帰宅 そして食事
あと1話で新章に突入できるよう頑張ります。(多分3000ちょっとで済むはず)
あれから三日経ち、長い帰路を経てガイア王国の門がやっと見えてきた。 この二日間、水はあったが食料にありつけていないので、皆やせ細って干物状態になりかけており、「何としてでも帰る」という執念で俺たちは歩いている。
「先生、門がっ......」
「わかってる。 そっちの二人、だいじょうぶか?」
「ぼくとダイゴは大丈夫ですけど、フューレがもう......、干物みたいになって......」
カイトはそう言っているが、カイトもダイゴも、僕と先生も下手すればもう少しで本当に干物になってしまう。
フューレなんかも見る目がないくらい、カイトの手の中で干物状態、いや、もう植物の根っこ状態といってもいいだろう。 そのくらい痩せている。
「なっ! き、貴様ら何者だ!?」
俺たちのあまりの姿に、ガイア王国の門兵二人がまるで今にも人を食い殺す獣を前にしている態勢をとっている。 少なくともまだ人間としての原型は保っているはずだが、門兵の二人にとって、マンドラゴラのような俺たちは、化け物当然なのだろう。
「ばかやろうぅ、テメェら......、この方はガイア王国第34代目国王。 ギル・レオフレイ・ガイアのご子息、ユウキ・ヴェル・ガイアであらすぞぉ~......」
「先生ぃ......」
ルーファス先生が門兵にやせ細った俺たちの説明をしている最中、限界を迎えたかのように倒れこんだ。 もう声も聞こえなくなってきており、ダイゴもカイトも膝をつき始めてきた。
門兵二人は先生の説明を受けても、まだ怪しがっており、槍の先をこちらに向けている。
「お前らどうした?」
「ろ、ローグ騎士隊長!」
門兵の後ろからからやってきたのは、ガイア王国騎士隊長の「ノヴァジエル・ローグ」だ。 彼はいつも自分の背丈を超える大剣を背中に身に着けており、トレードマークになっている。
「あっ......。 ローグたい、ちょう......」
あまりの空腹に俺も倒れてしまった。 まずい、このままでは何もできずに向こう世界にいる霧花を残して死んでしまう。
「ん? 王子! にルーファス、か。 どうしたのですかその姿」
「ろー、ぐ......」
「どうした、ルー」
ローグ隊長はしゃがんで、倒れこんでぶつぶつ何かを言っているルーファス先生の口元に耳を傾けた。
「......し......に......て......」
「ん、なに? 食堂だ? わかった」
ローグ隊長は腰につけている革袋のなかから転移石を取り出し、どこへと繋げた魔法陣を形成した。
「さあ、城の食堂につながる魔法陣です。 お早く」
ローグ隊長に肩を貸してもらい、何とか魔法陣の中へと入れた。 だけど、カイトとフューレとダイゴが魔法陣の中へと入れていない。
「た、隊長。 あの二人もこの中に」
「いいのですか」
「せつめいは、あとで」
今は何としてでも腹に何かを入れなければならない。 このタイミングを逃せば、本当に餓死してしまう。 そのような思い込めた目をして、ローグ隊長の目に訴えた。
「......わかりました。 大丈夫かお前ら」
「すみません」
「ありがとうございます」
カイトとフューレとダイゴも魔法陣の中に入り、やっと転移の準備が整った。
「さてと、飛ばしますよ」
ローグ隊長が転移石を握り砕くと、転移石で形成された魔法陣が光だし、俺たちは城の敷地内にある食堂まで転移した。
◇
「うわっ!」
「いてっ」
食堂の扉の前に転移はできたものの、地面より少し高い位置に転移してしまったため落ちてしまい、どうやら近くを通っていた、赤みかかった橙色の髪をした女の子を驚かせてしまった。
「……って、ルー様? どうしたんですか、その痩せ細った姿」
「……だ」
「え?」
ルーファス先生は女の子の肩に腕をかけ、微かに聞こえる声で女の子に何かを訴えている。
「飯ーーー!!!」
◇
ようやく久しぶりの食事ができ、俺たちは次々に運ばれてくる料理を、貪る勢いで食べ進めている。
メイドの人たちも、俺たちが食い終わった料理の皿を次々と急ピッチでキッチンの洗い場まで下げている。
「ふー、食ったー」
腹も満腹になって、体内の魔力の流れがよくなり、みんな元の姿へと戻れた。
本当、食事には感謝だ。
「もう大丈夫ですか? ルー様」
「あー、悪いなキバ」
「全く、いきなり盗賊どもを送って来ては、げっそりと痩せて帰ってくんだもんねー。 あはは」
「ちょっと、おばあちゃん」
ルーファス先生のことを心配している少女は、キバ姉こと「キバ・ベニカゼ」といい、ここの食堂の副料理長だ。
彼女はルーファス先生に片思いしており、夕方か満月の夜の城の広場では、時々彼女のルーファス先生との色んな事をしているところを妄想しているだろう、ポエムが聞ける。
しかし、こっそり聞いているのがバレると、数日は消えない猛烈な痛みを持ったビンタを食らうことになる。
先生の痩せた姿を笑っているのは、キバ姉の祖母、「ヨハネ・ベニカゼ」といい、先代ガイア王国メイド長、そして、この食堂の料理長だ。
彼女はこの城中では最年長であり、この世界での俺の父が、赤ん坊以前の時からこの城にいるという。
「そっちの二人はユウ坊のともだちだってね」
「はい。 カイトとフューレ。 そしてダイゴです」
「よろしくねー。 でも、本当にユウキって王子だったんだねー」
「ちょ、ちょっとフューレ」
「王族の人たちなんだよ」
カイトとダイゴは、フューレを隠して、怯えた様子を見せている。
「気にしないで、ここまで歩いてた時のようにユウキでいいよ」
「ユウキ......」
息が苦しかったのか、二人の手から解放されたフューレは過呼吸になっている。
俺がガイア王国の王子だと二人が知ったのは、盗賊たちを先生がここに転移させた日の深夜帯で、その時も俺のことを「ユウキ様」といった。 正直、様付けは歯がゆいのがあって、三人には極力呼び捨てで読んでほしい。
「一国の王子がありません」
「うわっ。 ミオさん、驚かさないでよ」
キバ姉が何に驚いているのかと思えば、ヨハネさんの背後に、現メイド長、「ミオーネ・ヴェジテ」がいた。
彼女はいつも冷たい口調で言葉を話し、時々ちょっかい程度に話しかけるのだが、いつも「なんですかユウキ様、緊急事態ですか」と、殺気全開で死角がない状態に入るので、用事がない限りは、彼女には話しかけないようにしている。
だけど、そんな彼女だが、実はルーファス先生が惚れている人だったりする。
「ミオちゃん。 まさか僕の心配をしに......」
先生はミオの両手をつかみ、目を潤して、ミオが「自分のことを心配してくれている」とでも思ってそうな目をしている。
「心配するのも当たり前です。 盗賊たちに書面を持たせたはいいものの、肝心の王子についての記載がなく、帰城予定日を二日も過ぎるのです。 一日ならまだしも、二日はさすがに教育係としてどうなのかと、心配します」
「え、」
先生の目が、まるで心が砕けたかのようになってしまった。 よほどショックなのだろう。
「あなたはもう少し、自覚を改めてください」
「は、はい」
先生はすっかり、落ち込み状態になり、食堂の隅っこで体育座りしながら、地面に指で円をかき続けるようになってしまった。
「それと、ユウキ様」
「はい!」
つい彼女に話しかけられると背筋が立ってしまう。
「ギル様より伝言を預かっております。 「客人達とルーファスを連れて「謁見の間」へ来い」と」
「父上が? わかりました」
俺たちはキバ姉たちの皿洗いを手伝ってから、謁見の間へ行くことにした。
◇
謁見の間の扉の前に到着した。 ルーファス先生は一足先に謁見の間に入っており、カイトたちは扉を前にガチガチに固まっている。
「ちょっとカイト、ダイゴ。 何してんの、だらしないわね」
「だってフューレ、国王様がいる部屋なんだよ」
「フューレは怖くないの?」
「ふん。 こういうときはドンと胸張ってたら怖くないのよ」
フューレは自慢げに鼻息をふかしている。
謁見の間の扉がゆっくりと開き始めた。 正直、父親が苦手なのがあり、さっさと話し合いを済ませ、ここまでの疲れを癒したい。
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