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一身上の都合

 履歴書を書くとき、職歴欄に並ぶ文字。『一身上の都合』これはとても便利な言葉だ。退職するときにしか使わない言葉だが、色んな意味を持たせられる。


 体調の悪化、パワハラに耐えられなかった、単純にめんどくさくなった、などなど……。わたしはめんどくさくなってバイトを辞めたことはないが、体調の悪化とパワハラはある。


 パワハラはマジでキツかった。詳しいことは言及しないが。一身上の都合などと書きたくなかった。「アイツにやられたから辞めます」と退職届にも書いてやりたかった。しかし日本という国は、こういうときに『いえ、わたしが勝手に身を引くのであとは好きにやってください』とするのが美徳なのだろうなと思う。


 馬鹿らしい。そんな痩せ我慢せずに毒を取り除けばいいじゃないか。後続の人にも相性が合わない人間が来たらどうするんだ。『腐ったみかん』なのだ、ああいう輩は。パワハラをする人間同士でバトルロワイヤルをやって生き残ったやつは死刑ということにしたらいいのではなかろうか。そのくらい頭にきている。


 真面目に仕事をしていただけなのに、どうしていじめられなければならないのか。それが人員育成のつもりなのなら、それは『助長』というものだ。現在では成長を助けるというプラスの意味があるが、この言葉ができた頃は違った。成長を促しすぎてかえって害を招くという意味だった。その意味での『助長』である。


 妹が大手コンビニのバイトを辞めるときこんなことがあった。


 妹はわたしと同じくうつ病が酷く、きっとバイト生活で適応障害になっていたのだと思う。体調不良を訴え、精神科にかかると診断書を出してもらえたのでそのまま辞めることにした。診断書は体調の悪い妹に代わり、母がバイト先に届けた。


 普通の企業ならこれで辞めさせてもらえる。というか、企業側としては精神疾患持ちはできるだけ雇いたくないのが現状だと思う。過去のわたしの渡り歩いてきた職場では、追い出されるように辞めさせられたものだ。


 しかし辞めさせてもらえなかった。挙げ句の果てに『退職届を書け』と言う。バイトなのに、フォーマットも何もない、白紙に書くタイプの退職届を書かされた。わたしは意味がわからなかった。そしてそれを出しに行くと、『制服と引き換えに最後のお給料は手渡し』とだけ伝えられた。いわく、制服は洗濯で良い、と。


 わたしたちはそれを鵜呑みにして制服を洗濯して返却しに行った。すると、店長がアホ面で『クリーニングって言いましたよ』と。……は?? てめえ洗濯でいいって言ってただろうがよ。1ヶ月しかいなかったからクリーニング出さなくていいのかな? とは思ったが、洗濯でいいと言ったのだからその言葉に責任を持てよ店長なのだとしたら。クリーニング代だって出し渋るくらいの経済環境なのにこれから辞めるところの制服をクリーニングに出すのはちょっとキツかった。常識なのはわかっている。だが『洗濯で良い』と言ったのは向こうだ。


 すごく損した気分でクリーニングに出し、制服を返却しに行くと、『なにか言うことがあるんじゃないかな』と言われた。……は?? 「診断書出しましたよね?」と言うも、診断書などろくに見ていなかったのか、なぜ辞めるのか店長に伝わってきていないという。診断書持ってきた時点でお察しだろと思うのだが……。たぶん、店長は精神疾患に全く理解のない人間なのだと思う。この現代でもそういう人はいる。うつ病は仮病、うつ病は甘え、うつ病など存在しない、何度も言われてきた。だがここに断言するが、心の風邪などという生易しいものではない。脳みその障害なのだ、あれは。


 その後もなんやかんやと文句をつけられ、結局給料をもらえたのは辞めた月の翌月に入ってからだった。一身上の都合で辞めるとはいえ、うつ病はなんか別な気がするのだ。追い出すように辞めさせるのもどうかとは思うが、その職場のせいでうつになったのなら、もうそこには足を踏み入れたくないだろう。それなのに何度も何度も足を運ばせ、やれ親兄弟がついてくるのは卑怯だの、世間知らずだのなんやかんや説教を垂れて、ほんとうに、あなたはさぞかし立派な方なんですねえ。



 さて今回もだらだらと喋ったが、結論言いたいことは、一身上の都合とはざっくりしすぎているが、うつ病を拗らせたっぽい人には優しくしてくれね、ということである。


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