たばこ
27歳の正月。かねてより興味のあった喫煙に手を出した。
わたしがこの歳まで躊躇っていたのには理由があって、それは持病である気管支喘息の存在だ。
このエッセイを読み、長尾という人物の人となりをなんとなく把握している読者諸兄にはすぐにわかってもらえると思うが、わたしは濃い希死念慮を抱えて生きている。自殺という手段では諸々の手続きが面倒なため、身体に悪そうなことは全部やっておきたい。早く死にたいのだ。
だから、喫煙にも興味があった。しかし前述の気管支喘息は厄介で、一度発作が出るとかなり長引く上に、肋軟骨を高確率で痛める。死にたいくせに苦しいのは嫌いなわたしは、7年間も日和っていた。
わたしより先に、妹が喫煙者になった。わたしは彼女のたばこの香りに、はじめこそ嫌悪感を抱いたものだが、すぐに慣れてしまい、なんとも思わなくなった。
いまだから言うが、彼女が羨ましかった。
きっかけは、人生が思うようにいかないフラストレーションがたまり、ついに自傷行為に手を出すか、という瀬戸際のところで「イライラするからたばこを吸う」という漫画の描写を思い出したところだった。
喫煙者の妹とふたりでドライブをしているときだった。
「わたしもたばこ吸ってみたいな」
と、ぽろりと呟いた。妹は、よしきた、とコンビニでラッキーストライクの5ミリをわたしのために買ってくれた。わたしは、たばこを吸ったらわたしの気管がどうなるのかということと、ついに喫煙に手を出すということに興奮していた。
公園にスタバがあるので、そこに行こうというドライブだったため、わたしのファーストたばこは公園の喫煙所(前エピソードの池の公園)だった。
初めてだったので若干噎せたが、気管は荒れなかった。こんなものか、と落胆する気持ちもあった。一発で発作が出て肋軟骨を痛め、喉を痛め口の中に血の味が広がるほどの酷い咳込みを期待していたのだと自覚するのに長くはかからなかった。
それから半月経つが、いまは10ミリのレギュラーたばこを吸っている。1時間に1本は吸わないと気が済まない身体になってしまった。食べ物よりなによりたばこ代の確保に必死で、優先順位はもみちゃんの次に高い。
しかし着実に気管がダメージを受けている。これを書きながらとても咳をしている。だんだん気管支炎のときの咳の音になってきた。しかし決定的な病気になるまでは吸うつもりだ。いまさら辞めるのは微妙に嫌だ。ニコチン依存の恐ろしさはここにある。
たばこの味などわからないと思っていたが、最初に妹が吸わせてくれたラッキーストライクのチルベリー5ミリは、メンソールのたばこで、カプセルを噛むと甘い味が広がる。それがちょっと嫌だったので、いまのたばこに変えた。レギュラーたばこの方がわたしは好きだ。少しタバコ葉の甘さを感じるようになった。どうでもいいと思っていたのに、もうこれじゃないとしっくり来ない。
たばこを吸うのが下手なのか、普通に気管支炎なのか、吸うたびに咳が出るが、だんだんわかってきて咳の出にくい吸い方をできるようになった。こんなこと褒められたことじゃないが……笑
懸念しているのは次の文フリのことだ。10時から設営を始めて、撤収する頃には18時。もう個人のちんまりサークル参加ではないので、おそらく休憩なしで突っ走る必要があるだろう。今のペースで吸っていると、すぐヤニ切れを起こし序盤から無口になる気がしている。メンバーに迷惑をかける。なんとかセーブする方法を模索しなければならない。
困った趣味に手を出したものだ。
ああ、寝られないからたばこが吸いたい。




