【35】聖女様と救出劇(4)
ここまでの行程は約半分。
温かい食事は心もホッとする。
わたしは椅子から自由になり、一息付く。
いくら一時間毎に5分休憩を挟んだとしても、3時間も座りっぱなしは流石にキツイ。気を利かせたガイがクッションを挟んでくれたから何とか持ったけど、お尻と背中が痛い。
何とかヒールで治したいけど、魔法を使ったら体が青白く光るからバレる可能性がある。
相手に魔法を掛ければ、自身の手のひらと相手の治された患部が青白く光るの。ノルンにキュールを使った時には全身を治療したから、ノルンの全身が光ったよ。
わたしも自分に使ったら腰やお尻が光っちゃうから、我慢しないと!
隠す必要無いなら良いけど、わたしみたいなか弱い女の子が治癒魔法を使えると分かれば、それだけでも誘拐の危険性が高まるのよ。だからお父さんとお母さん以外は秘密なの。
それにしてもこのスープ美味しい!
トロってしてるし、野菜もお肉もたっぷり入っている。
サイコロ大の大きさだけど、皮の水筒に入れていたから出し入れしやすい大きさにしたのね。
皮の水筒なら使用後は中を水洗いして畳んで仕舞えば、荷物に成らないでしょ?水洗いした水もちゃんとスープに戻してあるから、無駄に成らないの。
それと乾燥肉……干し肉も炙れば香ばしくて美味しい!
噛めば噛むほど味がでて、疲れた体に染み渡るよ。
そんなわたしの様子を見ていたけノーフィス……今はね、何だか爺って呼んでる。まだ50代(もうすぐ還暦)だけど、もう五歳のお孫さんいるんだって。
ノーフィスはガイを気に掛けていたし、アマンダ母さんとの仲人もしたような人だから、わたしが孫みたいで可愛いらしいの。アマンダさんの両親は元冒険者で夫婦で依頼を受けた魔物の討伐先で亡くなった。それで引き取って実の娘さんと共に育てたらしいわ。主に亡くなった奥さんが……だけど。
だからアマンダ母さんにとっては、わたしとガイ父さんみたいな関係かな?
それとわたしが貴族だってことは知らないけど、ガイに助けられた子供だって知っているの。
色々口裏合わせてわたしの保証人にもなってくれた。わたしにとっても爺さんみたいな人。
でも会ったのは今回が初めてなの。
ギルドマスターは有名職だし変に関係を勘繰られて、わたしが誰かに利用されるのを避けたくて、今まではワザと接点の無い振りをしていたみたい。
でもガイからわたしのことは逐一報告(魔法を使えることは内緒)受けていて、気にはしてくれていたようなの。
で、今からノーフィスを爺と呼ぶね。
その爺がね
「良い冒険者を見分けるコツにはな、色々ある。
普通の素人は立派な装備や武器につい目が行って、それで判断しちまう。
だが装備って云うのは金持ちのボンボンの三男とかが、親にたかれば直ぐに見てくれの良いもんが揃っちまうだろ?
だが俺たち玄人冒険者はそんなものよりも、コレ」
食事に目を向ける
「食に拘っている。
冒険者は体が基本だ。その体を作るのが食事って訳だ。
栄養満点の良い食事が良い体を作る……つまりは良い冒険者を作るって言っても過言ではない。
こいつのようにな!」
バンっ!
ガイの背中を叩く
「アイラの母ちゃんが旨い物を食わせているし、こいつも若い冒険者には特に食事の大切さを説いている。
そこんとこ説明しろ」
爺がガイに振る。
ガイにはわたしの目を見て語り掛けるように話し始めた
「若い冒険者はツイツイ良い装備なんかに目が奪われて、無理して揃えがちだ。だがその無理っていうのが、食事代や宿代をケチって投資しちまう。
それが自分の命を縮めるってことも知らねぇでな」
ガイが言うには、良い装備を揃えるとツイ強い気になって、実力不相応なダンジョンに挑みたくなる。
いざ挑んだら良いが、食事や宿代をケチっていたせいで体が出来ていない。
だから本来の力も発揮出来なくて、追い込まれた時には脆く崩れて命を失う事に繋がるみたい。
良い宿屋は食事の質もしっかりしているし、ベッドもふかふかで睡眠をしっかり取れる。
だから栄養も体に馴染むのも早い。
でも悪い宿屋なら食事の質も劣り、ベッドもお粗末で一晩寝ても疲れが取れない。
そんな状態でダンジョンに挑んでも……という訳みたい。
だから良い冒険者はあばずれとか見た目だけ良い女房を貰わず、食事や睡眠などの良い環境作りに理解を示してくれるしっかり者の奥さんが多いらしい。
良い冒険者を見分けるもうひとつのコツは、奥さんらしいですよ。
その点。アマンダ母さんは満点だそうだ
「こうして途中で無理せず休憩して、温かい食事をするのも大切だ。事を急いて肝心な所で力を出せないようでは本末転倒だろう?
冷たい食事は胃腸を弱める。胃腸が弱れば力がでねぇ。腹も壊すかもしれねぇし、暖めないせいで雑菌で反って体調を崩す事もある。
だから食事は冒険者の見えねえ命綱だ。
その命綱をしっかりと握っている者が、最終的には生き残るってものさ」
今度は隣にベッタリと貼り付いているノルンに目を向けた
「ゴメス達は日頃から食事を大切にしている良い冒険者達の集まりだ。だからきっと無事だ。
一週間くらいなら、食わずとも生きていけるさ!」
この言葉はノルンを励ましてるようで、実はガイは自分自身に言い聞かせているんだと、わたしは感じた。




