16 助言 下
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
(なっ!?何を・・・)
「ああっ、大丈夫ですか?慌てず、ゆっくり、呼吸を整えて」
ビアンカが突然むせたので、ユリウスは彼女の背中を摩る。
(無許可で風呂へ一緒に入った挙句、裸で運んでおいて・・・、今更?)
「――――それは拒否が可能だと?」
「出来ないかも知れないですね。普通は」
「なら、聞かなくて良くない?」
ビアンカは本人を目の前に愚痴る。
――――ユリウスは先ほどマクシムに呼び止められた時のことを回想した。
―――――――
「ユリウス、ちょっといいか」
大広間の処理を終え、ビアンカの元へ急いで移動しようとしたところで、ユリウスはマクシムに声を掛けられた。
「急いでいますので、失・・・」
「いや、そこは立ち止まるところだろ」
「手短にお願いします」
逃げようとしていることを隠さないユリウスに、マクシムは苦笑いを浮かべる。
「大事なことだ。聞いていけ」
「分かりました。簡潔にお願いします」
「ビアンカの件だ。彼女と結婚して浮かれているのかもしれないが一つ、気を付けて欲しいことがある」
ユリウスはこの話は長くなるだろうなと、心の中でため息を吐く。
「ビアンカはお前が思っている以上に初心だ。彼女は今まで男と付き合ったことがない」
――――そんなことは言われなくても知っていると、ユリウスは心の中でマクシムへ言い返す。
「そうですか」
ユリウスは感情のない相槌を打つ。
「彼女は少女時代から国軍の宿舎で暮らしているが、ピサロ侯爵が密かに彼女専用の護衛を配置している。本人は全く気付いていないようだが」
「なるほど」
ピサロ侯爵どころかデイヴィス(ビアンカの兄)も彼女に色目を使ったやつを潰しているということをユリウスは知っている。
例えば、軍の中でビアンカに好意を持って近づいた奴はある日突然、戦闘の激しい秘境に飛ばされていたし、貴族男性の場合は男爵令嬢を使ってハニートラップを仕掛け、既成事実を作らせるという恐ろしい作戦まで・・・。
女戦士ビアンカの軍人としての功績は華々しい。だが、それ以前に彼女は名門侯爵家の大切なお姫様なのだ。
「ここからが大切な話だ。ユリウス、事を早く進めようとするな。ビアンカは純粋だ。きちんと心を通わせてからにしろ」
「無体を強いるなということでしょうか」
「そうだ。これからの人生を共に歩んでいくのなら手を抜かず、心をしっかり掴め」
マクシムは真剣な眼差しでユリウスを見詰めた。部下であり、幼馴染でもあり、親友でもあるビアンカに悲しい思いをさせたくなかったからである。
「妻の心をしっかり掴めと兄さんに言われるのは非常に複雑な気分です」
ユリウスはマクシムにボディーブローを入れた。
目下、王太子と王太子妃の関係は最悪な冷戦状態を迎えている。二人の諍いに多くの者が入り込み、状況はかなり悪化していた。
「その件に関しては言い返す言葉もない」
「兄さん、私の気が変わらないうちに早く結論を出して下さい。このままでは国内外へ被害が広がります」
「――――分かった」
――――――――
――――ユリウスは口を尖らせているビアンカを可愛いと思った。
確かにビアンカは少し触れただけで奇声を上げるし、顔も赤くする。この初心な反応は彼女が恋愛に疎いからだろう。このまま初夜を強いれば、彼女の心を傷つけてしまいそうだし、最悪の場合、嫌われてしまうかも知れない。
マクシムの助言に従うのは癪だがここは一旦、仕切り直した方がいいだろう。
「一週間、練習しましょうか?」
「練習?」
「はい。ビアンカと私が恋人になる練習を」
(恋人って・・・。既に夫婦なのに?)
「ビアンカは恋愛経験がないのでしょう?だから、恋人たちがどういうことをしているのか、私が一週間で教えます」
ビアンカは口を開けてポカーンとしてしまう。
(うわ~ぁ!ユリウスに私が二十一年間、恋人なしって絶対バレてる。私より四つも年下なのに全てを察して・・・。もう、ヤダ!!)
「練習など必要ないと言うのなら、今から手加減なしで抱きますけど、どうします?」
(破壊力がヤバ!!手加減なしで抱くって言った!?美少年が真顔でそんな発言をしていいの!?そりゃあ、猶予が貰えるなら是非いただきたい!!色んなことがあったから一度、心の中を整理したい)
「します、します!!練習します!!」
返事したところで、ビアンカはふと気付く。
「教えるということは・・・。ユリウス、恋愛経験が豊富なのですか?」
「――――それは国家機密です」
ニヒルな笑みを浮かべるユリウスはムカつくほどカッコ良かった。
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