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大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)  作者: 風野うた
愛を育もう結婚6日目

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65 お世話になりました

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 ビアンカは指揮官たちに新しい班分けと訓練メニューの組み直しを命じ、修練場を後にした。


(魔法使いモルテとも話をしてみたかったのだが・・・。あいつら(指揮官たち)と打ち合わせをしている間に彼らは居なくなっていた~!地下牢に罪人が沢山いるから、魔法使い達は忙しいのだろうな・・・)


 ちょっぴり残念な気分で私室へ向かう。すると、前方に見知った顔を見つけた。


「おはようございます。お二人でお散歩ですか?」


 中庭で花を眺めている二人へ、ビアンカは渡り廊下から声を掛けた。


「おっ!?お、おはようございます!!!――――ビアンカ様、そ、その服装・・・。――――朝の訓練ですか!?軍服姿、とても凛々しくてカッコいいですわ!!はぁ~~~~ぁ、本当に素敵~!!」


「はい、今し方、朝訓練を終えました。お褒めの言葉をありがとうございます」


 ビアンカを見て興奮しているのは、ポリナン公国公子妃のエスペランサだ。公子は一人で盛り上がっている妃の隣で苦笑を浮かべている。


 しかし、世間一般ではビアンカの姿を見て、驚かない者の方が少ない。


 何故なら、ビアンカは凛とした立ち姿と清潔感のある真っ直ぐでサラサラな黒髪、透明感のある美しい紫の瞳で人々の目を強烈に惹きつけるからだ。


 なのに、当の本人ビアンカは、自分自身の魅力には無頓着のため、人々の熱い視線を受けても、その理由が分からないのである。


(まぁ、褒めてくれるのは嬉しいことだが、少々大げさな気も・・・。――――ところで、安易に話し掛けてしまったがこの後、何を話したらいいのだろう。朝訓練の内容は機密だから言えないし・・・)


 話題が思いつかなくて焦り出したビアンカへ公子が話し掛けた。


「すみません、辺境伯夫人、実は急遽帰国することになりまして、辺境伯や王太子殿下にご挨拶をしようとこちらへ足を運びました。ところが、執事殿からお二人ともお留守にされていると伺いまして・・・。ここで妻と『どうしようか?』と話していたところでした」


「――――そうでしたか。宜しければ、私から二人に伝えておきましょうか?」


「はい、そうしていただけると助かります。この二週間、こちらの離宮でとても快適に過ごさせていただきました。今度は是非、お二人で私たちの国へ遊びにいらして下さい。妻が少々、――――いえ、かなり騒いでしまうかもしれませんが・・・・フフフフッ」


 話している途中で、公子は笑い出してしまう。


(公子は本当に優しいお方だな・・・。公子妃のが暴走しても笑顔で見守るのだから。それにしても、二週間!?この二人はそんなに長く滞在していたのか!!私はまだ六日目なのに・・・)


「はい、機会がありましたら、是非・・・」


(返事は濁しておこう。ユリウスへの確認なしに約束は出来ないから)


「きゃ~~~!!嘘!本当に!?ビアンカ様、絶対!絶対に我が国へ遊びに来て下さいませ!!お待ちしております!!」


 公子妃は嬉しさを表現するように、その場でピョンピョン飛び跳ねた。ビアンカは公子と一緒につい微笑んでしまう。


――――ポリナン公国はこの大陸の南西にある国でネーゼ王国と同じくらいの大きさだ。温暖な気候で長い海岸線には美しいビーチが続いており、それを上手くリゾート化した結果、大陸の人々が多く訪れるようになったのだという。また、カジノという享楽施設には、世界中からギャンブラーが集まってくるらしい。


 近年は軍部が力を持ち国内情勢が不安定になっていたが、黒幕も逮捕されたので少しずつ落ち着きを取り戻すだろう。


 ビアンカはユリウスとバカンスを楽しむ様子を想像してみた。


(ユリウスとビーチから海に落ちていく夕陽を眺めたり、街を歩いて郷土料理を楽しんだり・・・。うん、いいかも知れない)


「私もその日が訪れること来るのを楽しみにしておきます。では、公子ご夫妻、くれぐれもお気を付けてお帰り下さい」


「「はい、ありがとうございます」」


 公子夫妻二人は声を揃えてビアンカへお礼を告げた後、離宮の方へ向かって歩き出す。そして、コルネリアは何度も振り返ってはビアンカへ手を振ってくる。こちらもその都度、手を振り返す。


(あ~、今、手を繋いだ。あの二人は本当に仲がいいのだな・・・)


 仲良く手を繋いで歩いて行く二人の姿が見えなくなるまで、ビアンカはしっかりと見送った。


(王族は政略結婚が一般的だ。だから、その関係は殺伐としたものなのかと思いきや国王夫妻も、公子夫妻も仲睦まじい。やはり百聞は一見に如かず。見て確かめないと分からないということだ。仮面夫婦だったマクシムだけは別件だが・・・。――――それはそうと、主神ダイアは今後、妃との関係を改善しないのだろうか。あの方は父上と似ているからか、どうしても気になってしまう・・・)


 彼女の脳裏に独りぼっちで暮らしている主神ダイアの姿が浮かんでくる。


(神と人間は違うとはいえ、あの時が止まったような神殿にひとりでいるのは余りにも寂しい気がする。せめて、人々と交流でもすれば、少しは気分も変わるのではないだろうか。ただ、人々に罵られた昔の傷がまだ癒えていないと言われたら・・・)


「(主神ダイアとは)もう少し対話が必要だな・・・」


 ボソッと呟き、ビアンカは私室への近道、隠し階段へと向かった。


―――――


 部屋に戻ったビアンカは部屋のシャワーで汗を流し、バスローブを羽織って寝室のソファーへ腰を下ろす。


「――――ユリウス、遅いな・・・」


 髪をタオルで拭きながら、視線を窓の外に向ける。お天気は快晴。雲一つない。


(今日のスケジュールもユリウスが戻ってこないと分からない。というか、私はまだ客人のような状態だから、無闇に動けない・・・)


 時計を確認すると午前十時十分だった。


「何を着たらいいのやら・・・」


 ビアンカはシャツとスラックスか、ドレスを着るかで悩む。こんな時に限ってアンナは現れない。


「まぁ、いい。ユリウスが返ってくるまでこの姿でのんびりしておこう・・・」


 バスローブ姿で過ごすと決めたビアンカはユリウスの書斎からターキッシュ帝国の歴史書を取ってくると早速、ページを捲り始めた。



最後まで読んで下さりありがとうございます。

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