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【6】聖女様の屋根裏部屋(6)


もう15歳の誕生日まで十日余り。


成人すればわたしはこのアスタリス侯爵家の相続の権利を得る。けれど叔父夫婦に侯爵位を譲る署名をして、わたしは殺される筈。


でも死ねない身体になったから、どうなるのだろう?

即死級の猛毒でも死ねないし、きっと首を切られても完全復活出来る自信がある。


こんなチート機能もっているのに、本人の体力が虚弱体質なのが悲しすぎる。アスタリス侯爵家は武門の家柄で、御父様の頃は騎士団もあったし、この御屋敷にも沢山の騎士が常駐していた。

けれど叔父夫婦が実権を握るようになったから、騎士の皆様の姿が見えなくなった。


流れてくる噂では、元々御父様のはフリーデン王国の皇太子派だった。けれど今の叔父は第二王子派。

その皇太子派の力を削ぐために騎士団を解体したではないか?という噂。


時々、床でもある天井の下。廊下で噂話をしているのが耳に入るの。


まあ。わたしにはどうすることも出来ない噂だけどね。


そうそう。

今はねチュウベェはいないの。

今年天寿を全うしたのね。

これでわたしに、この屋敷には誰も味方が居なくなった



──毎日ひとりぼっちで寂しい。



そして今日……叔父との定期的な面会日なの。

叔父さん。わたしが11歳の時にこの屋敷に乗り込んできた時は、御父様の兄だけあって格好良くて見た目は素敵だったわ。夫人もちょっとキツめだけど美女だったのは間違いないの。


でもね月日は無情……


という事で今は侯爵代理のダルイ・ダルソン

子爵の執務室に呼ばれている。珍しくエフレア夫人も同席している。


どちらもわたしを苦虫を噛み潰したような、嫌悪感丸出しの顔をしている。

そして何故月日は無情かと云えば……



──二人とも大分肥えちゃいました!



あの細い優男の面影は薄れて頭は少し禿げ上がり、顎は二重アゴ。身体はデップリと肥え太り、腹はエールっ腹で太もももパツンパツン。

大股広げてソファーにドッカリ座っている。


脂汗が凄い事になっている。


そして夫人も同様に、大分大きくなりました。

横にね……。


顔は美女の面影は……正直遥か彼方に消えおおせたようです。これはあれ……。贅沢のし過ぎ。


不相応な金額を動かせるようになって、その上騎士団を解散させた。使用人の給料も大分渋ったようで入れ替わりが激しく正直、前侯爵の御父様の頃と比べたら明らかに質が落ちたと子供のわたしが見ても分かる。


その浮いた費用を自分達の贅沢に充てていた。

もちろんわたしの養育費なんて限りなくゼロに近いでしょうから、このわたしの惨めな屋根裏部屋の生活を犠牲にして、贅沢に拍車をかけているといっても過言ではないの。


噂では美食が凄いらしくて、あれだけ使用人を削って庭だって荒れているのに、厨房だけはグレードアップしたらしいわ。有名なシェフを高額で雇ったみたい。

それで餌付けされて豚みたいに、ブクブク肥え太った。


夫婦と同じような食生活をしているシャノンも同様ね。

あの性格以外は非の打ち所のない美少女が、今は白豚に成り果てたのよ。

この頃シャノンの御自慢お茶会で、王子様の話をとんと聞かないのは、あの体型のせいもあると思うわ!


でも残念。

この執務室にはいないわ。

三匹まとめて観賞して楽しもうと思っていたのに。


でも叔父様の身体の状態……凄いことになっているの。


何のことかって?


わたし魔力総量爆上がりして、癒しの能力も聖女級になって、突然ある能力が開眼したの。


それは鑑定能力!


相手の健康状態とか把握出来るようになったのです!


それで見てみると……血圧高く成ってるし、足の先が痛む痛風の症状も有るみたい。痛風は別名贅沢病というくらいだから自業自得ね。

それと臓器が大分やられている。

肝心要の肝臓は、お酒の飲み過ぎで処理能力を越えてダメージが蓄積している。

腎臓の状態も悪いし、心臓近くの血管も痛んでいるわ。


これは痩せて健康的な生活を送れば改善されると思うけど、一度贅沢を覚えたら戻れないというから多分無理!


夫人の症状も似たような物ね。


このままだと遅かれ早かれ身体に重大な欠陥が起きて、きっと大変な事になると思うの。


わたしね。治せるわ。

病気は治せないのが通例らしいけど、キュアとヒールの複合治癒魔法[キュール]はこの手の病気は治療出来るみたいなの。やったことないけど、出来るって確信があるの。


でもね。


──治してあげない!


もし治しでもしたら感謝されるところか、きっと王家に熨斗(のし)を付けて売られちゃうわ!


何処の王家も魔力の高い人材を求めているからね!

皇太子の息子さんが今年17歳になるし、政治的理由で婚約者と婚約解消されたばかりみたいだから、下手したら嫁にされる。

しかも叔父様は第二王子派だから、そんな事に成れば消されるかもしれない!


という事で心の中で


『……御愁傷様です』


そう悲しい眼差しで見ているのです。


だって貴方に毒を盛られ続けたわたしの内臓の方が、健康そのものって可笑しいよね!


わたしの治癒能力は聖女級だけど、わたしを殺そうとしている叔父様家族を助ける義理はないわ。


わたしの心はきっと、聖女とはかけ離れているもの!


今。叔父家族に思うことを一言で表現すると……



──ザ マ ヲ ミ ロ





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― 新着の感想 ―
[一言] 強力な毒は高いよ。ばれたら売る側も危険だからね。
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