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黒魔術を使って殺しました

原作:

黒魔術を使って殺しました


初回投稿日:

2020年9月18日


原作pt数:

420pt(2023年2月16日現在)


 20××年4月14日、S小学校に通う小学6年生の破狩未知はがりみちは、黒魔術を使って、同級生の丹羽彩召にわあやめを殺害した。



 以下は、凶行に至るまでの経過が記された、破狩の日記の抜粋である。




………………




20××年1月2日

 人と一緒にいたくない。三が日とかマジ地獄。親せきの顔を見るたびに吐き気がする。早く帰りたい



20××年1月3日

 ママに「早く帰りたい」って言ったら、「家族なんだからダメ」って怒られた。普段私のこと「橋で拾った子」とか言ってるじゃん……



20××年1月4日

 ジジババの家の本棚で、変な本を見つけた。「黒魔術入門」とかいう重い本。あのジジイとババアが黒魔術とか似合わな過ぎ。ウケる



20××年1月5日

 買い物ダルいから、「具合悪い」って嘘ついてジジババの家で寝てた。暇つぶしに例の本。呪い方が書いてある。超バカバカしいけど暇つぶしに



20××年1月6日

 例の本はこっそり家に持ち帰ることにした。ジジババが持っててもしょうがないからいいよね?



20××年1月7日

 明日から学校とか最悪。親せきの家の方がまだマシ。クラスメイト全員呪ってやろうかな(爆笑)


………………



20××年1月18日

 学校マジクソ。疲れた。死ぬ



20××年1月19日

 暇過ぎて黒魔術の本読んでる。ワンチャン試したい。でもマジだったらヤバいしな。ヤバそうじゃないやつないかな



20××年1月20日

 「誘惑の呪い。紙に誘惑したい相手の名前を書いて、シロツメグサを浮かべた水に沈める」。これ楽勝じゃん。クラスで1番のイケメンでも誘惑してやるわ笑笑



20××年1月21日

 今日、大翔ひろと君とよく目が合う気がするんだけどマジ? 気のせい? これって呪文の効果?



20××年1月22日

 気のせいじゃない!! 私の青春始まった!!



………………



20××年2月10日

 大翔君と初めて会話できた!! やった!!



20××年2月11日

 今日もお話できた!! 黒魔術すごくね!!? わーいわーい



20××年2月12日

 やっぱり大翔君超イケメン。あさってチョコレート渡しても大丈夫だよね? 



20××年2月13日

 「魅了の呪い。食べ物にこっそりとあなたの髪の毛を1本と赤いロウを1滴」。この呪文効くかな? 大翔君が私のとりこになってくれるかな? っていうか、チョコレート受け取ってくれるかな?



20××年2月14日

 大翔君にチョコレート渡せた!! 「ありがとう」って言われた!! やった!! あとは呪文が効くのを待つのみ!!



20××年2月15日

 大翔君に「私のこと好き?」って聞いたら「好きだよ」って言ってくれた!! 最高!! 死ぬ!!



20××年2月16日

 大翔君、同じクラスの丹羽彩召と付き合ってるらしい。バレンタインデーも放課後ずっと一緒にいたんだって。超ムカつく!! でも、大翔君は私の虜だもん!!



20××年2月17日

 丹羽に、もう大翔君に近付かないで、って言われたんだけど。は? 何様? 大翔君は私の虜なの。偉そうにすんなよ



20××年2月18日

 大翔君から「お前のことは好きじゃないから、もう話しかけてくるな」って言われた。なんで? どうして? 大翔君には黒魔術は効いてないの?




………………




20××年3月2日

 「黒魔術入門」を見てたら、ついに見つけた。「解除呪文。月桂樹の葉を握りしめながら、秘密のまじないを唱える」。これか。丹羽はこの黒魔術を使って、私が大翔君にかけた呪いを解いたんだ



20××年3月3日

 やっぱり丹羽のせいだった。あいつが私と大翔君の恋を邪魔して、あいつが大翔君と……。絶対に許せない。絶対に殺す



20××年3月4日

 黒魔術の本にはたくさん呪文が書いてあるけど、肝心の、人を死なせる呪いが見つからない。絶対にあるはず。絶対に見つけて、あいつに使ってやる



20××年3月5日

 あった。「死神降臨しにがみこうりん。黒い絵の具で六芒星を書き、その中央に、取り憑かせたい人の奥歯を置く。」これであいつに死を与えられる



20××年3月6日

 ダメだ。あいつの奥歯を手に入れる方法がどうしても思いつかない。あいつを殺さなきゃ、大翔君は私のものにならないのに……



20××年3月7日

 「短命の呪い。寿命を奪いたい人の顔をイメージしながら、生きたトカゲの内臓をフォークでえぐる」。あいつを即死させられるわけじゃないけど、良さそう。トカゲだったら手に入りそうだし



20××年3月8日

 今日、短命の呪いをあいつに使った。いつ死んでくれるのかな〜。わくわく



………………



20××年3月16日

 ミスった。あいつは解除呪文を使えるんだから、短命の呪いも解除されちゃって意味ないじゃん。1週間以上気付かなかった私、超バカじゃん



20××年3月17日

 即効性のある呪いじゃないとあいつには効かない。そうじゃないと解除呪文を使われちゃう。何かいい呪いないかな



20××年3月18日

 「強襲きょうしゅうの呪い。怪我させたい相手の顔を思い浮かべながら、羊皮紙に、三毛猫の血を使って、怪我させたい相手の名前を書く」。これだ!!



20××年3月19日

 三毛猫さんごめんね。ちょっと血が欲しかっただけなんだけど、加減が分からなくて殺しちゃった。恨むなら私じゃなくてあいつを恨んでね



20××年3月20日

 おかしい。なんであいつ怪我しないの?



20××年3月21日

 呪文が弱かったのかな? もう一匹三毛猫さんの犠牲が必要かな……



20××年3月22日

 最悪!! なんなのあの猫!!? 私の顔を思いっきり引っ掻きやがって!! 化膿してるんだけど!! マジで最悪



20××年3月23日

 「反射呪文。秘密のまじないを込めた月桂樹の葉をポケットに入れ、相手の呪いに備える」。……もしかして、あいつはこれを使ったの?



20××年3月24日

 あいつが「反射呪文」を使ったということは、「短命の呪い」も反射されたということだよね。私の寿命が縮んだってことだよね……



20××年3月25日

 私、いつ死ぬんだろう? 明日? あさって? 嫌だ。死にたくない。死ななきゃいけないのは私じゃなくてあいつなのに



20××年3月26日

 絶対にあいつを殺してやる



…………………



20××年4月11日

 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。絶対に殺す。でも、解除呪文と反対呪文があるから、あいつに呪いは使えない。どうすればいいの?



20××年4月12日

 気付いた。私が勘違いしてた。「死神降臨」はそういう意味じゃないんだ。死神っていうのは、()()()()神様じゃないんだ



20××年4月13日

 家族も嫌いだし、友達もいない。恋人もいない。それにもう寿命も短い。私、この世に全然未練ないよ。だから()()()()()()()()()




………………




 20××年4月14日、S小学校に通う小学6年生の破狩未知は、同級生の丹羽彩召を殺害した。



 凶行が行われたのは、授業と授業の合間の中休みであり、凶器は、破狩が前日に用意して学校に持ち込んでいた大きなかまだった。



 殺害の動機について、破狩は「()()()()()()」などと意味不明なことを述べている。




 この凶行の以前、破狩にはいくつかの奇行が見られた。


 凶行の前月、破狩は、野良猫を立て続けに2匹惨殺している。


 さらに破狩は、凶行の前日、ホームセンターで鎌と一緒に購入したペンチを使い、自室で自分の奥歯を抜いた。

 そして、真っ赤な血がこびりついたそれを、部屋の床全面に描かれた六芒星の中心に飾っていたという。



(了)



執筆秘話:

家族旅行前日、ソワソワして眠れず、仕方がないので小説のアイデアを考えていたところ着想しました。そして、翌日、網走の民宿にて書き上げました。

しばらく執筆から遠ざかっていたので、リハビリも兼ねて、短めで、かつ、口語体にしてみたという記憶です。


この頃、僕の中では空前のオカルトブームでした。

きっかけは、島田荘司作品にハマったことです。バイブルである「占星術殺人事件」はもちろん、「暗闇坂の人喰いの木」、「奇想、天を動かす」あたりに強く感銘を受け、オカルトとミステリーの組み合わせに凝っていたのです。


この作品を書く直前に、主人公同様、黒魔術について勉強しました。kindleで手に入れた「黒魔術入門」の本が、この作品の土台になっています。


オカルトミステリーについてさらに付言すると、一見すると不可能な命題を立てて(本作でいうと「黒魔術で人を殺す」)、それをトリックによってどうやって実現するのか、というのが醍醐味だと思っています。

 上に挙げた島田荘司作品はいずれもその模範であり、ミステリー書きとしては必読だなと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 黒魔術をトリックにするのではなく、依存して歪んでいく心理の怖さを描くサイコ・サスペンスとして、素晴らしい完成度だと思います。 死神は自分、と思いつく辺り、怖いですね。 小学生だからこそ信…
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