17ー2 お目覚め
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
「――――ビアンカ、ビアンカ」
(今日は早番だった?いや、次の早番は二日後・・・)
「朝です」
(ん?やっぱり、今日は早番???)
「マリオ・・・、もう少し寝させて・・・」
「マリオって、誰ですか!!」
ユリウスの強い口調でビアンカは一気に覚醒する。瞼をパチッと開いたら、至近距離からグレーの瞳がこちらを見ていた。
――――バチッと視線が合う。
「・・・・・」
「――――新婚一日目の朝に、他の男の名を聞くとは思いませんでした」
拗ねたような口ぶりだった。
(な、なんて、あざとい顔!!カッコいい、美しいに加えて、可愛い顔まで出来るのか!?ズルい・・・)
ビアンカは胸が軽くキュンとしたことは隠して、言い訳を始める。
「マリオは私の部下です。男と言えば男ですが、そういう対象ではありません」
「――――では、私がビアンカの隣に寝ていて他の女の名前を口にしたら、どういう気分ですか?」
(ユリウスが私の隣で???)
ビアンカは想像してみた。隣にユリウスが寝そべっていて『アリア・・・、もう少し眠らせて・・・』と甘ったるいセリフを吐いているシーンを・・・。
「ギャー!!甘い!!甘すぎる」
妄想が膨らみ過ぎて耳まで真っ赤になったビアンカは照れ隠しに掛け布団をギューッと抱き締めた。
「あっ!!」
「あーーーー!!」
ユリウスとビアンカの声が重なった。ビアンカが掛け布団を抱き込んだ結果、彼女の身体が露わになってしまったのである。
「うわっ、お目汚しを!!」
ビアンカは慌てて、掛け布団の中に潜り込む。ユリウスはクルっと後ろを向いて、肩を揺らす。『お目汚し』という言葉がツボに入ったようだ。
「ビ、ビアンカ・・・。何故、何も着ていないのです?」
ユリウスの声は震えていた。若干、笑いが含まれているのは気のせいではないだろう。
「寝間着は普段から着ていません。通常運転です」
彼女はキッパリと答える。これは真実だ。急な呼び出しがあった時、すぐに軍服を身に纏えるからである。
「それは・・・・、私の目には毒です。ビアンカ、毎晩、眠れなくなりますよ」
「ユリウス、鍛錬をすれば、寝つきは良くなります。何なら毎日一緒にしますか?」
「フフフフッ、そうですね。一緒にしましょう」
チュッ。
「わわわっ!」
ビアンカは不意打ちでくちびるを奪われ狼狽える。彼女は自分がユリウスを誘惑したなどとは微塵も思っていない。
「恋人たちは毎日沢山のキスをします。早く慣れて下さい。――――それから、もうすぐ十時になります。そろそろ、朝食が運ばれて来る頃でしょう」
「十時!!こんな時間まで寝ていたのは、いつ以来・・・」
「城の者たちは私たちが甘い時間を過ごしていると思っています。だから、ゆっくり寝ていたことは気にしなくても大丈夫です」
(甘い時間・・・。確かにユリウスは私に甘い。しかし、そういう意味ではなく、この場合の甘い時間とは秘め事のことだろう。――――ということは、いつまでも起きて来なかったら、そういうことをしていると思われているということか!?うわ~っ、滅茶苦茶、恥ずかしいじゃないか!!)
「ダメです!!ユリウス、明日から私を五時に起こして下さい」
「五時!?」
「はい。夜が明ける前から鍛錬を始めます」
「・・・・・」
――――コンコン。ドアをノックする音がした。
「アンナでございます。お食事を運んでまいりました」
(ああ、話をしている間に食事が来てしまった。ベッドの上に真っ裸でいたら誤解されてしまう・・・)
「少し待て」
ユリウスはベッドの天蓋カーテンをサッと引く。これでビアンカの姿(裸)を見られる心配はない。
「入れ」
「はい、失礼いたします」
ワゴンを押して、アンナが部屋の中へ入って来た。ビアンカはカーテンの裏で息を潜める。
「あちらのテーブルへ配膳した方が宜しいでしょうか?それとも、ベッドの上で召し上がられますか?」
「配膳は不要だ。下がっていい」
「承知いたしました」
アンナはワゴンをサイドチェストの前に置いた。
「では、ごゆっくりお召し上がりくださいませ。失礼いたします」
ユリウスへ一礼して、アンナは部屋を去った。カーテンの内側で息を潜めていたビアンカはフゥ~と息を吐く。
「ビアンカ、もうベッドから降りても大丈夫です。何か羽織りますか?」
「はい、欲しいです」
ユリウスはクローゼットルームへ行って、シルクのガウンを取って来た。そして、それをビアンカの肩へ掛ける。
(サラサラしている!色もアイスブルーで私の好きな色だ。良かった。ピンクとかじゃなくて・・・。私、可愛い色は残念なくらい似合わないからな!だいたい黒髪と紫色の瞳が良くないような気が・・・)
「ビアンカ、パンケーキはお好きですか?」
(うわっ、ビックリした!!あ~、甘い匂い!!)
「パンケーキ!!大好きです。えーっ、これが朝ご飯っ!?」
ユリウスがベッドへ置いた大きなトレーの上には、パンケーキの皿とベーコンと目玉焼きと焼き野菜の皿、サラダボウル、そしてカットフルーツの盛り合わせがのっていた。
「豪華・・・」
「そうですね」
「余り驚かないのですね」
淡々としているユリウスをビアンカは見詰める。視線が合ったユリウスは・・・。
チュッ。ビアンカへ口づけをした。
「うわっ!!ユリウス、目が合う度にキスをするつもりですか?」
「それは良い考えですね」
ニコっと笑う、ユリウス。
(今日も翻弄されるのだろうな・・・。はぁ・・・)
「ところで、あれは何ですか?」
ユリウスは部屋の隅に置かれた薔薇花びらが詰め込まれた籠を指差す。ビアンカはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに籠へ駆け寄って、それを持って来る。
「これは昨夜、このベッドに置かれていた薔薇の花びらです。可愛いハートが描かれていました。きれいでしょ?」
ビアンカは花びらを何枚か指で摘まんでユリウスの前に差し出す。彼はビアンカの指先へ鼻を近づけると・・・。
(そうそう、いい香りなの~。って、えー!!)
両手で彼女の手を握り、指先へ口づけをした。
「いい香りがします。それで何故、籠へ入れたのですか?床へ落としておいて良かったのに」
「そ、それは勿体ないからです!!今夜はこの花びらをお湯に浮かべましょう。バラ風呂で夜空を眺めたら最高ですよ・・・、多分」
「バラ風呂のお誘いですか?楽しみにしておきます。今日も厄介な仕事が待っていて、やる気が出なかったのですが・・・。頑張らないといけないですね」
ユリウスはもう一度、ビアンカの指先へ口づけを落とす。
「うっ、口づけの嵐・・・。慣れなければ・・・。――――それはさておき、厄介な仕事とは?私に手伝えることはありますか」
「――――ええ、お願いしたい仕事があります。食事をしながら、詳しくお話しましょう」
ユリウスはビアンカと一緒にベッドへ戻った。
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