【91】聖女様とパレード(8)
全身にひどい火傷を負った裸のバエリンは、地に倒れ動かなくなった。だがまだ死んではいない。
背中が僅かに上下している。
ここは人気の無い路地裏。
先ほどの領都を覆った光の渦が消えて、人々のパニックは収まり、負傷者を探す声が聞こえる。
路地に顔を出した兵士が男と倒れている女の元へ駆け寄る
「その方は負傷されたのですか?我々兵士が安全に教会の治癒神官の元へ運び致します……ん!?……紫の肌?……まさか!魔族?!!」
兵士は驚き大声をあげ、人を呼びにいこうとした。
とたんに兵士の身体が宙に浮き上がる。兵士は叫び声をあげようとするが、声が出ない……
「困るよぉ。そんなのバレたら大変でしょう?ねぇ。
ボクらがさっきの魔物を召喚したの……バレちゃうでしょう?てな訳でさ……君には黙っててほしいわけ」
少年が宙に浮かぶ兵士に右手を向けると、兵士は首を押さえてもがき始める。喉を掻きむしり脚をバタバタさせる。やがて苦悶の表情をして、それからがくんと頭と腕が垂れ、それっきり動かなくなる
「死人に口無しってね。ほいっ」
男は拳を握り、それを開くと兵士は宙から地に落ちた。
少年は落ちてひしゃげた兵士を気にもとめず、女の剥き出しの背中に手を乗せ
「コイツに神聖魔法なんてかけちゃったらさ。傷が悪化しちゃうからね。コイツを治すのは神聖魔法じゃなくてさ。暗黒魔法なの。こうして……」
男の手から黒々とした闇のようなモヤが出て来て、女身体を包み込む。すると身体の火傷の跡が綺麗に消えた。
綺麗な肌に戻った魔族の女はむっくりと顔をあげ
「陛下……ギャッ!」
バエリンは顔を少年に蹴られ鼻から盛大に血を撒き散らしながら、家の壁に背中からぶつかる
「バエリン!陛下は止めろって言ったよね?
馬鹿なの?ボクは魔王なんてなる気はないから、聖女が欲しいからね。殿下も無しだからね。今度からはボクの事を変名のザラ様と呼んでよね」
「はい……申し訳御座いません。ザラ様」
バエリンは鼻から血を滴らせ謝る。
ザラはバエリンが裸で項垂れる姿をみて
「それから……その見苦しいもの隠してくれる?
君の紫の肌を見られたら、また殺さなきゃいけないでしょ?ほら早くしなよ」
「は……はい……。ただいま」
女は口でモゴモゴ呪文を唱えると、豊満な胸のあいだから茶色い光が現れ身体を覆い、やがて定着してローブになる。頭にはフードもかぶっている
「で。バエリン。さっきの質問なんだけど、今の光なんなのさ?初めて見るんだけど?」
「おそらく……伝承を紐解くと……聖女の固有魔法……聖域だと思われます」
「聖域?カッチョイー名前だね。で……どんな力があんの?ホーリーフィールドとはどう違うの?」
「はっ……ホーリーフィールドは一定範囲内の瘴気を浄化し、魔物を寄せ付けない環境を作り出します。その範囲内では我々も瘴気を発生させ魔物を呼び出すことは出来ません。
対して聖域はホーリーフィールドの効果にプラスして、一定範囲内の魔物を消滅させる力があります」
「魔物を消しちゃうの?」
ザラは驚きの声をあげる
「それは凄いね!それでバエリン以外の魔族も消えちゃったの?」
「はい……わたし以外の高位魔族の四人は消滅したようです。そしてこの領都に潜伏していた下位魔族も全て同じ目にあったと思われます」
「で……何で君は生きてんのさ?」
「おそらくは……聖域に使用された魔力量と同じダメージを負うとものと思われます」
「ということは……魔力値3万以上あった魔族が消滅して魔力値6万のバエリンが生き残ったとしたら、その魔法の魔物に対する攻撃力は3万以上6万以内ってこと?」
「恐らく……5万くらいかと?でなければわたしがこんなにダメージを負う訳がありません」
「ふーん」
ザラは考え込んでいる
「でも可笑しいじゃん。ボクの魔力値1万5千だよ?なぜ生きてんのさ?」
「それは……まだ魔王化を完全に成されてなく人間で有ることと、ザラ様の潜在魔力値が高いので、自己修復されるダメージしか負わなかったと思われます」
「スッゴく痛かったね。死ぬかと思っちゃったよ!
でもさ!ここに聖女が居るってことだよね!
何処にいんだろ?早く会いたいね!
もしかしたらあの子かも?
兄さんが見つけてきた平民のあの子!
すっごく気になるんだよね?
甘い香りするし……。
決めた!父さんが帰ったら、直ぐに会いに行かなきゃ!っっっっね!」
ザラは喜色満面で跳び跳ねた。
これで[パレード]パートが終わりました。
如何でしたか?
少しづつ……というかいきなり聖女チート発動するラフィーネ!愛の力?は偉大ですね(・ω・)
次パートは[秘密]になります。
誰かさんの秘密が明かされるかも?
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