66 心を育もう
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
ガチャ。
ノックもなくドアが開いた。ビアンカは文字から視線を外し、部屋の入口を見る。
「あ、ユリウス!!お帰りなさい」
「――――ただいま・・・」
覇気のない声で答える、ユリウス。
(ん、んんん?調子が悪いのか?)
ビアンカは本をテーブルに置き、彼の元へ駆け寄った。ユリウスはビアンカを抱き寄せて、ボソボソと呟く。
「――――眠い・・・、凄く眠い・・・」
「あ~、徹夜・・・」
状況を察したビアンカはユリウスの手を引いてソファーへ連れて行った。ササッと彼を座らせて、彼女もその隣へ腰掛ける。
「お腹は?」
「空いています。だけど、とにかく眠くて・・・」
「なるほど、空腹だけど眠気が強いということですね」
ビアンカが相槌を打ったところで、ユリウスは燃料が切れたように寝落ちした。――――彼女の膝の上に倒れ込んで・・・。
(はっ!?嘘っ!!もう寝たのか!?いや、それよりも、このパターン・・・。手順を間違えたら危ないのでは?)
ビアンカはユリウスから投げ飛ばされた時のことを思い出す。
あの時、ビアンカは彼のテリトリーで余計な行動をしたことにより、彼の下敷きになって、最後はベッドの外へ飛ばされてしまった。
(下手に動かさない方がいいだろう・・・。だが、コレはどうしたら・・・)
ユリウスは今、ビアンカの生足の上に倒れ込んでいる。要するにバスローブがはだけている状態ということだ。
「――――足を隠すために布を引っ張ったりしたら、蹴られたりするのだろうか?」
幸いユリウスはしっかりと眠っていてピクリとも動かない。ビアンカは取り敢えず、胸元だけは整えた。両足は完全に晒してしまっているが、恥ずかしいと考えだしたら止まらなくなりそうなので、気にしないようにする。
「ユリウスが起きるまではどうしようもない。本の続きでも読むか・・・」
ビアンカはフーッとため息を吐き、再び本を手に取った。
――――――――
一時間半後、ユリウスは突然、身動ぎを始める。
ビアンカは本を置いた。
「ユリウス、ユリウス?」
驚かさないように小さな声で彼を呼ぶ。
(前回のように魔法を食らって気を失うのは嫌だ。ここは慎重に・・・)
「もう少し寝ますか?それなら、ベッドへ移動した方が良いですよ」
優しく語り掛ける。すると、ユリウスは首を左右に振って・・・。
(ムズムズする!!くすぐったい~~~~!!)
「ん、んん~~~~っ!!!」
ビアンカは足の上で頭をグリグリと動かされて、つい声を出してしまう。
ユリウスはパッと彼女の方を見た。
(うわっ!!目が開いている!!これ、あの時と同じじゃないか!?)
「えー!?また気絶コースなの!???いやだ~!!」
以前、クローゼットルームで突然、目を開けたユリウスと指先が触れた瞬間、視界が暗転したことを思い出し、ビアンカはゾ―ッとする。
「――――ビアンカ、可愛い・・・」
「いやいやいや、可愛いとかそういう話ではなくて・・・。あのピリッとされて気を失うやつが嫌なの!!寝るなら、寝る!!起きるなら、さっさと起きて!!」
ユリウスはフワッと笑う。破壊力のあるお顔で・・・。
「――――っ!!」
(お、おう!見惚れてしまったじゃないか!!ユリウスの寝起き、色々と危険だぞ!!!)
ビアンカが邪なことを考えている間も、ユリウスはジーッと彼女を見つめていた。そして、少しずつ覚醒し状況が見えて来る・・・。
――――フラフラで部屋に戻り、ビアンカを抱き締めて・・・、ソファーへ座ったのは覚えているが・・・。ああ、寝落ちしたのか・・・。
ユリウスは、はたと気付く。
「何故、バスローブ・・・」
「そ、それは・・・。今日の予定が分からなかったからです」
「――――覚悟を決めたというわけではなかったのですね」
ユリウスはビアンカの膝に頭を乗せたまま、彼女の下腹部付近へ指先を這わせる。その不埒な行動でビアンカは彼の言葉の意味を理解する。
「――――覚悟っ!?ち、違います!!!!」
ビアンカは首をブンブン振って否定した。
(まっ昼間からそんなこと・・・。無理!!!)
「ユリウス、今日の課題は心を育むようなことにしませんか?もうずっと毎日スキンシップに関することばかりじゃないですか?バランスが悪いです!!」
「ああ、確かにそうですね。では、今日は街へ行ってデートをしましょう」
「デート!?ユリウス、あなた忙しいのでは!?」
「徹夜で片付けて来ましたから、多少は大丈夫です。――――あっ、言い忘れていましたが、テオドロスはまだ目覚めていません。もう少し待って下さい」
話しながらユリウスはビアンカの首筋と顎先に触れて来る。
(んん~~~~っ!!もう、くすぐったい!!)
腹が立ったビアンカは同じことを彼にした。
「ブッ、クッ、待って、待って下さい!!ビアンカ!!」
「ほら、ユリウスもこうされたら、くすぐったいでしょう?もう、無闇に肌をなぞらないで下さい。――――それで、テオドロスって本当に目を覚ますのですか?」
テオドロス再起不能説を疑っているビアンカはユリウスへ問う。
「ええ、命に別状はありません。近々目覚めると思います。もう少し殴るのは我慢していてください」
ユリウスはクスッと笑う。
「はい、力を蓄えておきます」
ビアンカは力こぶを作って見せた。
「ビアンカ、デートは?」
「行きます」
先ほど、ポリナン公国の街並みを楽しそうに歩く自分たちを妄想したばかりだったので、ビアンカは即答した。
「では、昼食を食べた後に出掛けましょう」
ユリウスはビアンカの太ももにチュッとキスをして、起き上がった。
「!!!!!」
バッと足を隠すビアンカ。
「綺麗な足を枕にしたので、いい夢を見られました」と、ユリウスは微笑む。
ビアンカは頬を膨らまして、無言でユリウスの頬を抓った。
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