【44】聖女様と新たな家族(3)
──条件がある──
アマンダ母さんはガイを見る
「先ずは3ヶ月。この子を預けてちょうだい。
ガイ。あなたはその間依頼を受けても良いけど、新米冒険者の指導のような安全な依頼のみを受けて。
その間。わたしはこの子を育てます。
その後に日を改めて仲間を集めて結婚式を行いましょう。それまでは……」
お母さんは目の笑って居ない笑顔を浮かべて
「明日から別居しましょう」
「なっ!」
「まだ結婚前の女の子と同じ屋根の下で過ごさせる訳には行きませんから……。
当然でしょ?これでもずいぶんと折れてるつもりよ。
何なら今すぐ別居致しましょうか?」
有無を云わせぬ……言ったら今すぐ永遠の別居になりそうな気配に、ガイは立ち上がりかけた腰を下ろし座った
「分かった……だがせめて今夜は……」
「ノルンさんは今夜はわたしと寝室を共にします。当然よね。まだ清らかな乙女なのでしょう?
熊に襲われないとも限りませんから」
「いや。ほら。俺達久し振りに会ったし。
アマンダも寂しかった……だ……ろ……う……と……」
「わたしが……なんですか?
確かに寂しい思いは致しました。
けれどその間、い・と・し・の・旦那様はこんな可愛らしい娘さんと一緒だったなんて……腸が煮えくり返りそうですわ」
「………………はい。分かりました。仰有る通りに致します」
父さん。敬語になって全面降伏したよ!
その間わたしは空気になって、巻き込まれないようにした
「ノルン!ガイと一緒に寝たい!」
「…………………………」
「はい。アマンダ様の仰有る通りに致します」
──すげー!
空気の読めないノルンさんを、眼力だけで降伏させた!
いままでベッタリとガイにくっついていたのに……今は椅子の上で両膝を揃えて、両手までちょこんと太腿の上に置いて座っているの。
耳はペタンと潰れている。
これで序列は確定したみたい
「ガイはそうね……アイラちゃんと寝て頂戴」
「……え?」
なぜそうなるの?
「まあ。コレから3ヶ月。わたし達3人はこのローレンの南街で、ガイは一人でカムスの街へ単身赴任なさるようなので、せめて今晩だけでも家族の温もりを味合わせてあげたくね」
──うっわ!
しれっとガイ父さん、完全別居を言い渡されたよ!
まあ。いいかな。このところは一人で寝ているけど、当初は三人枕を並べて寝ていたりしていた。
二人きりになっても、アマンダさんが心配しないレベルまで家族に成れたってことだよね。
☆
それからガイを除く三人で夕食を作った。
ノルンさんは……アマンダさんもコレから教え甲斐がありそう!
でも不器用なりに、一生懸命な姿には好感が持てたよ。
お母さんも気に入ったみたい。
でも相変わらずガイには冷たい。
指一本触れさせようとしない。
帰った時に必ずするハグも、お帰りなさいのキスも何もかもお預け。それなりに思うところがあるのだと思う。
そして家族と、もうすぐ新しい家族となる4人で晩餐をして、楽しい?一時を過ごした。
後片付けをして、御風呂に入って、その間アマンダ母さんはガイ父さんと決して二人きりにならなかった。
わたしは自室にガイを招いて一緒に寝ることとなった。
お父さん。当たり前のように床に寝ようとするから
「一緒にベッドで寝よう!」
って誘った。わたしもお父さんを信頼しているから、家族だから、元は他人だけど間違いは絶対起きないって分かっている
「いや。俺はここでいい」
「わたしが嫌なの。ここに来て一緒に寝よう」
わたしはベッドの端に寄り、広い空間を作ってペシペシと寝床を叩いた。お父さんはおずおずと諦めたようにベッドに横たわった。
背中を向けている。
大きな背中。
わたしは助けられたあの日。
この背中に負われてこの家にきた。
そして救出作戦の時。
わたしはこの背中に括りつけられた椅子の上で、何日も過ごした。
わたしはこの大きな背中が大好きだ。
そして
「お父さん……大好き。
家族にしてくれて有り難う」
わたしはまた、その大きな背中に身を預けた。
その日はお父さんの背中にくっついたまま、朝を迎えた。
☆
そして……一年が過ぎ、わたしは13歳……実年齢で17歳になった。




