17ー1 薔薇の花びら
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
「今夜、私は隣の書斎で寝ます。ビアンカは主寝室を使って下さい」
そう言うとユリウスはビアンカに三杯目の水を渡す。グラスを受け取ったビアンカは彼に一つお願い事をした。
「ユリウス、浴室の脱衣所に置かれたままになっている私の相棒を・・・」
ドン。
二人の前に大斧が現れた。
(迅速オブ迅速!!まだお願いしますとも言ってない!!)
「配慮が足りませんでした。これで良いですか?」
「――――はい、ありがとうございます」
ビアンカは大斧へ手を伸ばし、柄をギュッと握り込む。やはり、これがあると心が落ち着く。――――自然とビアンカから笑みがこぼれる。
「明日の朝、また会いましょう。この部屋の物は好きに使って下さい」
「はい」
「では、おやすみなさい」
チュッ。
「!!!!」
突然、口づけをしてユリウスはこの場から消えた。
「もう!!ビックリしたー!隣の部屋なら歩いて行けばいいのに!!」
(でも、同室じゃなくて良かった。このまま、朝まで一緒にと言われたらどうしようかと・・・)
ビアンカは姿見に映る自分の姿を見詰める。白いバスローブを羽織っているだけで、この下には何も着ていない。肩口で切り揃えられた黒髪はユリウスが乾かしてくれた。化粧も落としたので、いつもの顔に戻っている。
(うーん、父上似のこの顔、そんなに悪いつくりではないと思うが、美女と言えるほどのものでもない。それに彼は私を抱き上げた時に左胸へ走る古傷も見たはず。――――ユリウスはこんな女の何処がいいのだろう。――――彼は自分が美し過ぎるが故、感性がおかしいのか?まぁ、それなら納得出来るが・・・。うーむ、本当にそうなのか?もしそうなら、私にとって非常に都合の良い展開でしかないのだが・・・。だって、今まであんなに美しい男性と出会ったこともないし、エレガントな魔法使いで、優しくて、辺境伯で、王位継承権持っていて、次男・・・。――――これ絶対に逃したらダメなやつだよな!!――――あ~、明日から恋人の練習をするって、ユリウスは言っていたが一体、何をさせられるのだろう。私、恋愛面はからっきしだからなぁ~、怖いなぁ~)
ビアンカは三杯目の水を一気に飲み干した。
――――――――
「なっ!?なんじゃこりゃ!!」
主寝室へ移動したビアンカはベッドの上に真っ赤な薔薇の花びらでハート形が描かれているのを見て絶句する。
(超絶ラブリー!?!?そうだった!!今夜は私たちの初夜で・・・。――――これは・・・、侍女たちが張り切ってベッドメイキングしてくれたに違いないな。うーん、この美しい花びらはどうしたらいい?――――床に落とすのは忍びない・・・)
ビアンカはもう一度、クローゼットルームへ行き、大きな籠を一つ持って来た。そして、その上にタオルを一枚敷いてから、ベッドの上の花びらをのせていく。
「よし!薔薇の花籠が出来た!!明日、ユリウスに見せてあげよう。で、その後はバラ風呂に使用したら無駄がなくていい。バラ風呂から星空を見るなんて、想像しただけで最高だな・・・」
この城の風呂を気に入ったビアンカはもう明日のことを考えていた。そして、バスローブを脱ぎ捨て、ベッドへ入る。
「おおお!フカフカだ~!!いい夢が見られそう・・だ・・・。――――はぁ~、今日は疲れた・・・。明日も、が・ん・ばろ・・・」
いつもなら、ビアンカは横になって一日の反省や翌日のスケジュールを考えたりする。しかし、今夜の彼女は夢の世界へ一気に落ちて行った。
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