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14 国家機密の謎

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 各国の王族を部屋へ案内したものの、この城に滞在するのは不安だという声が噴出。結局、ほとんどの王族が国王夫妻やピサロ侯爵一家と共に転移魔法陣で王都へ去り、数名だけがこの城に残ることになった。


(王宮もあんな大人数で急に押しかけられてさぞ迷惑だろう。ただ、安全面を考えたら間違いなく、ここより王宮の方がいい)


 今夜、この城に泊まる王族はこの国の王太子マクシム、サルバントーレ王国の王子フォンデ、ポリナン公国のビセンテ公子とその妻エスペランサ、ネーゼ王国の王女コルネリアの五名。――――他、国内の貴族たちは転移魔法陣の使用許可が下りず、そのままここへ留まることになった。


(この状況でここへ残ろうと思った王族メンバーはマクシムを除いて、危機感がない者や変わり者しかいないだろ~な~。ふぅ・・・)


 今、ビアンカはぬるいお湯をたっぷりと入れた浴槽に浸かって疲れを取っている。朝から慣れない服を着せられ、訳の分からない状況に流され続けた。――――それなのに特別任務に関する情報は何も得られていない・・・。


「マクシムのバーカ・・・、本当にムカつく野郎だ!」


 ユリウスがベリータ嬢を床に沈めた後、ビアンカはマクシムへ『王太子妃との間に何かあったのか?』とストレートに聞いた。しかし、彼は彼女の質問には答えず『本日発生した襲撃事件の捜査は打ち切ってくれ』とユリウスへ命じたのである。このやり取りはビアンカを猛烈にイラつかせた。


(お蔵入りにするには目撃者が多過ぎる。それに敵が私を狙う理由くらいは知りたい。――――もしかして、原因を作ったのはあいつ(マクシム)なのではないか?あいつが度々私を王宮に呼び出すから、王太子妃が私達のことを男女の仲だと疑って・・・。――――しかし、国軍のトップが指揮官と頻繁に話をするのは当たり前のことじゃないか。それに変な勘繰りをされないよう常日頃から私とマクシムは一定の距離を保っていた。――――と、考えるとこの嫉妬説は現実的ではないな。――――他の可能性としては、王太子妃を誰かが唆したとか・・・。んっ、ちょっと待てよ!勝手に王太子妃が事件を起こしたような気分になっていたが、ユリウスは大公が首謀者だと言っていたぞ。ならば、王太子妃は今回の事件と無関係なのでは?でも、それなら何故、姿を消・・・)


「ビアンカ、深刻な悩み事ですか?」


 物凄く近くから、ユリウスの声がした。


「ギャアァ――――!!!!」


 ビアンカは大声で叫んだ。しかし、ユリウスはそれをスルーして、淡々と話を続ける。


「私は兄さん(マクシム)に捕まって無駄に長い話を聞かされてしまいました」


(いやいやいやいや・・・・何故、隣にいる!?しかも、普通に話し出したぞ!!えっ、私がおかしいのか?えええっ、そうなのか!?)


 彼女は酷く混乱した。


(どうする!?相棒と服は脱衣所。今、ユリウスと戦ったら絶対に負ける。ここは彼を怒らせないよう上手く立ち回らなければ・・・)


 四六時中、女戦士として生きている彼女は精神的に追いつめられるとつい相手を倒せるかどうかということを考えてしまう。


「――――いつ、ここへ?」


「兄さんのことを罵っていた頃です」


(えー、それって、かなり前じゃないか?ということは、隣でずっと気配を消していたってこと?怖っ!!)


 ビアンカはユリウスに気付かれないようゆっくりと身体を斜めにした。――――左胸に走る傷跡を彼の目に晒したくなかったからである。


「――――全く気付かなかった・・・。それで私達は何故、同じ浴槽に?」


「夫婦だからでは?」


 クールな顔で返してくるユリウス。


(堂々とし過ぎていて、反論しづらい・・・)


 ビアンカは次の言葉が直ぐに出て来ない。


――――黙っているとユリウスが話しかけて来た。


「ビアンカ、あの窓からあなたの大好きな夜空を見てみて下さい。今夜は星が綺麗に見えます」


 ユリウスは浴槽の奥にある窓を指差す。ビアンカはお湯に浸かったまま窓の前へ移動し、夜空へ目を向けた。最初は真っ暗で何も見えなかったが、慣れて来ると無数の星が視界に浮かび上がって来る。


(うわ~、星の数が半端ない!!凄く綺麗だ!!)


「こうするともっと良く見えます」


 パチン!


 ユリウスが指を鳴らすと浴室の明かりが消えた。


――――漆黒の闇に星々が神々しく瞬いている。ビアンカは夜空へ吸い込まれそうな感覚がした。


「ビアンカ、星の輝きに魅せられて遠くへ連れて行かれないように気を付けて」


「はい」


(野営で見た空も美しかったが、この城から見る夜空は格別だなぁ~。それに湯に浸かったまま見られるというのもポイントが高い!)


「毎晩、ここから星を眺めるのも良いですね」


(そう言えば、ユリウスと星空を毎晩一緒に眺めるという約束をしたな。しかし、ここから見るということは、毎晩一緒に風呂へ入ると言うことか?いや、本気か!?)


 ビアンカは今日一日、ユリウスに聞きたくて仕方なかった質問をとうとう口にする。


「ユリウス、この結婚は本当の結婚じゃないですよね?」


(マクシムは辺境伯の指示に従えと言った。だから、ユリウスの答えによって今後、私のすべきことが変わって来る)


 ビアンカは真っ暗闇でユリウスの答えを待つ。


「本当の結婚以外に何があるというのでしょうか?」


「・・・・・」


 一番あり得ない答えが返って来た。ビアンカは絶句する。


(この結婚が嘘ではないというのなら・・・・)


 チュッ。


 混乱しているビアンカの頬へ、ユリウスはキスをした。


「!!!!!」


 チュッ。


 今度は反対の頬に・・・。


「ま、待って!ちょっと頭を整理させて!!」


 慌てふためくビアンカ。


――――この場で百戦錬磨の女戦士ビアンカという肩書は何の意味も無かった。今の彼女はただの二十一歳、恋愛経験ゼロの乙女である。


「整理しても何も変わらないのでは?」


 暗闇からクールな声が聞こえる。


「ユリウス、わざわざ私を妻にしなくても、あなたなら多くの女性が寄って来るでしょう?」


「多くの女性が寄って来ても、浮気をするつもりはありませんので、ご心配なく」


(ご心配なく?いや、私が心配しているのはそういうことではなくて・・・。これって、えーっと、任務?特別任務だよね!?まさか、結婚も任務に含むとか言っちゃうやつ?世の中には政略結婚というものもあるけど)


「単刀直入に言います。私にあなたは勿体ないと思う!」


「いいえ、逆です。あなたは私に勿体ない」


(どうして!?天使のような容姿で、エレガントな魔法使いで、王位継承権まで持っている辺境伯のクセに!!こんな行き遅れの女戦士と比べられるわけないじゃないか!!)


「ビアンカは自己評価が低過ぎます。若くして武勲を立て、ご実家は名門ピサロ侯爵家なのでしょう。ただ、そういう肩書は私にとってどうでもいいことですが・・・」


「どうでもいいなら、何故?」


「それは・・・、国家機密です」


 あと少しというところで、ユリウスは質問を煙に巻く。ビアンカは正攻法で勝てそうにないので、少し意地悪な聞き方をしてみることにした。


「もしかして、私と結婚したかったの?」


「はい」


 ユリウスは即答。


――――はぁ~~~~~。ビアンカは大きなため息を吐いた。怒涛の一日の最後に大きなダメージを食らったからだ。


(試しに言ってみただけなのに・・・。まさか好意を持たれていたとは思わなかった・・・)


「私と結婚して嬉しい?」


「はい!」


(――――ヤバい。そんなに嬉しそうな声で答えないでくれ~。胸がキュンとする・・・)


ブクブク・・・。現実逃避をしたいビアンカはそのまま湯の中へ沈んでいった。


☆ミニ情報☆

浴室には大きな浴槽があります。温泉や銭湯をイメージして下さい。

お昼に侍女が運んで来たバスタブは一人用です。

用途に合わせて使い分けています。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


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