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【55】聖女様と初恋(3)


女騎士メリアベル。赤毛をポニーテールにして、赤い騎士服に身を包んでいる。マントは紺。


メリアベルは決闘の内容を告げる。


勝負は木刀でする


一本勝負!


一本とは、頭部や小手、体に早く当たった方が勝ち。

かすったり、擦ったりぐらいでは一本にならない。

その判定はメリアベルに委ねる。


突きも有効!


それと戦闘不能と見なされても一本とする。


メリアベルの判定に対して異議は認めない。


以上!



アーサーとジャン。

メリアベルの言葉に同意した


「では!わたくしがこの剣を振り下ろしたと同時に決闘が始まります。よいですね」


メリアベルが抜き放った剣を高々と掲げた!


ジャンは身を低くして、飛び掛からんと木刀を水平に構えている。

アーサーは緩やかに立ち、両手で木刀を持ち正道に構えた。


二人の距離は10mもない。


アイラはドキドキしながら、祈るように手を組んで見守っている



シュッ!



メリアベルが剣を振り下ろす。


刹那!ジャンが脱兎の如く飛び出した



──危ない!


わたしは怖くて手で顔を覆い目を瞑った



「一本!アーサー殿下の勝利!」



メリアベルの凛とした声に恐る恐る目を開けて見れば、そこには地に尻餅を付き見上げるジャンと剣を喉元に突きつけるアーサーの姿があった



──アーサーが勝ったんだ



不思議なのは両方とも戦う前とは逆方向を向き、向かい合っていること。そして、ジャンの木刀が離れた地面に転がっていた。アーサーはほとんど元の位置から動いていないけど、ジャンは反対側にいて地面に座ったままアーサーを睨んでいる。

悔しさを滲ませ


「卑怯だぞ!足を引っ掻けて転ばせた!

剣の勝負の筈だ」


その言葉にメリアベルさんは目を細めて


「それ以前に決着は付いていた。

君は木刀を飛ばされたではないか?

それに喉元に突きつけられているのはなんだ?

戦場なら君はもう息をしていない」


「……でも!」


ジンは納得できない顔で、地面に握り拳を作る



──あいつ!どうしようもないバカ!



握りこぶしの中に土を入れたのを、わたしは見逃さなかった。ジャンが友達との喧嘩であの土を相手に投げつけて、一時的に視界を奪ったのを見たことがある。

ジャンはそれをするつもりだ!


そんな事をしたら……


「ジャーン!!!!」


わたしは駆け出した!

アーサーとジャンが呆気にとられてこちらを見た!


「歯を食いしばれ!バカジャン!」


わたしは腕を振り上げると、思い切りジャンプして!



バッチーーーーン!!!!!



「痛ったあーーーーい!」


わたしは叫んだ!

ジャンは赤く晴れ上がった頬を押さえていた。

わたしは右手を押さえて、痛みを堪えている。


わたしが思い切りジャンの頬に、ジャンピング張り手を食らわしたのだ!ビンタの強化版ね!

でもわたしも手にダメージを負った


「なにすんだよ!」

「それはこっちのセリフ!」


わたしは手の痛みを堪えて、ジャンの胸元の服を掴んでジャンを引き寄せる。二人とも座ったままだ


「あんた!いい加減にしな!

メリアベルさんは騎士の名誉に賭けて公正な決闘を誓ったの!あんたの負け!誰が何と言おうとあんたの負け!

みんなの顔を見なよ!」


「だってあいつ!」


往生際が悪いというか……バカというか……バカだったけど……


「こんのぉおー!分からず屋!

だからあんたは嫌いなのよ!」



ゴン!



「痛ったあーーーーい!!!!」


ジャンに頭突きをかまして、わたしはあべこべにダメージを負って頭を抱えて地面に蹲る。

ここはヒールで治したいけど、青白い光で魔法行使したのバレちゃうから死ぬほど痛いけど、自重した。

頭突きされた方よりも、したわたしが痛がっているなんて!


──ジャンの石頭!


「ジャン!あなたね!格好悪いよ!」

「だってさ!」


「だってもクソもないの!男だったら正々堂々と敗けを認めなさい!御領主様は立っていて、あなたは地面に腰を付いて木刀も無い!」


これを敗けと言わず何という?


でもジャンは納得できていない。

闘志を燃えたぎらせている!


「ジャン!あんたは決闘前にルールを聞いて誓ったの。

でも今は何かと理由を付けてそのルールを破ろうとしている。ううん。破ってる!

誓いも守れない。

ルールも守れない。

それは凄く格好悪いこと!

ハッキリいうわ!」


わたしはまたジャンの胸ぐらを掴み



「ジャン!あんた!男じゃない!!!」



わたしは涙を流して、めいいっぱい叫んだ!






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