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【9】聖女様の屋根裏部屋(9)


─怖い!


怖い。

怖い。

怖い。


──凄く怖いンですけど!


わたしのこの秘密基地のような、わざわざ来なきゃバレ無いような場所に、誰か男の人がいる


「この部屋で間違いないと思うのだが……可笑しいな?」


──やっぱり目当てはわたしだ!


まだ15歳じゃないよ!

署名してないよ!

殺されるのかな?


たぶん死なないと思うけど、刺されたら死んだふりして動かなかったら、見逃してくれるかな?


「暗いな。探してみるか?」


ポワー


毛布の向こうが明るくなった。

きっと灯りを付けたんだ。


この部屋には灯りがないから、持参したのだと思う。


わたしは暗くなったら寝る生活をしていたからね。

明るいのには敏感なのよ!


「何だここは?誰か住んでいたのか?」


──現在進行形で住んでいるのですが?


ということは今は誰もいないと思っているの?

ということはわたしを探しているのではないの?


「何だ?勘違いか?無駄足だった。

あーあ!かったりぃー」


ギシ


ベッドが軋む。

そして……


「ひぎゃ!」


わたしは押し潰された


カバッ!


いきなり毛布が剥がされた!


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!殺さないで下さい!ぶたないでください!痛いことしないでください!」


わたしは懇願する。

ここはいきなり謝れば、何だかしらないけど許してくれるかもしれない


「お前は……誰だ?」


──それはこっちが聞きたいわ!


「ここがお前の部屋か?どうしてこんな屋根裏部屋にいるんだ?」

「……閉じ込められているの」


ここは正直に答える。少しは同情してくれるかもしれない。それとわたしは頭を下げていて、相手の顔はみていない。

もし見たら、証拠隠滅とかで殺されるかもしれない。

わたしきっと不死身だけど、厳密にいえば死んで直ぐ蘇生するだけ。叩かれたり、お皿を投げられたら痛いのよ!

血も流れるし、しかも栄養失調の虚弱体質だからダメージはデカいのよ!


「監禁されているのか?何でこんな子供が……」

「それは……わたし成人したら殺されるから……それまで逃げられないように……生かされているの」


「…………」


男が絶句しているのが分かる


「成人したら……殺される?

後……4~5年も閉じ込められるのか?」


──4~5年?わたしを幾つだと思っているの?


「わたし14歳。もう2日で成人するの。

それまでの命なの……」

「14歳?嘘をつくな?どう見ても10歳位だろう?

……お前。ずいぶん痩せているな。腕が棒のようだ……もしや?」


「14歳だよ。でも毎日パン一個とスープ一杯しか貰えないから、成長止まっちゃったの」


ここは正直に素直に弱々しく……


「……可哀想に……。

良かったら教えてくれないか?

なぜ殺されるのだ?」


どうしよう。

うん。覚悟を決めた。

秘密を話そう。

誰かに聞いて欲しかった。

他人とこんなに話すのは何年振りだろう?


でもその前に……


「梯子。一旦上に上げて下さい。

ここに人がいるのバレたら、きっと貴方も殺されます。

死ぬのはわたし一人で十分ですから……」

「分かった……」


そしてガタガタ音がして、しばらくしてから無音になった。きっと梯子を屋根裏部屋に上げて蓋をして痕跡を消してくれたのだと思う


「話してみろ」

「実は……」


わたしは魔法抜きの、秘密を話した。

両親の侯爵夫妻が死んで叔父家族が家を乗っ取ったこと。

成人したわたしの署名で、叔父は侯爵に成れること。

立会人がいるので、それまでは生かされること。

侯爵の爵位を譲る理由が、わたしが病気で爵位を維持出来ないからで、その病気を演出する為に毒を盛られ続けたこと。


逃げる体力が付かないように、食事制限されていたこと。

これは嘘だよ。多分死なない程度にエサをあげていたに過ぎないと思うけど、これは黙っておいた。


そして……


「署名したら殺されるか、アルゼン伯爵というおじいちゃんのお嫁さんに成るか選べと言われた。

わたし……その人が少女趣味の変態だって知っているから……わたしお眼鏡に叶ったみたいで……絶対……嫌なの……死んだ方がマシ……」


ちょっと話を盛ったり誤魔化したりしたけど、誤差の範囲ってことで良いわよね?


「アルゼン伯爵?……ああ?……噂はかねがね……成る程な……」


そして沈黙がながれた。

わたしはゴクリと唾を飲む


「お嬢さん。俺と行くか?

行くか行かないかは、今から俺が条件を出すからそれから決めてくれ」


わたしが頷くと……頭を下げているから、ベッドに更に頭を押し付けて元に戻したけど……伝わったかな?


「条件というのはな……」


どうやら伝わったみたいだ。



わたしはどんな条件でもここから逃げられるのなら、従おうかと思った。ただ……この直ぐ近くにいる男の人が、アルゼン伯爵のようなご趣味を持っていないのを祈るしか無かった……。






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