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大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました)  作者: 風野うた
いきなり挙式!?結婚1日目

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15 助言 上

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!



 浴槽に沈んだまま、ビアンカはユリウスのことを考える。


(ユリウスと過去に会ったことが・・・?うーん、全く覚えがない。――――あの美しい顔を見て忘れるだろうか。いや、それは無いだろ。市井に現れただけで騒ぎを起こしそうな顔だぞ。ということは、やはり今日初めて会ったということか。結婚したかったとか好意を持っていたという話は、私を揶揄うつもりだったのかも知れない。そもそもヴィロラーナ公爵家とは・・・)


 ザバッ!


 ユリウスはなかなか水中から上がって来ないビアンカの腕を掴んで、湯の中から引き揚げた。


 今、二人は真っ暗な浴室で浴槽の中に立っている。幸いなことに照明を落としているため、真っ裸を堂々と晒すような事態にはなっていない。ただ、ビアンカはユリウスの腕を振り解き、彼に背を向けた。――――見えていないとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしいのである。


「ビアンカ、暗闇で湯の中に潜るのは危険ですから止めて下さい」


「・・・・・」


 ユリウスはビアンカへ注意を促した。しかし、彼女は斜め上な受け取り方をしてしまう。


(『危険です』と注意をされるのは久しぶりだな・・・。まぁ、真冬に川を渡れと言われた時に比べたら、ぬるいお湯に潜るくらいたいしたことじゃないと思うぞ。ユリウスは過保護だな。――――危険と言えば、冬場の山岳行軍訓練だろう。あれは本当に辛い。何日も携帯食しか食べられないし当然、風呂も無いから身体が冷えきってしまう。毎年、凍死する者が出ていることだし、もう少し防寒対策を考えた方が良いと思うのだが。――――そう言えば、私がリシュナ領へ転任したことで指揮官のポストが一つ空くことになる。恐らく次の指揮官へ任命されるのはマリオだろう。そういえば、あいつに嘘を吐いたのだった。夜が明けて私が本当に結婚したことを知ったら、あいつ滅茶苦茶、驚くだろうなぁ~)


「ビアンカ、もしかして具合が悪いのですか?――――そろそろ上がりましょう。私が来る前から湯に浸かっていたのでしょう?」


 ユリウスは再び、ビアンカの腕を掴む。


「!?」


 ビアンカはショックを受ける。いつもなら急に腕を掴まれたら、相手が誰だろうと身体を翻して投げ飛ばしているのだが、彼女はユリウスを投げることが出来なかった。


(ユリウスの顔に騙されたらダメだ。こいつは見た目通りの優男じゃないぞ!こんなに力一杯引いても、微動だにしないのだから!!)


 ザバッ!


 ユリウスは突然、ビアンカを片腕で抱き上げる。


「ちょっと!!何を!!」


「ビアンカ、ボーっとし過ぎです。湯あたりかも知れません」


(ちょっと・・・、いや、かなり肌が触れ合っていますけど・・・。そこは気にならないのか!?)


「寝室へ行きましょう」


「し、寝室!?ちょっ、ちょっと待って!!」


 ビアンカの叫びは浴室に虚しく響き渡った。


―――――


 迷いのない男は花嫁を抱きかかえたまま、転移魔法で寝室へ。


――――結婚式をした男女はその日の夜に初夜を迎える。これは世間の常識だ。だから、ユリウスの行動をおかしいと咎めるようなものは先ずいないだろう。しかし、この二人には事情がある。一人は好きな女と今日、結婚式した男。そして、もう一人は仕事だと思ってここへ来たら知らない男と結婚させられた女。


 当然、二人の間には温度差があった。


(最悪。結局、明るい場所で身体を晒す羽目に・・・。しかも、相手は今日あったばかりの男。しかも、彼は心も身体も強くて太刀打ち出来そうにない・・・)


 彼の腕の中でビアンカは諦めの境地に達してしまう。左胸の傷を隠す気力も何処かへ飛んで行ってしまった。


――――ユリウスは二人の寝室の隣にあるクローゼットルームへ彼女を下ろすと、棚から真っ白なバスローブを取り出し、ビアンカへ羽織らせる。


「風邪を引かないよう髪を乾かします。そこへ掛けて下さい」


 彼はドレッサーの前にある椅子を指差した。ビアンカは言われた通り、椅子へ腰掛ける。


 ブワッ。――――ビアンカの黒髪を温かな風が撫でていく。


「終わりました」


「えっ、もう?」


 ビアンカは自分の髪を触って確認した。


(――――この一瞬でサラサラになっている。凄い!)


「乾燥魔法?」


「――――風魔法です」


 ふと見ると、いつの間にかユリウスは彼女と同じバスローブを羽織っていた。――――お揃いのバスローブは吸水性のよい薄手のもので、肌触りが良い。


「喉は乾いていませんか?」


「――――少し」


 パチン。


 ユリウスが指を弾くと水の入ったグラスが二つ現れた。彼はグラスを両手でキャッチして、片方をビアンカへ差し出す。


(器用だなぁ~)


「どうぞ」


「ありがとう」


(――――冷たくて美味しい)


 ビアンカは受け取った水を一息に飲み干した。


(長い時間、湯に浸かっていたからか・・・。水分が欠乏していたようだ。ユリウスの指摘通り、私は湯あたり寸前だったのかも知れない)


「もう一杯いかがですか」


 ユリウスはもう片方の手に持っていたグラスを強引にビアンカへ渡す。


「いや、これは(ユリウスの分だろう?)」


 パチン。


「私は無限に出せるので大丈夫です」


 ユリウスの手に水の入った新しいグラスが現れ、ビアンカが飲み干したグラスはどこかへ消えた。


(――――不思議だ・・・。これはどういう仕組みなのだろう。魔法でコップに水を汲む作業をしているということか?それとも、誰かが水をコップに注いでそれを転移させているのか?いや、誰かって誰だ!?――――使用人?お化け?使い魔?それとも妖精????――――あ~、さっぱり分からない)


「では、遠慮なく」


 ビアンカは二杯目の水に口を付ける。


「ビアンカ、今夜、抱いてもいいですか?」


 ゴボッ、ゲホッ・・・。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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