始、ユリウスは堂々としていた。


 ビアンカは彼の仕事と私生活の切り替えの早さに感心してしまう。何故かというと、馬車が出発した途端、ユリウスはビアンカの肩に頭を乗せて抱きつき、離れようとしないからだ


(この人が『ん~、眠い』とか『お腹空いた~』とか甘えた声で言う姿を、世間の人は誰も想像していないだろうな・・・)


「で、どうしたのですか?」


 ビッタリとくっついているユリウスへビアンカは問う。


「何も・・・」


「はぁ、そうですか」


 ビアンカが呆れた声で言い捨てると、ユリウスがチュッと頬へキスをして来た。


「ユリウス、デート!!デートですよ。しっかりして下さい!!」


「デートなのだから、甘くて良いのでは?」


「・・・・・」


 正論を投げつけられ、ビアンカは口を閉じる。


 チュッ、チュッとユリウスは彼女の鼻の先やおでこへキスを落とす。


(まさか移動中、ずっとキスし続ける気なのか~~~)


 ユリウスは手を伸ばして窓のカーテンを閉めた。


(はっ!?)


 驚いたビアンカは透かさず、手を伸ばしてカーテンを開く。


「なっ、何をするつもり!?」


 上ずった声で彼に聞くと破壊力のある笑みを返された。


(怖っ!!絶対ろくでもないことを考えていたに違いない!くぅ~~、綺麗な顔で誤魔化そうとしやがって!!)


「ビアンカ」


「はい?」


「心を育むプログラムを開始しましょう」


「は?」


 突然、プログラムと言われ、ビアンカは唖然とする。


(やっぱり何かしらの課題をしなければならないということか?)


「まずは互いの好きなところを言い合うというのはどうですか?」


「す、好きなところ?」


(言葉で伝えるというのは、身体の触れ合いよりも難易度が高いような気がするぞ。恐ろしいな、心を育むプログラム・・・)


「どちらから言いますか?」


「え、じゃあ、後が良いです」と、ビアンカは即答した。


「分かりました。では、私から」


 彼はビアンカの瞳を覗き込む。


「宝石のように美しいあなたの瞳が好きです」


 彼はビアンカの瞼へチュッとキスをする。


(え~、好きなところを言った後にキス!?このお題はそういう流れでいかないといけないのか???はぁ~、気まずい、恥ずかしい・・・、はぁ~~~)


 ビアンカは彼の方を見る。パチッと目が合った。


(う~ん、最初は何にしよう・・・)


 少し考えてから口を開く。


「ユリウスの睫毛は羽毛のようにフワフワとしていて可愛いので好きです」


 ビアンカは彼の目元へ唇を寄せた。緊張はしたが、先日のように手が震えることは無かった。


 続けて、二人は二つ目の好きなところを言い合う。


「身分などに振り回されず相手を見て判断するところが好きです」


 ユリウスは彼女の手を取って、その指先へ口づけを落とす。ビアンカは胸がきゅんとした。


(内面を褒めてくれるなんて・・・。気付いてくれていたのだと思うと案外、嬉しいものだな)


「ユリウス、私のためにこっそりと準備してくれるところが好きです」


「?」


「私が嫁いでくる前に辺境伯城の皆さんと色々用意してくれたのでしょう?」


 ビアンカが理由を口にするとユリウスは右手で口元を覆う。


「お陰様でここへ来てから毎日快適に過ごすことが出来ています。このドレスもとても着心地が良いです。ありがとう」


「――――はい」


 ユリウスは両手で顔を覆う。ビアンカから好きと言われるだけで、こんなに胸が熱くなるなんて想像してなかったのだ。


 照れて無言になってしまう二人。馬車は商業地区へ向かって進んでいく。


★ミニ情報★

タタラ工房 リシュナ領軍の武器を作る鍛冶屋

店主 ガストン


最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


ブックマーク登録もお忘れなく!!


誤字・脱字等ございましたらお知らせください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ