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13 痛い人たち 下

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


 程なく、ユリウスの指示を受けた城の使用人たちは執事を先頭にして会場へ駆けつけ、他国の王族を安全な場所(客室)へと誘導し始めた。


(これで一応の安全は確保された。大広間は破壊されてボロボロになったが、怪我人が出なかったのは幸いだった。それにしても、やはり狙われているのは私なのか。首謀者は王太子妃の父だとユリウスは言うが理由は?そして、王太子妃はなぜ消えた?彼女はマクシムと離婚するつもりなのだろうか?いい加減、この特別任務の内容を教えて欲しいのだが・・・)


「ビアンカ、まだ油断するな!」


 デイヴィスは考え事をしているビアンカに向かって注意を促す。ユリウスはまた別の部下がやって来て、ビアンカから数歩離れたところで今後の対応について話し合っていた。


(兄上、たまには役に立つ。そうだ、まだここは戦場。気を抜いてはいけない)


 ビアンカは深呼吸を一つして大斧を床に立て、仁王立ちで周辺に注意を払い始める。 ピサロ侯爵家の三人(父、兄、母)は国王夫妻と共に王家の護衛に囲まれていた。一方、王太子の傍にはまだおかしな言動をしているベリータが張り付いていたのだが、皆は爆発騒動からの刺客登場で、そのことをすっかり忘れてしまっている。


――――ここでビアンカの耳に女性の呟く声が入って来た。


「――――よりも、わたしが王家の跡継ぎを産みます」


(この声の主は誰だ!?)


 彼女は隣にいるユリウスへ尋ねる。


「ユリウス、何か聞こえましたか?」


「はい、聞こえました。出所はあの女です。ここは私に任せて下さい」


 ユリウスは部下たちに「では計画通りに」と告げると、赤いドレスを着た女の方へ迷いなく歩いて行く。


 赤いドレスの女の名はレイラ。ハノーヴァー伯爵家のご令嬢である。


(ユリウスはレイラ嬢と面識があるのだろうか?)


 レイラはユリウスが近づいて来ると、胸の前で両手を握り締めて嬉しそうな表情を見せた。


(呟いた言葉は気持ち悪かったが、あの様子は・・・。彼女はユリウスのことが好きなのか?それなら、彼女に嫁いで来て貰えば良いじゃないか?ユリウスは女戦士でも気にしないくらいだ。女なんて誰でもいいのだろう。別に私ではなくとも・・・)


 ビアンカは愛らしく笑うレイラを見て、胸が痛む。恋する相手を奪ったような気分になってしまったからである。


 ユリウスはレイラの前に辿り着くと彼女に向かって手を伸ばし・・・。


 バタン。――――ゴツッ。


 大きな音を立てて、ご令嬢が床に倒れた。ユリウスは踵を返し、ビアンカの方へ戻って来る。


(は!?床に転がしたまま!????多分、倒れた時に彼女、頭を打ったよね?えっ、無視??ち、ちょっと、ユリウス!!)


 レイラに一瞥もせず、冷淡な顔でユリウスはこちらへ戻ってくる。ビアンカがレイラを救助しようと一歩踏み出したところで、ユリウスが手のひらをこちらへ向けて、静止を表すジェスチャーをした。


 程なく、使用人たちが何処からか担架を持って走って来て、レイラを乗せて会場から迅速に運び出していく。


「片付けました」


「大胆に片づけたので驚きました」


「レイラ嬢は好みタイプではないので」


(ん?コレは冗談!?笑うところだった??)


 ビアンカは困惑する。ユリウスが無表情で言い放ったため判断が難しかったからだ。と、そこで・・・。


「ビアンカ!助けてくれ!!」


 王太子マクシムが大声でビアンカを呼んだ。どういう経緯があったのかは分からないが、マクシムはベリータ嬢に抱き付かれていた。


(あ、すっかりマクシムのことを忘れていた。ベリータ嬢!?マクシム、いつの間に抱きつかれた???)


「何故、私ではなくビアンカを呼ぶのです?」


 不機嫌な声が隣から聞こえて来る。声の主はユリウスだ。


「マクシムと私が友人だから・・・かな?」


「私の妻なのに気安くされては困ります」


 ユリウスは少し怒っているようだった。


「――――そうですね」


 マクシムのことでユリウスと言い合いをするのは不毛なので、ビアンカはユリウスの手を引いて、マクシムのところへ歩いて行った。勿論、大斧は担いでいる。


「殿下。お呼びですか?」


「ビアンカ、ベリータ嬢の様子がおかしい」


「兄さん、それくらい誰でも分かります。わざわざビアンカを呼ばないで下さい」


 ユリウスが本日一、冷ややかな声を出した。


(マクシムのことをユリウスは兄さんと呼ぶのか。従兄弟だから別に問題ないが、一人っ子のマクシムが兄さんと呼ばれているのは変な感じがする)


「ユリウス、そんなことを言わずに助けてくれ」


 ベリータ嬢に抱きつかれたまま、無碍に振りほどくことも出来ず、マクシムは困り果てていた。


「ビアンカは貸しません。私がします」


 ユリウスは人差し指でベリータを指差す。その瞬間、ベリータは床へ崩れ落ちた。


(あ、まただ。これは魔法なのか?音も無く相手を倒していくのは怖いな・・・)


「ベリータ嬢は精神魔法で操られていました。それくらい兄さんでも分かったでしょう?対処が遅すぎます」


 見た目少年のユリウスから、大柄の青年マクシムが怒られている風景は、白いドレスを着て倒れているベリータと同じくらい痛かった。


★ミニ情報・お話に出て来たところまで★

アデリーナ・セーラ・ピサロ侯爵夫人(ビアンカの母)


ジョバンヌ公爵家のご令嬢

(前公爵は宰相の職に就いていた)

ベリータ


ハノーヴァー伯爵家のご令嬢

レイラ



最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


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