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大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)  作者: 風野うた
課題が厳しい結婚5日目

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60 大斧とビアンカ

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 ビアンカが大斧を相棒にしたきっかけは四年前のポリナン公国との小競り合いだ。


――――当時、ポリナン公国は宣戦布告もせず、密かに国境を越えて、この国へ進軍した。

 

 国境を越えて進軍してきたポリナン公国軍を追い出すために国軍は二か月間に渡り、険しい山岳地帯での不毛な戦いを強いられたのである。


 ある日、国軍への補給部隊が山中で迷子になってしまった。そのため、ビアンカたちは武器が不足するという危機に陥ってしまう。当初は相手から武器を奪おうかという意見も出た。しかし、それは試すことなく無理と判断される。何故なら、ポリナン公国軍は敵を見つけると毎回、離れたところから弓を射ってくるからだ。


 結局、上官は『補給部隊が来るまでは現場調達で何とかしろ!』という酷い命令を兵士たちに下したのである。


――――という流れで、ビアンカはその辺にあった木こりの斧を拝借した。


 手に取った木こりの斧は剣より柄が長く、逆に刃渡りは短かった。元々、薪を割るための道具なので、そこは文句を言っても仕方がない。だが、実際に戦闘で使ってみると振り回した時に生まれる遠心力の効果に驚いた。ぶんまわしている斧に当たった人間は簡単に宙を舞うのである。また斧は剣と比べるとかなり重さがあるため、上から真っ直ぐ落とすだけで固いものも気持ちよく切断出来た。それに柄を横にして盾替わりにすれば、相手の攻撃もかなり防げるのだ。


 ビアンカはこの斧という武器の使い勝手の良さに感動した。この経験で斧という選択肢を知ったビアンカは王都に帰って、更に魅力的な大斧という武器に出会うこととなる。



「それにしても・・・」


 ビアンカは湯船に浸かって考え事をしながら夜空を眺めている。今宵も辺境伯領の空は澄んでいて、数多の星が瞬く。――――そんな美しい星を愛でながらビアンカはボヤいた。


「――――暴れすぎだろ、ユリウス・・・、はぁ~~~~」


 その理由は言うまでもなく、ユリウスがテオドロスに激怒して魔力を暴走させた結果、彼女の大斧まで壊れてしまったからである。がれきの下から見つかった大斧は見るも無残な状態だった。長い柄はポキッと折れていて、刃もボロボロに・・・。


(あんなにボロボロになるなんて・・・。で、一緒にブンブン飛ばされていたテオドロスは生きているのか??)


 先ほど、そのバラバラになった大斧をXがビアンカのところへ持って来た。その時、彼はいつもとは違って、とても神妙な顔をしていたのである。


(あれは一昨日、私の身に何があったのかをユリウスから聞いたのだろうな。だとしても、あいつが軽口を叩かないのは逆に怖いぞ・・・)


 ビアンカはXにこれだけ酷く壊れていたら修理は難しいだろうから、新品を取り寄せて欲しいとリクエストした。


(明日には新しい大斧が届くだろう。それまではリシュナ領軍の武器を借りるとするか・・・。というか、風呂から上がったら寝るだけだ。戦う予定とかもないから、何の問題もないはず・・・)


 ガチャ、パタン。ドアを開け閉めする音がした。


「――――ユリウス?」


 振り返りながら、ビアンカは湯気の向こうへ問いかける。


「はい、遅くなってすみません」


 ユリウスは仕事の報告でマクシムのところへ行くと話していた。最初はビアンカも一緒に行くつもりだったのだが『別に来なくていいですよ~』と言われたので無理にはついて行かず、先に入浴していたのである。


(恐らく機密に関わる話でもしていたのだろう。――――それなら、無駄に首を突っ込まない方がいい・・・、絶対)


「マクシムとの話は終わったのですか?」


「ええ、終わりました。これで今日の仕事は終わりです」


「それはお疲れさまでした。ユリウス、あれを見て下さい!ほら、今夜も星が綺麗ですよ~」


 ビアンカはお湯に浸かったまま、窓の外を指差す。


「ああ、少し待って下さい。先に身体を洗って来るので・・・」


「はい分かりました」


 数分後、ユリウスは身体を洗い終えて戻って来た。


 この浴室は大きな浴槽の他、左の壁際に五つのシャワーブースがある。多分、十人くらいは同時に入浴出来るのではないだろうか。それを毎晩二人で使っているのだと思うと、とても贅沢をしている気分になってしまう。


「お待たせしました。――――ああ、本当に今夜も雲一つないですね。月も真正面に上がっていて、美しい・・・」


「はい。この眺めは最高です!!」


「ええ」


 二人は並んでお湯に浸かり、夜空を眺める。新たなお湯がトボトボトポと浴槽に流れ込んで来る音、崖の下の川がゴ~ッと流れていく音、そして、たまに天井からピチョンと水滴が落ちてくる音。様々な水の音が奏でる音楽は怒涛の日々で積み上がった二人の疲れを癒してくれる。


(――――とても穏やかな時間だ・・・)


「課題・・・」


 いい気分で外を眺めていると横でユリウスが呟いた。


(ううううっ、聞こえなかったことにしたい・・・。今日はあと何時間だ?まだ五分の一しか達成して無い・・・、くううう)


 ビアンカは早朝にユリウスが出した課題をまだ終えていない。一回目もユリウスが誘導してくれて、何とか恥ずかしい命令を口に出すことが出来た。


(ん??もしかして、ユリウスは私が言い易いように気を回してくれたのか!?それなら、ガッツリ乗っておいた方が良いかも知れないな)


「キ、キスして、――――ユリウス」


 ボソボソと声に出した後、隣に居るユリウスの方を向く。


「――――はい」


 彼はビアンカの唇にチュッと軽くキスをした。


(おおおおっ!!これで二回目!!良し、あと三回だ!!どうしよう、恥ずかしいけど、今のうちに何回か言ってみた方がいいのか???――――モタモタしていたら、今日が終わる・・・。達成できなかったら、いよいよ、ユリウスから恋人になるのを諦められてしまうのでは!?)


「もう一回、キスを・・・」


 ビアンカはやや上目づかいでユリウスにお願いをする。ユリウスはドキッとした。彼女の恥ずかしさで赤くなった頬と潤んだ紫の瞳が恐ろしいくらいの色気を放っていたからだ。


 彼はゴクリとつばを呑む。――――ここは誘惑に負けないよう、一呼吸置いて本能を押さえた方が良さそうだ。


「ユリウス?」


 しかし、彼の決意も虚しく、ビアンカは潤んだ瞳で急かしてくる。慌てたユリウスは彼女の頬へ軽く触れるだけのキスをした。


「頬??」


(え~っと、課題は口づけだったけれども・・・、頬へのキスはカウントされるのか???)


「くちびるじゃない・・・の?」


 ビアンカは疑問を口にしてしまう。しかし、ユリウスには彼女が甘えているようにしか思えなくて・・・。


(えっ、えっ!?何、この雰囲気・・・!!)

最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


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